土地活用ラボ for Owner

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コラム vol.252-2
  • 土地活用法律コラム

借地借家オーナーのための法律講座第2回 底地の売買における留意点

公開日:2018/09/19

第1回のコラムにおいて、土地活用の基本知識として、土地の所有権、借地権、底地権の違いや、それぞれのメリット・デメリット等について説明をしましたが、今回は、以下の事例を前提に、底地を売却する場合の留意点について、説明したいと思います。

  1. <事例>
    Xは、父親Yからの相続によって、一筆の土地(「本件土地」)を取得しました。本件土地上には現在、A名義の建物(「A建物」)とB名義の建物(「B建物」)が建っています。Xは、本件土地の権利関係について調査したところ、Aと父親Yとの間の土地賃貸借契約書が見つかり、昭和44年に、父親YがAに非堅固建物所有を目的に期間20年で賃貸するとされていました。また、当該契約書では、賃貸土地部分については、本件土地の北側約30坪とだけしか記載されていませんでした。
    一方、Bとの関係については、土地賃貸借契約書を見つけることができませんでしたが、B建物の不動産登記事項証明書を見ると、昭和42年に建築されていることが分かりました。B建物は、本件土地の南側に建築されており、A建物とB建物との敷地境界には明確な境界標のようなものはなく、その境には植木等で仕切られているだけでした。
    上記のような状況で、Aからは、本件土地のAの借地部分(「A借地部分」)について買い取りたいとの話がありました。他方、Bとしては、引き続き本件土地のB借地部分(「B借地部分」)を使用したいとのことでした。
    Xさんとしては、本件土地自体の継続保有については企図しておらず、処分をしたいと考えています。

1.底地の売却先等

底地とは、一般的には、借地権が設定された土地を意味し、底地には土地上に借地人の建物が建っている状況となっています。我が国においては、歴史的に特に借地権が保護されており、借地人が自発的に借地権の終了を希望する場合以外には、地主である底地権者において、借地権を消滅させることは困難とされております。そのため、底地権者においては、借地を自ら使用することは期待できず、又、安定的な地代収入は見込めますが、不動産の活用としてみると、一般的には収益性が低いものとなってしまいます。
そこで、底地を所有されているオーナー様においては、底地の有効活用を図るべく、底地の売却を検討することが考えられます。

1)底地の買手は限定的である
借地権が設定された底地は、先に説明しましたとおり、自ら使用することは容易ではありませんので、自ら建物を建てたいと思う人は購入することはありませんし、よっぽど地代の設定が良くない限りは、収益性も低いため、投資目的で購入したいという人も基本的にはいません。そのため、一般的には、底地の需要は低く、底地を単純に第三者に売却しようとすると、更地価格から借地権割合分を控除した金額より、更に安価な金額でしか売却できないことが多いと思います。

2)底地の効果的な売却先・売却方法
上記に対して、底地を借地権者に売却する場合には、借地権者としては底地を取得することで、土地の完全な権利を取得することができるので、借地権者にとっては底地の取得はとてもメリットがあり、その売却価格も、相応の価格になる可能性が高いものと言えます。
また、借地人が借地権付建物の売却を考えているようなときは、借地人と協力して、底地と借地権付建物を一括で同時に第三者に売却することによっても、上記と同様に、相応の売却価格にて底地を売却することが可能となります。この点、借地権付建物との一括売却の他にも、借地人との協議により、借地権の消滅、建物の収去・土地明渡を合意することができれば、底地を更地評価として売却することも、その他の条件如何によっては可能となり得ます。

3)本事例での売却候補先
本事例では、Xは本件土地の売却を検討しているところ、AからはA借地部分の買取りの引き合いが有りますので、他の第三者への売却を行うより、少なくともA借地部分をAに売却することで、当該部分の底地評価を最大化できる可能性があります。そのため、本事例では、Aを買受候補先の軸として、交渉を進めることとなります。

2.一筆の土地を複数の借地人に賃貸している場合

1)一体の土地としての処理
土地取引としては、一般に、面積が広く、前面道路が大きいほど、土地の開発上有利になり、その分土地売却額も増加する傾向にあります。従って、一筆の土地を分筆して細切れにして売却するよりは、まとめて一体として売却した方が、売却価格の最大化を図ることができます。
また、その昔は、一筆の土地を複数人に賃貸しているケースも多く見られるところ、本事例のように、残存する借地契約書では、借地部分の特定が不十分であり、いわゆる借地境界も明確になっていないこともまま見受けられます。この場合、一筆の土地を一体として売却し、単独の買受人に取得させることができれば、後述するような借地境界の問題もそもそも発生しません。
本事例では、隣接借地人であるBは、引き続きB借地部分の使用を継続したいとの意向のようですが、条件次第では、一緒にB建物を売却したり、引越しをすることも考えるかもしれません。そこで、Aの買取希望を踏まえて、Xとしては、BとB借地部分も含めて、本件土地全体をAに売却することができれば、本件土地の価値を極大化して売却することが可能となります。
この場合、Bより本件土地の売却に協力を得られるのであれば、(1)XとBとで、B建物と本件土地をまとめて売却する方法、(2)XにおいてB建物を取得し、B建物と本件土地をまとめて売却するか、若しくはB建物をXが取壊し、B借地部分を更地にした上売却する方法、(3)B建物をBに収去させる等して更地にして、本件土地を売却する方法、(4)Bとの間で、将来借地家契約を終了させ、B建物を収去させるとの合意を取得し、当該合意を前提に本件土地を売却する方法が考えられます。

