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しつけの心理学①「しつけは厳しく」の落とし穴にハマらないために


テレビなどで痛ましい虐待事件が報道されるたび、「しつけと虐待の境界線」が議論になります。しつけの延長が結果的に虐待となったというケースが多いためですが、本来、「しつけ」とは、強い力を伴うべきものなのでしょうか? 今回は、「しつけは厳しくすべき」という思いがもたらす迷信や過ち、その言葉を正しく実行するためのポイントをお伝えしていきます。

しつけへの迷信が親を惑わせる

「しつけ」と聞くと、どんなイメージがありますか? 「厳格な親」「言い聞かせられる子ども」「ピリピリした空気」……。情景はさまざまでも、そこには共通する“厳しさ”があるように思います。なぜ「しつけ」というと、ハードなイメージがあるのでしょうか? それは、私たち親が、「しつけの厳しさ」を大きく湾曲して捉えているからです。

最近のオーストラリアの研究によれば、多くの親が、
・体罰は、他のしつけ以上によく効く
・しつけの中で体罰を用いるのなら、子どもに害はない
・体罰を用いずに子どもをしつけるのは、理想論であり現実的ではない
と信じており、「体罰もしつけの一環」と捉えているとを指摘しています。ここでいう「体罰」とは、暴力だけではありません。罵声を浴びせる、おしりを叩く、暗い所に閉じ込めるなど、子どもに対し強い圧力をかけることも含みます。

「厳しいしつけ」でよくある2つのNGパターン

本来、「しつけ」とは、厳しさを伴うものなのでしょうか? それはイエスです。では、怒鳴る、叩く、罰を与えるなどの強い力も必要なのでしょうか? それはノーです。

家庭で、しつけを厳格にしようとすると、その厳しさの矛先を間違えてしまうことがよくあります。ここで、よくあるNGパターンを2つ挙げてみましょう。

NG1: 家庭のルールを厳格化すればよい
1つめの間違いは、「しつけを厳しくしたいのなら、家庭のルールをさらに厳格にすればよい」と捉えてしまうことです。そして、「○○はダメ!」「○○は抜き!」「○○は10分以内」のように、子どもの生活のあらゆる場面を細かく厳しく取り締まっていきます。しかし、家でのルールが手厳しくなればなるほど、子どもの自由度は奪われていきます。やがて、それに対するフラストレーションがたまり、結果として、上手く回らず、失敗に終わります。

NG2: 子どもに強い圧力をかければよい
2つめの間違いは、「しつけを厳しくしたいのなら、子どもをもっとビシッと叱る必要がある」と捉えてしまうことです。先述した罰やお仕置きのような強い力で、子どもが言うことを聞くように仕向けていきます。これは、その場では効果がありますが、持続性はありません。

厳しいしつけとは、子どもをルールで縛ることでも、力で威圧することでもありません。では、しつけに求められる「厳しさ」とは、何を指すのでしょうか?

「厳しいしつけ」の本当の意味とは?

それは、親が自らに課す厳しさのことです。親が子どもに何かを教えたいとき、常にブレ のない姿勢で、一貫性のある対応ができるか? このような「自分の心を強く持ち続ける厳し さ」が求められるのです。

たとえば、こんなことはありませんか?

・昨日は「いいよ」と言ったことに対し、今日は「ダメ」と言った
・自分の機嫌が悪いとき、忙しいときは、見て見ぬふりをしてしまう
・泣かれたら余計に面倒なことになると思い、見逃してしまった
・同じことをやっていても、家では怒鳴るのに、外では大目に見てしまう

これらは、一貫性のないしつけ方の典型例です。

「しつけを厳しく」というと、ついその矛先を子どもに向けてしまいがちですが、子どもを厳しく取り締まるのではなく、自分に対し厳しくなること、これが「しつけの厳しさ」なのです。親がどんなときでも一貫性をキープするには、相当の自制心が必要で、自分への厳しさがないと務まりません。「厳しくしつけよう」「仕切り直しだ」と決意したとき、その指先を自分に向けることがポイントです。

「言うことを聞かない」という悩みに共通する原因

カウンセリングや講座などを通じて感じるのは、子どもが言うことを聞かないときは、親が子どもに示しているルールがあいまいになっていることが多いということです。子どもたちは、「言うことを聞かない」のではなく、「言うことを聞けていない」という状態です。なぜなら、親が子どもに伝えていることがあいまいだったり、コロコロと変わったりすることで、子どもは何を聞くべきか戸惑ってしまうからです。そして、多くのケースで、自分に都合の良い方を「マイルール」として飲み込んでいってしまいます。

親がどんなに気分がよくても、どんなに気分が悪くても、「ダメなものはダメ」「OKなものはOK」としてあげないと、子どもが困り、結果として、親も困ってしまうことになります。一貫性を保ち続ける自分への厳しさこそ、「しつけ」を成功させる大事な秘けつなのです。

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