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コラム
<相続>
不動産の「名義変更」。手続きの流れや
必要書類など、相続や離婚などケース別に解説

不動産の所有者が変わった場合に必要になってくるのが、不動産の登記上の所有者を変更する名義変更手続きです。そのほかにも不動産が動けば税金も発生します。不動産の所有者が変わることで、どのような手続きが必要になるのか、司法書士で税理士の渋田貴正さんがケースごとに解説します。

POINT 01 不動産の名義変更とは?

不動産の名義変更とは、正式には「所有権移転登記」と言います。不動産の登記記録に所有者(または共有者)として登記された人から、不動産を取得した人の名義に所有権を移転させる手続きを、一般的には不動産の名義変更と呼んでいます。以下でも、所有権移転登記のことを名義変更と呼びます。

不動産の名義変更をするべき理由

不動産を所有している場合、登記をしないと第三者にその権利を主張できないということが民法で定められています。これを、登記の「対抗力」と言います。

もし、不動産を売買することになったときに、いくら売主が土地の所有者だと言っても、登記が別の人になっていれば、買主としてはその別の人が売主だと考えざるを得ません。

土地や建物などの不動産のように、取引の金額が大きくなる資産は、持ち主を登記という制度で公示することで、取引の安全を図っているのです。

不動産の名義変更が必要なケース

具体的に不動産の名義変更が必要になるのは、以下のような場面です。

  • ・不動産を売買するとき
  • ・不動産を相続したとき
  • ・不動産の贈与を受けたとき
  • ・離婚により財産分与を受けたとき

POINT 02 遺産相続における不動産の名義変更

ここでは遺産相続が起こった際の不動産の名義変更について、流れなどを説明します。

遺産相続における不動産の名義変更手続きの流れ

  • ①必要書類の収集
  • ②登記申請書の作成
  • ③不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請
  • ④登記完了後、登記識別情報などの書類を法務局から受領

遺産相続における不動産の名義変更の必要書類(親が亡くなり、子が相続人の場合)

  • ①亡くなった方の出生から死亡までの戸籍
  • ②各相続人の現在の戸籍
  • ③不動産を相続する相続人の住民票
  • ④亡くなった方の住民票除票または戸籍の附票(登記上の住所とのつながりが分かるもの)
  • ⑤法定相続以外の割合で名義変更する場合は、遺産分割協議書
  • ⑥遺産分割などを行っている場合は、各相続人の印鑑証明書
  • ⑦対象となる不動産の固定資産評価証明書
    ※相続のパターンによっては、①、②の戸籍関係で集めるべき戸籍が異なります。

必要書類の中でも、最も準備が大変なのが戸籍関係です。戸籍がある各自治体に請求する必要があるほか、相続のパターンによっては、集めるべき戸籍も変わってきます。

例えば、子どもがいない兄弟が亡くなった場合は、上記の親子間相続で挙げた例のほかに、両親(年齢によっては祖父母)が亡くなっていることを証明する戸籍や、代襲相続が発生していれば代襲される相続人の出生からの戸籍が必要になるなど、集める戸籍も多くなります。どの範囲の戸籍を集めるのか分からなければ、登記の専門家である司法書士に依頼するなどしたほうがスムーズに進みます。

なお、戸籍関係については、戸籍そのものを提出するほか、「法定相続情報一覧図」という書類を添付することでも対応できます。法定相続情報一覧図とは、相続に関するすべての戸籍をそろえて、事前に法務局に確認をしてもらうことで、その後の相続関係の手続きで戸籍を提出する手間を省ける制度です。法定相続情報一覧図の作成は相続人が行う必要がありますが、一度作成すれば、不動産の名義変更だけでなく、銀行の口座解約手続きなど幅広く使えます。いったん戸籍の確認が法務局で完了すれば、無料で必要な枚数を発行してもらえる便利な制度です。

遺産相続における不動産の名義変更手続きの期限

相続登記の手続きに期限は設けられていませんでしたが、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。不動産の所有権を相続した方は、「相続の開始および不動産の所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。相当な理由がないのに、義務に違反した場合10万円以下の過料が科されることがあります。また、相続が発生したら、口座解約などの手続きと同じように不動産の名義変更も早めに済ませたほうがよいでしょう。

遺産相続における不動産の名義変更でかかる費用

相続による名義変更の登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。ただし、相続登記を行わないまま新たな相続が発生したケースのように、亡くなった人に名義変更する登記については令和7年3月31日まで免税となります。そのほかに、戸籍などを収集するための実費がかかります。たとえば、戸籍謄本は450円もしくは750円、戸籍抄本は450円、戸籍の附票は自治体によって異なり200~400円です。また、司法書士に登記を依頼すれば、その報酬もかかります。

