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スタッフからの現地便り

雨の初秋、大山を歩く

  • 更新日:2011年03月31日
  • カテゴリ:自然観察
雨の初秋、大山を歩く

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■ため池百選にも選定されている大成池
名水の地として知られる大山の麓に位置するロイヤルシティ大山リゾートには、澄んだ水を湛える大成池や、道沿いを豊かな水が音を立てて流れている所があります。そのためか、しっとりと落ち着いた印象を受けます。

 今回訪れたのは10月初旬。残念なことにシトシトと雨が降る中での散策でしたが、林のあちらこちらで秋の始まりを感じることができました。

 雨降りの中の散策は下を向きがちになり、視野が狭くなってしまいますが、それが功を奏してか、FV街区でまずみつけたのは、雨水を吸って生き生きとしたコケの上にころんと落ちたように乗っていたツルアリドオシの赤い実です。
よく見ると突起物が2ヶ所にあります。花が2つくっついて咲くのがこの花の特徴。花は2つですが元が1つなので、実には2つの花のあとが残ります。近くでは、ツルリンドウが淡い紫色の花を咲かせています。支えになる物がないので、ツルアリドオシと同じようにコケの上を這うことになってしまったようです。
コケの間を注意深く見ながら歩いていると、白い斑が入ったつややかな葉がありました。ミヤマウズラの葉です。葉の模様が鶉の模様に似ていることから名前がついたものです。他にも木や草の小さな芽が生えていて、どうやら側溝沿いに広がるコケは、植物のタネたちにとって快適な環境のようです。
   
■左:ツルアリドオシ(蔓蟻通し)果実 アカネ科ツルアリドオシ属
北海道から九州の山地林内に生育する常緑多年草。ツゲに似た葉をつけ、地を這う。6~7月、枝先に2個ずつ白い花をつける。2個の花の子房は合着しているので、赤く熟した果実には2つの花のあとがある。同じアカネ科で常緑低木のアリドオシ(蟻も突き通すほど鋭い刺がある)に似て、地面を這う姿からついた名。
■中:ツルリンドウ(蔓竜胆、蔓龍胆) リンドウ科ツルリンドウ属
北海道から九州の山地の林縁などに生育するつる性常緑多年草。8~9月に釣鐘状の淡い紫色の花をつける。果実は熟すと赤かく色づき豆電球のように茎に下がる。つるは紫色を帯びる。リンドウの仲間でつる性なのでついた名。リンドウは漢名のリュウタンが転じた。
■右:ミヤマウズラ(深山鶉) ラン科シュスラン属
北海道中部から九州の山地林内に生育する常緑多年草。8~9月、淡い紅色の花を15cmほどの花茎につける。葉には淡黄色の斑が入る。この斑が鶉の羽の模様に似ていることからついた名。深山とつくが低地や丘陵地に見られる
 顔を上げると、雨に打たれて今にも倒れそうな細い枝に濃い紫色の花がぽつぽつとついているのが目に入りました。花の色から名前に黒花とつくクロバナヒキオコシです。地味な花ですが、シソ科の植物の特徴的な形をしています。
同じように地味な花ながら高原の秋の花としてよく知られているワレモコウも花をつけています。こちらの花は変わった形をしていて、バラ科の植物とは思えない姿です。近くにあるオトコエシは泡状の白い花から淡い黄緑色の翼をもつタネへと変わっていました。
  
■左:クロバナヒキオコシ(黒花引起こし) シソ科ヤマハッカ属
北海道と本州日本海側の山地に生育する多年草。草丈は50~150cm。8~9月に暗紫色の小さな花をまばらにつける。この花の色から黒花とついた。ヒキオコシは、弘法大師が倒れていた人に葉の絞り汁を飲ませたら元気になったという伝説のある同じ属の植物。
■中:ワレモコウ(吾木香、吾亦紅、割木瓜) バラ科ワレモコウ属
北海道から九州の日当たりの良い山野に生育する多年草。8~9月に花弁のない小さな暗赤色の花を楕円球状につける。名前の由来は、キク科のモッコウ(木香:根に芳香がある)から、神社の御簾などに入っていた紋(木瓜)が割れた形に蕾が似ている事から、吾も紅なりと言ったから、などがある。
■右:オトコエシ(男郎花)の花のあと オミナエシ科オミナエシ属
本州から九州の山野に生育する多年草。8~10月白い小さな花を多数まとめてつける。タネにはうちわ状の薄い翼がつく。黄色い花のオミナエシに似ているが、全体的にがっしりしていて強そうに見えることからついた名。オミナエシよりやや暗い場所に生える。
 探し物をしながら歩いていると、F・G街区の側溝沿いでその姿をみつけることができました。湿っ所が好きでこの時期に咲くツリフネソウです。この花は、植物の不思議な仕組みを教えてくれます。花の後方のくるっと丸まった距(キョ)に蜜があり、これを求めにきたマルハナバチが潜り込んだ時に体に花粉をつけ、また他の花に潜り込むことにより受粉の助けをします。花の大きさはオーダーメイドしたかのようにピッタリのサイズなのだそうです。
また、仲間のホウセンカやインパチエンスと同様に、タネの入ったサヤは熟すとはじけ、遠くにタネを飛ばします。どちらも移動することができない植物が子孫を広げるための巧みな仕組みです。
 
