大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

TWO-WAY 総技研とあなたをつなぐ2WAYコミュニケーション・ペーパー04

特集:住宅技術進化論

総技研は、1994年の開設当初から一貫して「環境共生」をコンセプトに研究活動を進めてきました。その中から「健康」「空気環境」「構造」「インスペクション(点検・診断)」の4つのテーマに注目し、若手と先輩の座談会を開催。住宅技術がどのように生まれ、発展してきたのか。その軌跡と将来に向けた展望を、研究者たちが自ら語ります。

先駆的な取り組みで、住宅を起点に心身の健康を考える

  • 小池 昭久
    こいけ あきひさ
    (入社31年目)
    新領域技術研究部

  • 廣畑 友隆
    ひろはた ともたか
    (入社35年目)
    研究統括室

  • 玄 晴夫
    げん はるお
    (入社27年目)
    建築技術研究部

  • インタビュアー 渡辺 将平
    わたなべ しょうへい
    (入社15年目)
    信頼性センター

  • インタビュアー 片岡 夏海
    かたおか なつみ
    (入社4年目)
    新領域技術研究部

渡辺本日は「健康」のエキスパートである先輩方に、過去・現在・未来の研究開発について語っていただきたいと思います。当社が「健康」に配慮した研究開発を始めたのは、いつ頃でしょうか?

小池はっきりと打ち出したのは、2005年に発売した創業50周年記念の戸建住宅「センテナリアン 健康百彩」ですね。100歳になっても健康な高齢者でいられる家、がコンセプトでした。ただ健康といっても、体だけじゃない。心の健康、経済的な健康も含め、50の提案・100のアイテムを集めたんです。例えば「インテリジェンストイレ」は尿糖や血圧、体脂肪などを測定して生活習慣の改善を促します。「外張り断熱通気外壁」は、家中を断熱材で保温してヒートショックを防ぐ技術として採用しました。空気清浄装置の「換気浄化ef」も、このときがデビューでしたね。「健康」という言葉を「住宅」の文脈で初めて使ったのはセンテナリアンじゃないでしょうか。当時も最先端でしたが、今でも通用する技術や「軟水器」のように最近ようやく浸透し始めた設備も入っています。

片岡インテリジェンストイレは廣畑さんが開発されたんですよね?

廣畑発売は2005年ですが、そこに至る経緯がありまして…。1994年に総技研ができて、私が入所したのは翌年です。その頃、「高齢化社会対応住宅」が一つの大きなテーマでしたので、高齢者の生活を研究するために医療や介護、福祉の専門家たちとの研究会を立ち上げたんです。イギリスにも視察に行きました。この経験が「健康見守り」を提案するインテリジェンストイレにつながり、同時に、日本の住宅が今後どこへ進むべきか広い視野で考えるきっかけになりました。

渡辺その方向性の一つが「健康」でもあるわけですが、心の健康につながるのが玄さんの専門分野である「音」です。

元々、当社の研究は、上階や隣の住戸の生活音を抑える防音が主流でした。当社が先駆けたトイレ排水管の遮音が、瞬く間に他社に広がったこともありました。ですが、家は「人に楽しみを与える場」でもあってほしい。それで、今まで培ってきた防音技術を集約して、音楽を楽しめる快適防音室&静音室「音の自由区(旧 奏でる家)」を2006年に発売したんです。研究所員なのに自分で設計図面を引いて、全国の建築現場を駆け回っていました(笑)。

小池これまでは騒音や汚染物質など健康を害するものを排除する「マイナス」の考え方が主流だったんですよ。今はリラックスできる音、集中できる照明などを「プラス」する発想です。さらに、これからはIoTで生活の中から集めたビッグデータを、どうサービスにつなげるかを考えていかなくては。私たちは今、時代の転換点に立っているのです。

空気環境をマイナスからゼロへ。ゼロからプラスへ

  • 田中 宏典
    たなか ひろのり
    (入社14年目)
    建築技術研究部

  • インタビュアー 夜久 幸希
    やく こうき
    (入社7年目)
    建築技術研究部

  • インタビュアー 野呂 健太
    のろ けんた
    (入社3年目)
    新領域技術研究部

夜久私たちは空気環境について「建材」と「換気」の視点から歴史を紐解きたいと思います。

建材は空気質と大きな関わりがありますからね。昭和の住宅は隙間が多かったのですが、だんだんと高気密になり、1990年代頃に新築の家に住むと目や喉の痛み、めまいを訴える人が増えてきたんです。
その原因がフローリング材や壁紙の接着剤などに含まれる化学物質だとわかって、2003年に建築基準法が改正されました。そのとき、ホルムアルデヒドを発散する内装仕上げの面積制限や、居室に換気回数0.5回/hの24時間換気システム設置が義務付けられたんです。

夜久当社はどんな対応を?

