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コラム
<投資/資産形成>
収益不動産の法人化経営について

賃貸アパート・マンション経営者が、毎年頭を悩ます代表格とは税務申告ではないでしょうか?

個人で所有している土地や建物の家賃収入は、必要経費を除いた不動産所得から所得税を計算し、申告納税しなければなりません。この不動産所得による所得税の納税額は、毎年のことであるとはいえ、「税金ってずいぶんかかるんだなぁ」と思われている方も多いと思います。実はこの不動産所得は、他の所得(事業所得、一時所得、退職所得など)と比べて、税の負担が重い所得となっています。

今回は「収益不動産の法人化経営」について、不動産投資セミナーなどでご活躍中の桃石株式会社 代表取締役の吉田隆一さんが解説します。

POINT 01 悩みの多い不動産所得

不動産所得が、他の所得(事業所得、一時所得、退職所得など)と比べて税の負担が重い理由は、不動産所得を計算する際に計上できる必要経費の範囲が狭いことに起因します。

不動産所得は、次のように計算されます。

不動産所得の金額=
総収入金額-必要経費-(青色申告特別控除)

また、必要経費は、所得に係る経費と収入が直接関連していなければなりません(所得税法26条、36条、37条)。

例えば、賃貸マンション・アパートの修繕費は、入居率を上げるために行うものとみなされるので、必要経費として認められます。しかし、状況確認のために所有物件に出向いた交通費(自動車のガソリン代、電車賃、タクシー代等)は、全てを必要経費に計上できるわけではありません。交際費、水道光熱費、通信費等も同様です。

では、具体的にどのようなものが必要経費として認められるのでしょうか?必要経費に計上できる代表的なものには、修繕費、そして固定資産税、減価償却費、損害保険料、地代などが挙げられます。つまり、それら以外のものは、必要経費としてほとんど認められないのです。

上記の計算式から、必要経費が少なくなれば、所得が多くなり、納税額も高くなるのです。

法人税の最高税率は23.20%(普通法人)に比べ、個人の所得税は累進課税であり最高税率が45%にもなりますので法人税に比べ所得税は負担が大きいものです。また、給与所得は概算経費ともいわれる給与所得控除を差引いて課税所得の計算を行いますので、不動産所得は特に税負担が重く感じられていると思います。必要経費を増やすための何かいい方法がないかと考えるのは当然のことだと思います。

以降では、税務対策について説明していきます。

POINT 02 法人設立による税務対策1~法人による家賃保証~

法人が家賃保証をしている場合の不動産管理手数料は、不動産所得の必要経費として計上することができます。言い換えれば、所有している賃貸物件に対して個人で設立した法人が家賃保証 (一括借上げ)を行うことは、税務対策の効果があるということです。ただし、誤解してはいけない点があります。

家賃保証(一括借上げ)というサービスは、建設会社等においても提供していますが、税務対策に効果のあるものはそれとは異なり、オーナーの方が個人で設立した法人が家賃保証するものに効果があります。個人で所有している建物に対して、法人が家賃保証することに違和感を持たれる方もいるかもしれません。しかし、個人から法人に不動産管理手数料を支払うことは、税務上否認されていないため、税務対策として有効と言えるのです。

では、どの程度の金額まで不動産管理手数料の支払いが可能なのでしょうか。個人から法人へあまりにも過大な金額の支払経費を計上することは、当然税務上否認されます。賃料のおおよそ20%くらいまでが上限と考えておくとよいでしょう。

POINT 03 法人設立による税務対策2~法人所有による収益不動産経営~

次に法人を設立した場合について検証してみましょう。法人は個人から不動産管理手数料を受け取るため益金が発生します。当然その益金は法人税の課税対象となるので、法人税対策も同時に検討しなければなりません。そこで、所得税と法人税のバランスを踏まえながら、不動産所得を調整することが論点になります。この論点を考える上では、法人を設立することが重要になりますので、解説していきます。

