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コラム vol.240-8
  • 土地活用法律コラム

続・土地活用・不動産投資におけるトラブル第2回 定期借家などによる期間限定の契約について

公開日:2018/11/30

POINT!

・普通借家契約の場合、賃貸期間を明確に限定して賃貸することはできない

・定期借家契約、建物取壊期限付き建物賃貸借契約、一時使用目的建物賃貸借契約の各制度によって、法定更新のない賃貸借契約が可能となる

賃貸住宅を所有されているオーナー様が、近い将来建て替えを予定しているような場合、新たに入居を募集する賃借人の契約や、すでに入居されている賃借人との契約を期間限定の契約に切り替えたりすることがあります。しかし、この期間限定の合意が口約束で、後になって賃借人が意を翻したり、借地借家法に従った所定の手続きがなされていなかったりして、期間限定の合意が認められず、賃借人との間で退去トラブルになることがあります。そこで今回は、建物賃貸借契約に関して、契約の更新のない賃貸借契約の種類やその留意点について説明します。

借地借家法による原則

借地借家法による普通借家権については、期間満了の1年前から6カ月前までに賃借人に対して更新しない旨の通知(更新拒絶通知等)などをしないと、借地借家法によって当然に契約が更新されます。また、仮に更新拒絶通知などをしたとしても、いわゆる正当事由が認められないと、やはり契約が当然に更新されてしまいます(法定更新)。そのため、オーナー様から賃貸借契約を終了させることは難しく、普通借家契約を前提にした場合、賃貸期間を明確に限定して賃貸することはできないといえます。
そこで、借地借家法は、普通借家契約とは別に、定期借家契約(借地借家法第38条)、建物取壊期限付き建物賃貸借契約(同法第39条)、一時使用目的建物賃貸借契約(同法第40条)の各制度を定め、法定更新のない賃貸借契約が可能になっています。

定期借家

定期借家契約は、法定更新のない契約で、契約期間が終了した時点で確定的に契約が終了し、確実に賃貸物件の明け渡しを受けることができます。契約期間は自由に定めることができ、契約期間を1年未満とすることも可能です。
定期借家契約については、契約締結前に、賃借人に対して、契約が更新されず、期間満了により契約が終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければならないとされています。この事前の説明や書面の交付を怠ると、定期借家契約として認められなくなります。
また、契約締結方法についても、公正証書などの書面で行うべきです。借地借家法によれば、必ずしも公正証書によって契約を締結する必要はないのですが、賃借人との間で事後に定期借家契約締結前の説明などについて争いとなるリスクが起こり得ますので、実務的には公正証書により契約締結を行った方が安全といえます。公正証書による契約締結の場合、締結段階で公証人から契約内容について説明されますので、リスクが起こりにくくなります。したがって、必ず賃借人である本人に公証役場に出頭してもらうことが肝要です。代理出席の場合には、公正証書による上記メリットが薄れることになってしまいます。
定期借家契約における契約期間が1年以上の場合には、期間満了の1年前から6カ月前までの間に、賃借人に対して、契約期間満了により終了する旨の通知(事前通知)をしなければ、契約の終了を対抗することができないとされています。この事前通知については、通知時期が定められていますので、実務的には、配達証明付の内容証明郵便で通知を行う必要があります。なお、万が一上記通知を所定の期間内にしなかったとしても、普通借家契約のように更新されることはなく、通知から6カ月経過すると、契約終了を賃借人に対抗することができます。
期間内の中途解約は、原則として認められませんが、賃貸物件が居住用で床面積が200m2未満である場合において、賃借人が転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情により、物件を生活の本拠として使用できないようなときには、賃借人から解約申し入れをすることができ、1カ月を経過すると契約が終了することになります。もっとも、当事者間で上記とは別に中途解約権を賃借人に契約上認めた場合には、賃借人は、上記以外の理由で中途解約権を行使することができます。

普通借家契約では、特約いかんにかかわらず、借地借家法上の賃料の増減請求が認められていますが、定期借家契約では、賃料改定に関する特約が締結されると、当該特約が優先し、賃料の増減請求は排除されることになります。定期借家契約に関しては、当事者間で別途合意することにより、再度新たに契約を締結すること(再契約)自体は問題ありません。ただし、従前の契約書の契約期間だけを変更するなどの対応では、普通借家契約とみなされるリスクがありますので、必ず新たに事前説明、書面交付、契約書の締結を行う必要があります。

 

建物取壊期限付き建物賃貸借

法令又は契約により一定期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物賃貸借契約を締結するときは、建物を取り壊す際に、賃貸借契約が終了する旨の特約を合意することができるとされています。
「法令により建物を取り壊すべきことが明らかな場合」とは、法令それ自体に基づく場合及び法令に基づく行政庁の処分によって一定期間経過後に建物を取り壊す場合のことで、例えば、敷地が土地収用法により収用される場合などです。単に事業計画が存在するだけであるとか、事業の実施時期が決まっていない場合には、「取り壊すべきことが明らかな場合」には該当しません。
また、「契約により建物を取り壊すべきことが明らかな場合」とは、賃貸人を拘束することができる契約の効力として、賃貸人が一定期間経過後に建物を取り壊すべき法的義務を負担している場合をいいます。したがって、賃貸人が単に建物の建て替え計画を有しているにすぎない場合や、建て替え業者との間で建替工事契約を締結しただけの場合は、「契約により建物を取り壊すべきことが明らかな場合」には該当しません。そのため、リフォームを目的とした賃貸住宅の建て替えに備える場合の契約としては活用できません。
建物取壊期限付き建物賃貸借契約においては、建物を取り壊すべき事由を具体的に記載した書面による特約をする必要があり、この手続きを踏まないと効力は認められません。
建物取壊期限付き建物賃貸借契約は、建物を取り壊すこととなる場合に賃貸借契約を更新なく終了するものですが、契約期間を建物取り壊し時に一致させる必要性まではありません。そのため、10年後に建物を取り壊すべき場合に、2年間の借家契約を締結することができ、10年後の建物取り壊し時までは、普通借家権と同様、法定更新等の適用があります。 

一時使用目的建物賃貸借

借地借家法では、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には、借地借家法の法定更新に関する規定等は適用しないと定めています。建物の賃貸借が一時使用のためのものであるか否かは、単にその期間の長短だけを標準として決定すべきではなく、契約の趣旨、賃貸借の動機、建物利用の目的・態様、建物の種類・構造、その他諸般の事情から、賃貸借を短期間に限り存続させる趣旨のものであるかどうかということを、客観的に判断して決すべきであるとされています。

上記のとおり一時使用目的建物賃貸借と認められるか否かはあいまいなところがあり、定期借家制度が設けられた昨今においては、定期借家契約を活用することをお勧めします。

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