(1)の方法は最もシンプルな方法になりますが、(2)ないし(4)の方法については、Xにおいて本件土地を一体として売却することができるので、より売却価格を極大化できる可能性があります。

(2)の方法はXにおいて特に利用する予定のないB建物を取得するため、余計なコストがかかるため、これに対する対策(建物の所有権移転を留保しつつ、建物取壊しを行い、滅失登記を行う方法等)を検討する必要があります。

(3)の方法については、B建物の収去・土地明渡と売買代金の支払時期との関係が大きなポイントになり、i)売買代金の支払いと同時に建物収去土地明渡を実行させる方法、ii)一部売買代金の支払いを先行させつつ、その後の残代金の支払いと引換えに建物収去土地明渡をする方法、等が考えられます。
上記方法のうち、i)は実行が容易ですが、借地人Bとの関係では、退去の前提として、退去費用等の原資を事実上工面する必要が多いため、Bとの交渉上選択しにくく、ii)は、前払いをしたにもかかわらず、建物収去土地明渡の履行が実行されないリスクが存在することとなります。そのため、実務的にBとの調整が可能であれば、Bの退去費用を先払いしつつ、建物収去土地明渡の実効性を担保するためには、即決和解制度を利用することが有用であると考えられます。即決和解制度とは、正式な訴訟手続を経由することなく、裁判上の和解を行うことが出来る制度で、建物収去土地明渡について、債務名義(相手が履行しない場合は、訴訟手続を経ずに強制執行ができる根拠となる書面)を作成することができるものです。

2)個別処理上記(1)と異なり、Bの理解を得られずに、A借地部分のみをAに売却し、B借地分は第三者に売却し、又はB自身に売却する場合について検討したいと思います。

  1. ア借地境界
    まず、本件土地部分のうち、A借地部分を売却しようとした場合、同土地部分に応当する土地を分筆する必要があります。分筆登記手続は、土地所有者が行う手続であり、借地人は基本的に関与するものではありませんので、本件では、AやBの了解・確認を取らなくてもXのみで分筆登記手続自体はできてしまいます。
    そのため、Aの主張に則して、A借地部分を本件土地から分筆したところ、隣接する借地人Bは、自分が使用している借地部分も含めて分筆されており、分筆に拘わらず、A借地部分の一部につき自己の借地権を主張して、争いになることがあります。
    本件のように、借地契約書がなかったり、あったとしても借地権の対象範囲が概括的な数字に留まる等、具体的に借地権の範囲が特定できない場合には、所謂借地境界を巡って争いに発展することがあります。
    この場合、借地境界と新たに分筆する筆境とを一致させることにより、隣接借地権者との紛争を回避したり、買受人に対する担保責任の回避を図ることができますが、この借地境界の特定については、建物建築時の建物図面、設計図書、現場の状況を勘案して判断した上、最終的には借地権者双方と、地主たる底地権者との間で、借地境界を確認し、確定する必要があります。上記資料のうち、法務局にある建物図面が有力な手掛りとなり得るので、必ず確認しましょう。
  2. イ地中埋設管
    同一土地上に複数の借地権が設定されている場合、上水道等の地中埋設管が複数の借地人で共有していたり、借地境界を越境して存在していることが見受けられます。
    従いまして、底地を売却しようとした場合、借地境界を確定させると共に、地中埋設管の有無を確認し、当該埋設管が共有となっていたり、借地境界を越境している場合には、これを直ちに解消させるか、将来的な解消を合意する等の書面の取付が必要となってきます。
  3. ウ借地契約の内容の特定
    本件において、B借地権部分のみを第三者に売却しようとする場合には、その大前提として、Bとの間の借地契約の内容を明らかにしなければなりません。特に、借地権の発生時期、建物の種類、借地期間、定期借地等の合意、地代、敷金・保証金等については明確にしなければ、買受人において借地権の負担付での底地購入を検討することはできません。
    この点、まず最初に確認すべきは、借地権の発生時期になります。旧借地法と現在の借地借家法の適用上の分岐点は平成4年8月1日であり、この前後で旧借地法の適用か、新借地借家法の適用かが変わってきますので、まず、この点は確実に押さえる必要があります。
    借地権に関する法律の適用関係を確認した後、現状の建物の種類、存続期間、更新状況、地代等の重要事項について確認することとなります。もし、過去の借地契約の内容について、借地契約書等によって明らかにできない場合には、別途借地人との間で借地契約の内容を改めて確認する旨の書面を、買受人も含めた三者間で締結する必要があります。この三者間合意では、過去の借地契約の内容を排除し、新たに確認する合意内容が借地契約の内容とすることを確認する必要があり、併せて、この合意の機会に、借地内容を地主に有利なように変更できるとより良いと思います。

従いまして、本件では、Bとの間の借地関係については、結果として契約書が見つからなかったようですので、その他の客観的事実から推察できる契約条件を基本に、Bとの間で、新たな借地契約の内容に切り替えることができると、底地の売却にも寄与することになろうかと思います。

以上

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