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コラム vol.202
  • 不動産市況を読み解く

生産緑地法について考える(3)

公開日:2017/05/31

生産緑地に関することについては、第190回第200回のコラムで述べてきました。第3回目の今回は、生産緑地は「2022年問題」として注目を集めていますが、その内容について「このままでいいのか」という声も多く、また2022年までにはまだ5年以上あることから、この後に制度変更する可能性もあると考えられています。
生産緑地法は、すでに既出のコラムで述べたように、これまで何度か大きな変更がありました。そして、小さな変更(緩和)も幾度かありました。2017年2月閣議決定された内容にも、いくつかの緩和内容がありました。

生産緑地について、都市における緑地の保全及び緑化並びに都市公園の適切な管理を一層推進するとともに、都市内の農地の計画的な保全を図ることにより、良好な都市環境の形成に資するための「都市緑地法等の一部を改正する法律案」という内容で、国土交通省から2017年2月10日に発表されたものです。

生産緑地に関する点を抜粋すると以下のようになります。

  1. (1)生産緑地地区の一律500m²の面積要件の緩和(一律500m²から条例で引下げ可能に)
  2. (2)生産緑地地区内で直売所、農家レストラン等の設置を可能とすること
  3. (3)生産緑地の買取り申出が可能となる始期の延期(30年経過後は10年ごとに延長可)

また、「生産緑地の買い取り申し出が可能となる始期の延期」についても規定されました。
その中で、「特定生産緑地制度」というものが創設されました。これが上記(3)です。

条文では、「市町村長は、生産緑地地区に関する都市計画についての告示の日から起算して三十年を経過する日(以下「申出基準日」という)が近く到来することとなる生産緑地のうち、その周辺の地域における公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して、当該申出基準日以後においてもその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、特定生産緑地として指定することができるものとすること。
特定生産緑地の指定は、申出基準日までに行うものとし、その指定の期限は、当該申出基準日から起算して十年を経過する日とするものとすること」とあります。

さらに、「特定生産緑地の指定」は期限の延長もあります。
「市町村長は、申出基準日から起算して十年を経過する日が近く到来することとなる特定生産緑地について当該日以後においても指定を継続する必要があると認めるときは、その指定の期限を延長することができることとし、当該延長に係る期限が経過する日以後においても更に指定を継続する必要があると認めるときも、同様とするものとすること」と、条文で特別生産緑地も延長の可能性について述べられています。

こうして(1)~(3)の新たな変更を見ると、国(国土交通省)は、生産緑地を減らすことなく、維持していきたいと考えているようです。

既に述べたように、生産緑地は売買できます。もちろん、その際には農地法3条の適用を受けますので、権利移転には一定の許可が必要です。生産緑地には税制度の恩恵を受ける一方で、さまざまな制限を受けます。こうしたことから、売却や指定解除を経て転用することが多いようです。こうした、流れを受けての法律の改正といえそうです。

しかし、現実には農業だけでは生活が厳しいという声も多いようです。

図1:1戸当たり農家所得

農家所得 農家所得
農業所得 不動産経営所得 その他の所得
全体 610万円 約25% 約65% 約10%
特定市 660万円 約25% 約70% 約5%
特定市以外 510万円 約30% 約60% 約10%

「農家所得」は下一桁を四捨五入し、「農業所得」、「不動産経営所得」、「その他の所得」は5%刻みで表示

(農林水産省「都市農業に関する実態調査(H23年)」より作成)

図2:農業を続ける上での支障(農家数割合、複数回答)

(農林水産省「都市農業に関する実態調査(H23年)」より作成)

図1を見ると、都市部において農業を営む多くの方々は、不動産収入に頼っているようです。
また、図2に見られるように、多くの農業従事者が相続税や固定資産税といった税金面に課題を持っているようです。

こうした状況がどう変化していくのか、生産緑地を所有する方々は、法律の改正を含めて注意深く情報を得た方がよいといえるでしょう

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