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2022年11月、東京都港区高輪に誕生した「プレミストタワー白金高輪」は、高経年マンションを建て替える社会課題解決型のプロジェクトとしてその歴史を刻むことになりました。第1回目は、プレミストタワー白金高輪が生まれた背景と魅力を生み出す取り組みについて、企画担当者の髙橋が解説します。
白金高輪に
新たな価値を生む「建て替え事業」
六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、赤坂アークヒルズ、虎ノ門ヒルズなど複合的な先進施設が息づく東京都港区。その南西部に位置する「白金高輪」は、江戸時代には武家屋敷や寺院が建ち並ぶ屋敷町として栄え、以来落ち着いた佇まいの住宅地として営みを続けてきました。東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線「白金高輪」駅から徒歩1分※1という利便性の地に建つ「プレミストタワー白金高輪」は地上35階建・全284戸。重厚感と安定感を持ちながら伸びやかな印象を持つタワーレジデンスが、街と調和しながら存在感を放っています。この開発プロジェクトがスタートしたのは遡ること2010年。ある分譲マンションの建て替え構想がその発端となりました。
髙橋:「かつてこの場所には「パシフィック高輪マンション」「トーア第二高輪マンション」という2棟のマンションが建っていましたが、いずれも築40年以上と老朽化が進んでおり、耐震性や防災・セキュリティ面での不安を抱えていました。そこで2010年に地権者を中心に検討委員会が発足、以来協議を重ね、2016年に建替え決議が可決。2017年には港区に認可を受けて円滑化法※2に基づく建替組合が設立、そこから私たち大和ハウス工業の企画部門が参画し、より具体的なデザイン設計を進めることになったのです」

計画地周辺概念図

  • 総合設計制度※3を活用して容積率割増※4を実現、 マンション2棟と隣接3敷地※5を含めて計画されたタワーレジデンスには「住居スライド方式」という特殊ルールを採用した住み替えが行われることになりました。

    髙橋:「もともと企画・基本設計を進めていた株式会社HOU一級建築士事務所さんが、旧2棟の地権者さんに従前の建物に近い形で階を割り当てる「住戸スライド方式」を提案してくださっていたんですね。地権者さんがこの方式に同意頂けたことで、中層部から上を分譲として新たな方々にご提供できることになりました」
  • 住居取得の方針概念図(資料提供:株式会社HOU一級建築士事務所)

白金高輪の“輝点”となるタワーレジデンスに
  • デザイン監修に光井純氏を迎え、紡ぎ上げたタワーのコンセプトは「灯台」。

    髙橋:「この建物は首都高一号・二号線、第一京浜など幹線道路に挟まれていろいろな方面から見える位置にありますし、建物自体のシルエットもバランスが取れているので多くの方の目に留まります。この地に長く住んで来た方、新たにここで生活を始める方に誇りを持って住んでいただけるよう、どの方角から見ても美しいデザインを実現し、街を照らす「輝点(起点)」として白金高輪エリアのシンボルになるような光のレジデンスを作りたいと思いました」
髙橋:「輝きを放つためにこだわったのは外壁のデザインです。建物は容積を最大限消化していたので、デザインに使える壁面の厚みが約10cmしかなかったんですね。その10㎝で何ができるのか?というデザイン検討が続き、最終的には建物に立体的なリブ(うねり)を造形した白い梁を入れ、上層部はそこを照明で照らして光を反射する形になりました。ビルやリブの模型を作って、いろいろな角度から照明を当てるテスト等を20パターンほど繰り返しては、光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所さん、照明デザイン監修の近田玲子デザイン事務所さん、そして私たちのプロジェクトメンバーで議論を重ねて、魅力的なライトアップを創り上げていきました」
髙橋:「高層階はブルーとグレーを使ってグラデーションに仕上げ、空へと伸びあがっていくイメージに。デザインが切り替わる3階から下の基壇部回りは大地に根差すようなアースカラーを採用しました。岩をそのまま削ったようなざらつきのあるイメージの天然石を多用し、ランドスケープも斜めに切ってより自然な形を出すことで、灯台が建つ岸壁のような重厚感のあるイメージを表現しています。照明も自然の陰影を出し、足元の樹木や天然石を美しく光らせることで、近景と遠景が調和し一体化した風景になるようにしました」
  • 髙橋:「建物の内部も「光」が大きなテーマとなっています。エントランスは神秘の光とも言われるアンテロープ・キャニオン(米アリゾナ州の渓谷)をイメージし、地層の有機的な曲線の美しさの中に光が振りそそぐ様子を表現しました。シャンデリアの光がこぼれ落ちる真下には、灯台のサーチライトに入っている大きなガラス玉を模したオブジェをモチーフとして入れています」
  • 髙橋:「このエントランスは1階にありますが、レジデンスの北側と南側では高低差があるので、北側の外から見ると2階くらいの高さを見上げるような形になるんですね。窓を通して天井の造形や上から降り注ぐ光がかいま見え、外を通る方にも楽しんでいただけるようになっています」
優美な光を享受する空間として誕生したプレミストタワー白金高輪。次回はプレミストタワー白金高輪が目指した「人をつなぐ魅力ある環境づくり」についてお伝えします。(第2回へ続く)
※1 現地より徒歩1分/約50m *徒歩分数は1分=80mとして換算し、端数は切り上げています。
※2 「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」。マンションの建替えを円滑に進めるため、2002年12月に施行された、区分所有法に基づく建替え決議後の手続きや手法を定めた法律。
※3 建築基準法で特例的に緩和を認める制度。
※4 建築基準法による容積率を緩和すること。
※5 テナントビル、店舗付き分譲マンション、個人宅。


※概念図は地図を基に描いたもので実際とは多少異なる場合があります。