建築基準法の改正前から、建材メーカーと協力して建材・施工材から出る化学物質濃度を一定以下に抑える研究開発を行い、対策を講じていました。1998年には業界に先駆けて全住宅商品を「健康住宅仕様」にしています。その後もさらに室内濃度低減策を追求し、その結果、当社の住宅は指針値策定物質について国の指針値以上に厳しい自主基準をクリアしていますからね。完全にゼロにはなりませんが、今から6、7年前ぐらいに管理し得る最高レベルまで到達しています。

野呂では、建材以外で、他のハウスメーカーとの違いは何ですか?

やはり換気システムでしょう。24時間換気も法改正の前からやっていましたから。

田中「換気回数0.5回/h」は、1時間当たりに家の空気の半分を入れ替えることを指します。つまり、決められているのは回数だけ。ところが冬は、室内外の温度差で居室内の空気が2階の給気口から外へ出ていき、その分、廊下からよどんだ空気が居室内へ引き込まれてくる。そこには人体から出る水蒸気や臭いも含まれています。私たちは、ただ単に換気回数をクリアするだけでなく、きちんと新鮮な外気を居室に取り入れて、きれいな空気環境にしたいと考えたんです。

初期の給気口は穴だけで、排気は機械でしたよね。世の中は今でもこれが一般的です。

田中私たちは、外気温に応じて開度を自動的に調節する「オートブレス」を開発して、給気口として使用しています。さらに廊下からのよどんだ空気の逆流に対しては、2015年に「風なびES」を開発しました。外気に近い小屋裏温度を測り、居室内との温度差が一定以上になる冬だけ自動でファンを駆動して、外気を居室内へ給気することで逆流を防ぎます。消費電力量を従来より30%もダウンして、特許も取っています。同じ年に空気清浄装置「空気浄化ef」も開発し、花粉やPM2.5も取り除くように。「空気質は他のハウスメーカーに負けない!」と個人的に自負しています。

野呂空気質の良さは伝わりにくいので、将来は数値など目に見える形で表せたらなと思います。

夜久それに空気は水や食べ物と同じように体に入るものですから、これからは「健康」の一環として空気質を高めるアイデアや技術も生み出したいですね。

たゆまぬ研究開発と現場での実証が構造を進化させる

  • 山田 拓久
    やまだ たくひさ
    (入社22年目)
    建築技術研究部

  • 前田 珠希
    まえだ たまき
    (入社24年目)
    建築技術研究部

  • インタビュアー 辻 千佳
    つじ ちか
    (入社4年目)
    建築技術研究部

前田さんは構造、山田さんは保証に関わる検証が専門です。今日はキャリア20年以上のお二人に、当社の戸建住宅の変遷をお聞きしたいと思います。

山田1981年に建築基準法が改正されて、現在の「新耐震基準」に変わったんですよね。それに適合した当社の戸建住宅を社内では「G型」と呼んでいます。2000年には「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」の施行や建築基準法の改正があり、そのあたりから一般のお客さまも住宅の品質や性能を重視されるようになりました。そうして2006年に、25年ぶりに工法を刷新した新ブランド「xevo(ジーヴォ)」を出しました。あそこで飛躍的に進化した印象があります。

xevoといえば「外張り断熱通気外壁」ですよね。当時、世間では「外張り断熱」と「充填断熱」のどちらが優れているか論争があったそうですが?

山田「外張り断熱通気外壁」は両方のいいとこ取りをした技術です。断熱性はもちろん、壁内部の通気性が良くなり、1層だった防水層も2層の二重防水になりました。そんな技術の積み重ねによる耐久性の向上で、10年だった住まいの初期保証(防水)※1をxevoでは15年に延ばしました。今は30年ですね※2。私は耐久性や構造耐力を検証して保証期間を裏付ける部署にいたんですが、研究者や商品開発者は大変だったと思いますよ。

  • ※1 雨水の浸入を防止する部分
  • ※2 xevoΣ・xevoΣ PREMIUM・xevo GranWood・PREMIUM GranWood・skye3階建て

前田さんはその頃、何を?