遺産相続における不動産の名義変更でかかる税金

相続の場合、不動産の相続税評価額や、その他預貯金などの金額次第では相続税がかかる場合があります。特に不動産の評価は複雑なので、税理士に相談したほうがよいでしょう。

POINT 03 生前贈与における不動産の名義変更

自らが保有する不動産を親族その他の人に無償で譲り渡すのが贈与です。不動産の贈与をした場合も名義変更の登記が必要になります。

生前贈与における不動産の名義変更の手続きの流れ

  • ①贈与契約書の作成
  • ②登記申請書の作成
  • ③不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請
  • ④登記完了後、登記識別情報などの書類を法務局から受領

生前贈与における不動産の名義変更の必要書類

  • ①贈与契約書など贈与があったことを証する書類
  • ②贈与する人(登記名義人)の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
  • ③不動産の贈与を受けた人の住民票
  • ④対象となる不動産の登記識別情報または登記済証(いわゆる権利証)
  • ⑤対象となる不動産の固定資産評価証明書

生前贈与における不動産の名義変更手続きの期限

贈与による名義変更の登記について、期限が設けられているわけではありませんが、速やかに名義変更の登記を行うべきでしょう。登記上本来の名義人である贈与を受けた人に変更しておかないと、前述のような対抗要件(第三者に自分が所有者であることを主張できない)や、固定資産税の負担の問題などが発生します。

生前贈与における不動産の名義変更にかかる費用

贈与による名義変更の登記にかかる登録免許税は、固定資産評価証明書の評価額の2%です。

そのほかに、贈与による不動産の名義変更については、贈与契約書を作成するための印紙代(200円)や、司法書士に登記を依頼すれば、その報酬もかかります。

生前贈与における不動産の名義変更にかかる税金

不動産の贈与を受けた場合は、贈与を受けた人に対して贈与税がかかります。ただし、贈与を受けた不動産の評価額(家屋であれば固定資産税評価額、土地であれば路線価をベースに計算した評価額)が110万円以下(贈与を受けた年に不動産以外の贈与を受けている場合は、その贈与を受けたものの価額も合算した額が110万円以下)であれば、贈与税はかかりません。この110万円のことを基礎控除と言います。

このほか、婚姻期間が20年を過ぎた夫妻間で、住んでいた家やその土地を贈与した場合は、上記の110万円の基礎控除のほかに、最高2,000万円の配偶者控除を受けることができます。配偶者控除は住んでいた不動産が対象なので、別荘や投資用不動産などの贈与は対象外となります。

贈与税には、その年で納税を終わらせる「暦年課税」と、贈与をした人について相続が発生するまで一部の課税を繰り延べる「相続時精算課税」の2種類があります。

ただし相続時精算課税を選択するには、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母から受けた贈与であるなどの一定の条件があります。暦年課税と相続時精算課税のどちらのパターンを選択するかで、贈与税の納税額が大きく変わる場合があります。どちらのパターンを選択すべきか判断できない場合は、税理士に相談するほうがよいでしょう。

また、不動産取得税も課税されます。これは各自治体の計算のもと課税されますので、贈与税のような申告は必要ありません。

なお、贈与をした側については特に税金は課税されません。

POINT 04 離婚における不動産の名義変更

離婚の場合、財産分与という形で不動産の名義変更が行われることがあります。

離婚における不動産の名義変更の手続きの流れ

  • ①離婚届を提出
  • ②必要書類の収集
  • ③登記申請書の作成
  • ④不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請
  • ⑤登記完了後、登記識別情報などの書類を法務局から受領

離婚における不動産の名義変更の必要書類

  • ①財産分与協議書など財産分与があったことを証する書類
  • ②財産分与する人(登記名義人)の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
  • ③財産分与を受けた人の住民票
  • ④対象となる不動産の登記識別情報または登記済証(いわゆる権利証)
  • ⑤対象となる不動産の固定資産評価証明書
  • ⑥離婚がわかる戸籍謄本などの書類

離婚における不動産の名義変更手続きの期限

財産分与による名義変更の登記について、期限が設けられているわけではありません。とはいえ、財産分与は離婚に伴って行うものですので、財産を清算するためにも、速やかに財産分与の登記をすべきでしょう。

離婚における不動産の名義変更にかかる費用

財産分与による名義変更の登記にかかる登録免許税は、固定資産評価証明書の評価額の2%です。そのほかに、財産分与による不動産の名義変更については、財産分与契約書を作成するための印紙代(不動産の価額に応じて200円~48万円)や、司法書士に登記を依頼すれば、その報酬もかかります。