■ツリフネソウ(釣舟草) ツリフネソウ科ツリフネソウ属
北海道から九州の山野の湿地に生育する1年草。8~10月に紅紫色の花をつける。花は細い柄につり下がり、この姿が花器の釣舟に似ている事から名前がついた。ホウセンカやインパチエンスの仲間で、タネが熟すとはじけ飛ぶ。花の後方(距)は細くなりくるりと巻き蜜をためる。
 雨が小降りになったので上の方を見てみると、コブシの実が薄ピンクに染まっていました。この拳のような実が割れて、赤いタネがぶら下るのはもう少し先のようですが、ミツバアケビは熟して果肉が見えて食べごろ。イヌザンショウも実が割れ、つやのある黒いタネがたくさんついています。サンショウの仲間ですが、こちらは葉や実の香りが弱くサンショウのように料理には使えません。
対照的な白い実をつけているのはヌルデです。この白いのは実の色ではなく、実の表面にできるリンゴ酸カルシウムの結晶です。なめると塩辛く、昔は調味料にしたり山歩きの疲労回復のために舐めたりしたそうですが、ウルシの仲間なので人によってはかぶれることもあるようです。ウルシに弱い方はお気をつけください。
 
■左:コブシ(辛夷)の果実 モクレン科モクレン属
北海道から九州の山野に生育する落葉高木。3~5月、葉の展開前に白い6枚の花弁の花をつける。花には芳香がある。花の下に葉が1枚つく。果実の形が握りこぶしに似ていることから名前がついた。果実が熟すと裂開して赤い種子がぶら下る。開花は農作業の目安にされる。よく似るタムシバは開花時、花の下に葉はなく、葉が細長い。
■右:ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草) アケビ科アケビ属
北海道から九州の山野に生育するつる性落葉樹。4~5月、濃紫色の花をつける。葉は3枚が1セット。果実は3個ずつつくことが多く、9~10月に紫色に熟し縦に割れる。アケビの仲間で一番大きい。種子を包むゼリー状の果肉や果皮、若芽は食べられる。蔓は細工の材料。名の由来は果実の色から『朱実(明美)』、熟すと果実が開くので『開け実』などの説がある。
  
■左:イヌザンショウ(犬山椒) ミカン科サンショウ属
本州から九州の日当たりの良い低山などに生育しり落葉低木。雄雌異株。6~11対の小葉が集まってつく。7~8月に緑黄色の小さな花をまとめてつける。果実は9~10月に赤く熟し、裂開すると光沢のある黒い種子が顔を出す。サンショウに似るが刺が互性してつき(サンショウは対性)、葉や実に香りが少ないので、『イヌ』がついた。『イヌ』は役に立たない代名詞。
■中:ヌルデ(白膠木)の果実 ウルシ科ウルシ属 別名フシノキ
日本全土の山野に生育する雄雌異株の落葉小高木。8~9月に小さな白い花を円錐状につける。果実は熟すと黄赤色になるが、塩味の白い物質を出すので、遠くからは白く見える。ヒタキやイカルなど野鳥の好物。ウルシによく似るが葉軸に翼があるので容易に区別できる。新芽はタラノキに似るが枝に刺はない。
■右:サイヨウシャジン(細葉沙参) キキョウ科ツリガネニンジン属
本州(中国地方)から沖縄の山野に生育する多年草。草丈40~100cm。8~11月に淡紫色で壺型の花を下向きにつける。よく似たツリガネニンジンとは、花の先がつぼまる。雌しべが花より長く突き出るなどの点で区別できる。サイヨウは葉が細かいことから(葉の形は変異が多いので広い物もある)、沙参はツリガネニンジンの生薬名。
 今回は雨のため大成池にきれいに映る逆さ伯耆富士を見ることはできませんでしたが、池の周りを歩いてみました。池の中洲のように生えたヤナギを見ながら林と池の間の遊歩道に進むと、ツリガネニンジンによく似たサイヨウシャジンがひっそりと立っていました。この花も秋の植物。今回天気には恵まれませんでしたが、秋の訪れを告げる植物にたくさん会うことができました。天気が良ければもっと多くの秋を探すことができるでしょう。次回は傘なしで松風の音を楽しみながらゆっくりと歩きたいと思います。
※上記写真は平成22年10月に撮影





 

担当スタッフ紹介

ガイド写真

自然観察指導員1級造園施工管理技士
グリーンアドバイザー

関口 亮子

群馬県前橋市出身、恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業、現在「むろたに園芸研究所」勤務、設計、草花植栽、園芸講座講師を担当、特に自然風の庭造りを得意とする。

 

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