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コラム vol.221-1
  • 不動産市況を読み解く

土地活用の経済学(1)~不動産市況を見る目を養う講座~第1回「不動産市場を見る目:四象限で見る」

公開日:2017/10/26

「土地活用」、つまり不動産を運用していくなかでは、不動産市場がどのようなメカニズムで変化していくのかを理解しておくことはとても大切なことです。

不動産の価格も、一般的な財やサービスの価格と同じように、その物を買いたいと思う人たちの需要の大きさとそのものを市場で売りたいと思う人たちの供給の大きさによって決定されます。しかし、不動産は資産としての性質も持ちます。資産運用という言葉で表現されるように、一度建てられた不動産は耐久性を持ち、何十年もの間、収益を生み出し続けるのです。
マサチューセッツ工科大学不動産研究センターのウィートン元教授は、不動産は価格が上昇しているときには「資産」としての性質が強く、その価格が下がり始めたときには「財・サービス」(経済学では「効用」といいます)としての性質が強くなるといいます。

例えば、住宅について考えてみましょう。住宅を資産としてとらえれば、価格が上昇しているときは、そのキャピタルゲイン(資産そのものの価格上昇からの売却益)を得ることを目的として購入することとなります。そうすると、価格が下落しているときには誰も購入しないということになってしまいます。しかし、私たちは、その価格が下がっているときにでも購入します。その家で家族と一緒に日々の食事を楽しんだり、誕生日や結婚記念日などを一緒に祝ったりする時間を買っているといってもいいでしょう。つまり、サービスまたは効用を買っているのです。賃貸住宅経営でも同様に、価格が下がっている時でも、そのサービスを購入する人たちから家賃をいただくことができるわけです。

ここで、ウィートン元教授が、彼の代表的な不動産経済学の教科書で紹介している4象限モデルというものを使って、不動産市場のダイナミクスを解説しましょう。

図:4象限モデル

Source:Denise Disasquale,William Wheaton(1996).,Urban Economics and Real Estate Markets

第一象限は、「空間市場」といいます。

ここでは、一般的な財・サービスと同様に、需要と供給によって「価格」ではなく「家賃」が決定されることになります。価格が高くなれば需要は低下し、価格が下落すれば需要が低下していくために、その需要曲線は右下がりとなります。一方、供給曲線は、需要と反対に右上がりになるわけですが、不動産はその生産に時間がかかるために、ある時点では供給が硬直的になります。つまり、垂直になるのです。そうすると、家賃は需要の大きさだけで決定されるわけです。

第一象限で「家賃」が決定されると、第二象限に移ります。

第二象限は「資産市場」であり、そこでは資産「価格」が決定されます。資産価格は、家賃が高い不動産ほど高くなりますが、家賃(R)の水準に比例して、単純に価格(P)が決定されるわけではありません。資産の価格は、経済学では将来収益、つまり家賃の割引現在価値によって決定されると考えます。それは不動産だけでなく、株などすべての資産にも当てはまる考え方です。そうすると、現在価値に割り戻していく、割引率(i)に強い影響を受けるのです。つまり、家賃が横ばいであったり下がったりしても、価格は上昇する可能性があるのです。その詳細は、本連載の中で詳しく説明していきます。

第二象限で資産価格が決定されると、第三象限の「建築着工市場」へと移っていきます。

賃貸住宅を建てるかどうかという意思決定は、経済価値が高いほどに建築したいと考える人が多くなるわけですが、建築費(C)との兼ね合いで最終的に決定します。高い収益が得られることが分かったとしても、建築費が高ければ手元に残る利益は小さくなってしまうために、その建築を控えてしまいます。つまり、建築着工市場は、資産価格と建築費の関数によって決定されると考えているのです。

最後に第四象限です。第四象限は、「ストック調整市場」と呼ばれます。

近年において、空き家問題が注目されるようになってきました。空き家問題は、住宅のストックが住宅需要を上回るときに発生します。第三象限の建築着工市場で新しい不動産が建築されると、その建築された分が新しいストックの増加につながります。しかし、建て替えなどの場合には、古い建物が取り壊されますと、他の用途に転換される場合にも、当該市場のストックは減少することになります。つまり、第三象限で決定された建築着工量と滅失した量との差分によって、新しいストック量が決まってくるのです。
このように決定された新しいストック量が、第一象限に戻り、そのストック量と次の需要量に応じて新しい家賃が決定されるという循環を持っていると考えられています。

土地活用に考えていくためには、このような「不動産市場を分析していく目」が求められます。
需要と供給によって決定される第一象限では、不動産に対する需要がどのように決定されるのか、今後、そのような需要はどのように変化していくのかを見極める目が必要となります。
第二象限では、超低金利が続いていますが、そのような金利水準と密接な関係を持つ割引率が、どのように決定され、今後、どのように変化していくのかということを予測する目が求められます。
近年においては、賃貸住宅を建てすぎではないか、都心の大規模開発は将来の高い空室をもたらすのではないかなどといった声が聞こえます。第三象限の建築着工市場を見ていくためには、今後、建築費がどのように推移すると考えるのか、どのようなメカニズムで着工されているのかといった構造を理解する目が必要となります。第四象限のストック調整市場では、前述のような空き家問題の本質を理解する目が要求されます。

一連の連載では、「土地活用の経済学」として、この四象限に基づき、不動産市場を見る目を提供していきます。

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