前田産休です(笑)。復帰後、2010年から全く新しい構造躯体の開発に取り組んでいたんですが、2011年に東日本大震災が起き、繰り返しの巨大地震に耐えられるように、さらに高い性能を目指さなければと感じました。耐震性の鍵になる「Σ(シグマ)」形デバイスにたどり着くまで、丸や四角、斜め、H形やK形など、試験材を100個近くは作りましたね。「Σ」形に決まってからも、角度を変えたり、スリットを入れたり、穴を開けたり…。そうして2014年、戸建住宅「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」が完成したんです。構造に関しては私はやりきったので、後は辻さんに託します(笑)。今後は個人的にですが、地震の時に家がどうなるか、邸別の構造や地盤から安全性を評価する技術やシステムを開発したい。地震や大雪などの際、専門家から見れば安全でも、住んでいる方は本当に大丈夫か心配されるんです。そんな時に安心していただけるように、数値などで見える化できたらと考えています。

山田私たち研究所員は、災害が起こると現場へ行き、お客さまの家を調査させていただきますからね。ご入居者の声や現場が大事で、そこに答えがあるんです。保証期間に関しても、環境が厳しい地域に実物を建てて劣化を調べる暴露(ばくろ)試験を続けてきました。xevo発売の2006年から13年が経った今、耐久性などの結果が出始めています。担当者は全国を飛び回り、当時やったことが正しかったか答え合わせをしています。それを次につなげる。研究開発とは、その繰り返しです。

では最後に、新米の私へのアドバイスをお願いします。

前田神は乗り越えられる試練しか与えない、です(笑)。

はい。壁にぶつかっても越えていきます!

ストック住宅や労働環境の課題を
インスペクション(点検・診断)の技術で解決

  • 今仲 雅之
    いまなか まさゆき
    (入社27年目)
    建築技術研究部

  • 南川 達浩
    みなみかわ たつひろ
    (入社18年目)
    新領域技術研究部

  • インタビュアー 大澤 淳司
    おおざわ あつし
    (入社10年目)
    建築技術研究部

  • インタビュアー 湯淺 嵩之
    ゆあさ たかゆき
    (入社5年目)
    建築技術研究部

大澤当社の戸建住宅や賃貸住宅には、長期の保証・点検プログラムが用意されています。ストック住宅の価値を維持するにも点検は不可欠です。これらを支えているのが、私たちが開発するインスペクション、建物検査の技術です。今仲さんは外壁検査システムを開発されましたよね。

今仲はい。現場への本格導入はこれからですが、デジカメの画像で外壁の色あせ程度を数値化する技術で、「外壁未来びゅー」と名付けました。従来の外壁検査は、色あせやひび割れがないかを目視確認するか、塗膜が剥がれていないかを触診するのが主な方法でした。これをもう少し客観的に判断できないかと考え、お客さまに最も分かりやすい「色」の劣化を数値化しようと思い付いたんです。

大澤研究所では、色を測って数値化する色差計を使いますが?

今仲高価な色差計を全国に導入するのは難しい。しかも、結果は数字だけなので一般の人には分かりにくい。そこで、ひらめいたのがデジタルカメラです。点検員は必ずカメラを持っていくので新しい機械もいりません。それから色を評価・補正する計算式や画像処理を勉強し、ソフトウエアのプログラムもゼロから作りました。新築時の色のデータや地域ごとの経年変化のバックデータも活用。壁を撮影し、お客さまにその場で劣化の進行具合をチャートでお見せできるシステムとして完成させました。この時、身に付けた画像処理技術が、ドローンによる屋根点検システムの開発につながったんです。

湯淺屋根点検は10mぐらいのポールにカメラをつけて屋根を撮影するんですが、点検員に聞くと「ポールは重いし、賃貸住宅は建物が大きくて大変だ」と。そこでドローンを自動飛行させて屋根を撮影するアプリケーションを開発したんですよね。屋根のひび割れを画像処理の技術で自動検出して、その場でお客さまにご覧いただけるのが大きなポイントです。

大澤ここまで壁、屋根と続きましたので、次は床下です。

南川狭小空間点検ロボット「moogle(モーグル)」ですね。床下点検って、本当に大変なんですよ。床下にはキッチンなどの点検口から潜るんですが、高さが50cmぐらいしか無い中、家1軒8m×10mぐらいの面積をほふく前進しながらコンクリートのひび割れや水漏れがないかを調べます。室内が汚れないように養生して、点検後は汚れた服を着替える場合も多いんですが、お客さまに申し訳なくて…。こういった点検員やお客さまの負担を解決するために開発したのが、このロボットです。

大澤着想はいつ頃ですか?

南川1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、がれきの間を通って救助を行うレスキューロボットの開発が盛んになっていました。このロボットを床下点検に活用できないかと考え、大学や企業と共同で開発し、2012年に販売を開始しました。

大澤moogleは床下点検以外の用途にも発展しそうですね。

南川ええ、高速道路の橋梁や鉄道の暗渠を点検するのに使えないか、などのお問い合わせも多くあります。労働者不足も社会問題化しているので、建物点検の技術革新は急務です。一番いいのは、建物自体が劣化を自動で判断するセルフモニタリングでしょう。その段階に至るまでは、人が苦労しなければ点検できない場所や直接目視できない内部を点検できるツールの開発に取り組んでいきたいですね。

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