他のご家庭のお子さんの行動が気になったとき、あなたならどうしますか? よくネット上では、「注意する派」と「放っておく派」で意見が割れているようですが、それも、よその子への接し方に唯⼀の正解が見出しにくいからでしょう。ここでは、「叱る・叱らない」の判断基準やその方法についてまとめてみました。
これまでに、他のご家庭の育児を見て、
「我が家ではありえない!」
「えっ!? ここで叱らないの?」
逆に、
「ここまで細かく叱る?」
「あそこまで言わなくてもいいのに…」
と驚いた経験、少なからずあるのではないでしょうか。
筆者も、以前フランスに住んでいたとき、パリの公園で驚きの出来事に遭遇したことがあります。その日、我が子とその公園の砂場で遊んでいたところ、1人の男の子がやってきました。そして砂場に入るやいなや、子どもたちが作ったお城やトンネルを次々に足で踏みつぶしていったのです。その目に余る行動に腹を立て、まずは男の子に直接注意しました。しかし聞く様子はありません。そこで、その子の親のところまで行き、「お宅のお子さんが…」と抗議に行ったのです。すると、その子の父親はこう言いました。「子どもなんてそんなもんだよ」。我が子の行動に対し、全く悪びれた様子を⾒せなかったのです。親によって物事の捉え方は全く違うものだということを痛感した一件でした。
もし私たちの物事に対する見方や考え方が一致していれば、このようなことは起こらなかったでしょう。でも実際には、同じ状況でもどう捉えるかは人それぞれです。この違いが、よその子の行動への対処を難しくさせているのです。
よその子のある行動を見て、
1. 叱るべきだと判断し、叱る人もいます
2. 叱るほどのことではないと判断し、何もしない人もいます
3. 叱りたいと思いつつも、叱らない人もいます
そして、みんな自分の判断が正しいと信じています。
でも、3のケースだけは、わだかまりが残ります。なぜなら⾃分の思い(叱りたい)と⾏動(叱らない)に⽭盾があるからです。これが繰り返されれば、その⼈は⼤きなストレスを抱えることになります。
「叱りたいけれど叱らない」という人は、同じことを自分の子どもがしたら叱るのに、よその子だと躊躇してしまいます。なぜかというと、
● 「よその子を注意することが、その子の家庭への介入になるのでは」という懸念
● 「何か言っても、何も変わらないのではないか」というあきらめ
などがあるからです。「よけいなお世話?」「私が⾔わなくても…」という気持ちが前に出てきて、スッキリしないままその場をやり過ごしてしまうのですね。
でも、子どもたちは年を追うごとに親と離れる時間が多くなっていきます。自分がその子と一番近い状況にいるのならば、たとえよその子であっても、少しおせっかいになってあげた方がいいのではと思います。
何も怒鳴る必要はありません。そのときに求められている行動を教えてあげればいいのです。
「叱りたいけれど叱れない」という方のために、思いを行動に起こすコツをご紹介します。「公の場」「自宅」という2つの状況で、その対処法を見ていきましょう。
「叱りたいけれど叱らない」という方にとって、公共の場でのトラブルはストレスになりがちです。顔は笑顔をキープしつつも、内心はイライラという方もいるのではないでしょうか。もし、よその子の行動を注意すべきか迷ったら、まずその状況を一般論で捉えてみてください。10人の親がいたら何人が「注意した方がいいよ!」と背中を押してくれるかを考えてみるのです。10人中6、7人の親が賛同してくれると思えれば、「よし、声をかけてみるか」と腰も上がりやすくなります。
ただ、ビシッと叱る前に、その子がなぜその行動を取ったのかを一考してほしいとも思います。なぜ横入りするのか、なぜ砂をかけるのか、なぜ大声を出すのか……? 子どもは「もっとかまってほしい」「自分を見てほしい」という欲求があると、注意を引こうと目立つ行動を取るようになります。相手の目に留まりたいからです。それを「砂場荒らしの常習犯」と捉えてしまうと、その子を拒絶する言葉ばかりが頭に浮かんでしまいます。第一声は、「ほらこっちへ来てごらん」「一緒にやる?」のような、その子に一歩近づいた声かけをしてあげられると理想的です。
もう1つ、注意する場面が増えるのは、よその子が家に遊びに来たときでしょう。その子の親が一緒にいないので、代わりに直接声をかける機会が増えるからです。
家庭には、公の場とは違う独特のルールがありますよね。
● 冷蔵庫を自由に開けていいのか
● 寝室のドアを開けていいのか
● 立ったまま、おやつを食べていいのか
● ベッドやソファの上で飛び跳ねていいのか
ご家庭によって違います。もしかしたらその子の家では、友達が遊びに来たとき、冷蔵庫を開けてもOKかもしれません。もしそうだとしたら、その子は自分が友達の家に行った時もOK と思うのは当然です。だから、「うちに来たときは冷蔵庫は開けないでね」とその家庭のルールとして伝えてあげるのが適切です。
もし「冷蔵庫は開けちゃダメ」としてしまうと、その子は自分が親から教わっていることと矛盾するため、混乱します。だからと言って、何も言わずに見逃してしまうと、その子が帰った後、お子さん自身に疑問が残ります。「ボクが友達の家に行ったときはどうすればいいの?」と。
なので、ご自宅によそのお子さんが来た時には、「うちでは○○してね(しないでね)」と家庭のルールとして伝えてあげるのがおすすめです。そうすれば、相手の育児方針に踏み入ることもないですし、我が子にも親の一貫性を示すことができます。頻繁に行き来をするような間柄であれば、「何か気づいたらうちの子のこと、ビシッと叱ってね」と自らアプローチしたり、親同士で、「悪いことはお互い叱っていこうね」と取り決めておくのも手だと思います。