離婚における不動産の名義変更にかかる税金

財産分与があった場合、財産分与をした人から財産分与を受けた人に不動産の売買があったと同様に扱われます。そのため、財産分与で不動産を渡すのに税金もかかってきます。財産分与には不動産だけでなくほかの財産も含めて総合的に分配が行われますが、不動産を財産分与することでほかの財産の分配の義務が免れるわけで、その意味では財産分与は売買と同じようにお金を受け取ったと扱われるのです。

財産分与した不動産の時価と、不動産を購入したときの費用の差額(譲渡益)について、所得税が課税されます。自宅の売買については、3,000万円までの譲渡益には課税されない3,000万円の特別控除があり、財産分与にも適用されます。親族間には不適用の制度ですが、正式に離婚が成立した後であれば、お互い戸籍上無関係なのでこの特別控除も適用されます。

また、不動産を取得した人(財産分与を受けた人)には不動産取得税が課税されます。ただし、財産分与のうち、清算的財産分与に該当する部分については、婚姻中に共同で形成した財産の持ち分を実態に合った状態に登記する、つまり財産の移転はないと扱われますので、不動産取得税はかかりません。贈与税についても同じ理屈で課税の有無が判断されます。多くの財産分与は清算的財産分与を中心に行われますので、基本的には不動産取得税や贈与税は課税されないケースが多いです。

財産分与の基本や注意点についてはぜひ「財産分与ガイドブック―手続きや流れ、注意点まで―」も参考にしてください。

財産分与ガイドブック ダウンロードはこちら

POINT 05 不動産売買における不動産の名義変更

相続と並んで件数が多いのが、売買による名義変更の登記です。売買は、不動産会社に仲介してもらうほか、知り合い同士で直接売買を行うような方法があります。前者の場合は、登記を含めて不動産会社から案内がありますので、以下の説明は不動産会社に依頼せずに売買するようなケースで参考にしてください。

不動産売買における不動産の名義変更手続きの流れ

不動産売買における手続きは次のような流れです。

  • ①売買契約書の作成
  • ②登記申請書の作成
  • ③不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請
  • ④登記完了後、登記識別情報などの書類を法務局から受領

不動産売買における不動産の名義変更の必要書類

不動産売買における不動産の名義変更の際に、必要となる書類は以下の通りです。

  • ①売買契約書など売買があったことを証する書類
  • ②売却した人(登記名義人)の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
  • ③不動産を購入した人の住民票
  • ④対象となる不動産の登記識別情報または登記済証(いわゆる権利証)
  • ⑤対象となる不動産の固定資産評価証明書

不動産売買における不動産の名義変更手続きの期限

基本的に、売買の場合、不動産の名義変更の手続きは必須です。売買の登記について、手続きの期限はありませんが、通常は名義変更の登記申請と同時に売買代金を渡すという契約が結ばれます。

不動産売買における不動産の名義変更にかかる費用

売買による名義変更の登記にかかる登録免許税は、固定資産評価証明書の評価額の2%です。ただし、土地については、令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合は1.5%に軽減されます。また、家屋については、住宅用の場合の軽減税率の特例があります。

そのほかに、売買による不動産の名義変更については、売買契約書を作成するための印紙代や、不動産会社への仲介手数料、測量費などのほか、司法書士に登記を依頼すれば、その報酬もかかります。

不動産売買における不動産の名義変更にかかる税金

不動産を売買し売却益が生じれば、売った人に対して、所得税が課税されます。基本的には、売値と買値(減価償却後)の差額から、仲介手数料などの諸費用を引いた額に対して課税されます。ただし、不動産の売買については、先ほど財産分与のところで書いた3,000万円の特別控除など、所得税計算上のさまざまな特例があります。税理士に相談するなどして、最も有利な形で所得税を計算できるようにするのがよいでしょう。

また、不動産を購入した人については、不動産取得税が課税されることは、贈与などと同様です。

POINT 06 手続きは自分でするか、専門家へ依頼するか2種類

不動産の名義変更に伴う各種手続きは、自分でもできますし、専門家に依頼することもできます。

自分で手続きする場合には、ある程度時間をとって書類を集めたり、手続きの方法を役所に確認したりすることになるでしょう。確実に、間違いなく手続きを行いたいという場合や、素早く手続きを終わらせたいという場合には、費用がかかっても、専門家に依頼したほうがよいでしょう。登記であれば司法書士ですし、税金であれば税理士です。

まとめ

不動産の名義変更は、さまざまな書類が必要ですし、相手がいれば相手の協力も不可欠です。手続きについて、少しでも不明点があれば、司法書士や税理士といった専門家に相談することで、計画的かつ正確に手続きを進められるでしょう。大和ハウスグループでは専門家とともに、あなたをサポートいたします。

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司法書士・税理士 渋田貴正さん
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント(R)。起業コンサルV-Spirits(https://v-spirits.com/staff)グループ所属。

※掲載の情報は2024年4月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。

写真:Getty Images

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