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コラム vol.240-2
  • 土地活用法律コラム

土地活用・不動産投資におけるトラブル第2回 収益不動産の共有におけるトラブル

公開日:2018/05/31

POINT!

・共有物の利用・管理・処分等については、過半数の同意で行うことができる管理行為と、共有者全員の同意が必要な変更行為とに分かれる

・相続によって共有となった場合には、遺産分割によって単独所有にまとめる方が良い

第1回のコラムでは、共有土地を活用しようとする際に発生するトラブルについて考察しましたが、今回は、単独で所有していた収益不動産について、相続が発生したことにより、後発的に共有関係が生じ、結果として発生するトラブルを考察してみたいと思います。

1.相続による共有関係の発生

被相続人の財産は、その死亡と同時に相続人に承継されますが、相続人が複数の場合には、相続財産は相続人の共同所有となり、この場合には、民法の共有に関する規定が適用されることになります。また、被相続人の相続を契機とした、遺言や遺産分割協議によっても、複数の相続人が相続財産を共同で取得することになり、結果として相続財産を共有することになります。たとえば、投資用賃貸住宅を被相続人が単独で所有していたような場合、ご入居者の決定、リフォーム、賃料の回収、賃料の変更等については、自らの意思で自由に行うことができますが、これが複数人で共有するとなると、共有物の利用・管理・処分等については、その内容に応じて、[1]各共有者が単独でできたり、[2]共有者の持分価格の過半数の同意が必要であったり、[3]共有者全員の同意が必要であったりすることになり、共有者間で足並みが揃わないような場合や、事実上管理している共有者が勝手な行為をするなどして、トラブルに発展することがあります。

2.共有の収益不動産における賃貸借契約の締結・解除

  1. 1)共有の収益不動産を、第三者に新たに賃貸するような場合、当該行為が共有者の持分の価格の過半数の同意で行うことができる管理行為に当たるのか、共有者全員の同意が必要な変更行為に当たるかは、目的の不動産の種類や賃貸期間に応じて異なります。
  2. 2)これまでの裁判例によれば、賃貸借契約について、[1]借地借家法の適用がある場合、又は[2]民法が定める短期賃貸借期間(土地は5年、建物は3年)を超える場合は、当該賃貸借契約の締結は変更行為に該当し、共有者全員の同意が必要になるとされます。従って、共有土地を資材置き場として3年間第三者に賃貸するような場合には、上記[1]にも[2]にも該当しないため、管理行為に該当します。しかし、共有賃貸住宅の一室を第三者に2年間賃貸する場合は、上記[2]には該当しませんが、[1]に該当するため、変更行為に該当し、共有者全員の同意が必要となります。
  3. 3)賃貸借契約の締結が管理行為に該当する場合、賃貸借契約書における名義や署名捺印の要否等が問題となります。たとえば、上記の事例のように、土地を資材置き場として第三者に賃貸する場合において、共有者がABCの3名(持分均等)いる場合に、Cだけが当該契約に反対し、契約締結に協力的ではない場合、ABとしてはどのような賃貸借契約書を締結すべきでしょうか。この場合、共有者間の内部的な意思決定には、反対していたCも拘束され、結果として、共有者全員で賃貸借契約を締結することになりますので、契約書における賃貸人の名義としては、ABC3名の連名となります。そして、実際に署名押印する当事者としては、共有者ABCの代表としてABが行えば足りるといえます。また、念のため、共有者間の意思決定経過を別の書面で残しておくことも有用です。もし、上記のような対処をせずに、AB名義で賃貸借契約書を締結したような場合、後になってCからABが勝手に契約を締結したなどと主張してくるリスクがありますので、契約書の形式的な部分であっても、十分留意する必要があります。
  4. 4)次に、賃貸借契約の解除については、これまでの裁判例によれば、共有物の管理行為に該当するとされておりますので、共有不動産が土地でも建物でも、長期の賃貸借契約であっても、いずれも管理行為として、共有者の持分価格の過半数の同意で足ります。この場合の解除通知書の送付方法も、先の契約書の締結と同様に、共有者全員の名義の下、共有者の代表者が実際の送付手続を行うことになります。

3.共有の収益不動産における賃料の収受、変更

  1. 1)収益不動産につき相続が開始した場合、当該収益不動産に係る賃料の帰属は、以下のとおりとなります。
    1. [1]相続開始前に発生した賃料は、金銭債権たる相続財産に該当し、相続人全員が相続割合に応じて分割単独債権として承継。
    2. [2]相続開始から遺産分割完了までの間に発生した賃料は、相続財産ではなく、共有関係から発生するものであって、相続人全員が相続割合に応じて単独債権として取得。ただし、相続人全員が同意して遺産分割の対象に含めることは可能。
    3. [3]遺産分割完了後に発生した賃料は、遺産分割によって取得した共有者の共有割合に応じて分割単独債権として取得。
  2. 2)上記のとおり、賃料債権は分割単独債権とされますが、実務的には、賃貸借契約書等で賃料の振込先口座を特定することにより、賃料の代理受領権を付与し、共有者の代表者が賃料を受領し、その後に共有者に分配することが多いと思います。このケースにおいて、賃料の受領者が、他の共有者に賃料の分配をしないような場合には、過去の未精算の分配金請求を行うほか、賃貸借契約を変更(共有物の管理行為)する等して、賃料の代理受領者を変更したり、各自で賃料を請求したりする方策があります。3)収益不動産の賃料を変更しようとする場合、一般的には、管理行為に該当するとされており、共有者の持分価格の過半数の同意で行うことができます。もっとも、裁判例によりますと、マスターリース契約における賃料の変更は変更行為に該当し、共有者全員の同意が必要であるとしています。これは、マスターリース契約の特性を考慮し、特に賃料の変更は重大な影響が生じると理解しているためです。 

4.共有の収益不動産における経費負担

  1. 1)収益不動産の共有者は、賃料を収受できる一方で、当然、その持分割合に応じて経費等も負担しなければなりませんが、共有者の一部が経費負担に応じなかったり、リフォームの内容や金額をめぐって争いになったりすることがあります。
  2. 2)通常の収益不動産における経費等は、賃料の受取窓口になっている者が事実上負担し、後に他の共有者に求償することが実務的には多く、この場合には、賃料の分配金と相殺することによって、経費負担分を回収することになると思います。もし、このような回収方法が取れず、一部の共有者が共有不動産の経費を負担し、他の共有者が当該経費負担に応じないような場合には、民法に定める共有持分買取請求やその他の法的回収手続を行う必要があります。共有持分買取請求は、経費等の負担の請求をして1年経過しても応じないようなときに、相当の求償金を支払うことにより、持分を取得できる制度ですが、この買取請求において、経費等の負担分と求償金を相殺することにより、債権回収ができると共に、問題の共有者との共有関係を解消することができます。なお、上記における「相当の求償金」については、当事者間の協議で合意できれば問題ありませんが、金額が折り合わないと、裁判等によって解決する他ありません。
  3. 3)リフォームの内容や金額をめぐっても争いになるところですが、大規模な修繕に及ぶようなものは共有物の変更に当たるため、共有者全員の同意が必要となり、それに至らない修繕等は管理行為に該当し、軽微な補修等については保存行為として単独で行うこともできます。従いまして、収益不動産のリフォームについては、その規模、内容、金額について、事前に共有者間で協議をし、合意した内容について書面を締結することが肝要となります。

収益不動産について共有関係が生じた場合、共有者間で話がまとまらないと何事も決められなくなり、結果として、収益不動産が毀きそん損したり、機動的な処分ができずに、共有者全員の不利益につながったりすることがあります。当初は、トラブルになることもないだろうと考えていても、些細なことからトラブルに発展することはよくあるものです。

従って、収益不動産を共有することは慎重に検討した方がよく、また、相続によって共有となった場合には、遺産分割によって単独所有にまとめる方がベターではないでしょうか。
また、後発的に収益不動産について共有関係に至った場合には、共有持分買取請求、共有物分割請求等を活用して、共有関係を解消することも一つの方策であるといえます。

以上

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原 大二郎(はら だいじろう)

中小企業庁 経営革新等支援機関 認定
事業再生実務家協会会員
東証マザーズ上場株式会社ゼネラル・オイスター社外取締役(監査等委員)
株式会社ライトアップ社外取締役

長野県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業 第一東京弁護士会所属。
ライジング法律事務所パートナー弁護士。
司法書士資格を有し、用地取得、マンション開発、戸建販売、投資用アパート販売等の各種不動産取引に関して、幅広い経験を有している。
不動産取引のほか、事業再生の分野にも特化して取り組んでいる。

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