法人を設立した場合の税務対策とは、「個人所有建物を法人化」することです。これは、これまで解説してきた家賃保証よりもさらに大きな税務対策の効果を生み出します。

個人で所有している建物から家賃収入が発生すると、その収益は所得税(不動産所得)として課税されます。また、家賃収入が一定以上になると、所得税の税率は超過累進税率を採用しているために課税額はどんどん大きくなります。(所得税と住民税を合わせた最高税率は55%)

しかし、法人税はそのようなことはありません。法人税の実効税率は約29.74%です。 そのため「個人所有建物を法人化」することにより、家賃収入は法人に入るため、法人税として処理することになるのです。

他にも個人所有建物を法人化することには、多くのメリットがあります。例えば、必要経費枠が所得税と比べ広がります。また、所得税では認められなかった、状況確認のために所有物件へ出向いた交通費(自動車のガソリン代、電車賃、タクシー代等)も全て必要経費に計上することができるようになるのです。

つまり、法人税で処理することができれば、税率を抑えることが可能になり必要経費枠も大きくなるのです。

POINT 04 税務対策は「所得税」「法人税」「相続税」の三位一体で検討しよう

このように大きなメリットのある「個人所有建物の法人化」ですが、全ての物件にメリットがある訳ではないことが難しいところでもあります。ポイントは次の2点です。

  • 1. 建物の減価償却がどれくらい残っているのか
  • 2. オーナー様の年齢と健康状態について

この2点を踏まえて検証することが重要となります。

まず、建物の減価償却が多く残っている建築年数が浅い建物の所有権移転には、高額なコストが個人と法人に発生します。また、法人は新設のために現預金がないことを考えると、個人から譲渡された物件の支払いは家賃収入から分割で支払うことになり、個人は法人に対して債権を有することになります。さらに、法人に対する不動産取得税、登録免許税などのコストも築浅だと高額になるため、法人化のメリットは少なくなります。

それでは、年間の家賃収入がどれくらいになると法人化のメリットは大きくなるのでしょうか。これはズバリ3,000万円です。また、建物の減価償却が進んでいる場合には、1,500万円ほどでも法人化するメリットが出てくることもあります。ただし、他の所得(事業所得や農業所得等)と損益通算する場合には、それらの所得も考慮しなければなりません。

ここまで所得税と法人税に的を絞って解説してきましたが、法人化には相続税も踏まえて検討する必要があります。なぜなら、建物が築浅の場合、建物の簿価(会計上の評価額)は高くなっているため、もしオーナー様に相続が発生した場合に相続税額が大きくなるからです。そのため、オーナー様の年齢と健康状態にも留意する必要がある訳です。

また、個人で所有していた場合は、建物が貸付用建物になるため、相続税評価額を低く抑えることもできます。

貸付用建物の相続税評価額の計算は、次の通りです。

固定資産税評価額×(1-借地権割合×賃貸割合)

つまり、オーナーの年齢が若く健康状態も良好であれば、法人化所有の方法も有効と考えられますが、かなりのご高齢の場合には、所得税、法人税、相続税の三つの税のバランスをシミュレーションしておく必要があるのです。

賃貸アパート・マンションを複数棟所有している場合は、もっと複雑になります。例えば5棟の物件を所有していたとします。2棟は築浅のため家賃保証、3棟は法人で所有した場合、次の計算要素を踏まえた上でシミュレーションする必要があります。

  • ・不動産所得の計算(所得税)
  • ・法人からオーナー様個人や親族に支払われる給与所得(所得税)
  • ・法人税
  • ・相続が発生した時点における相続税額
  • ・社会保険料など

このように収益不動産の法人化経営シミュレーションというのは複雑な税務計算を要することになります。そのため、家賃収入が多くなり所得税の負担が重い方は、ぜひ専門家へのご相談をおすすめいたします。

教えてくれたのは
桃石株式会社(https://tokoku.jp/)代表取締役 吉田隆一さん

※掲載の情報は2022年2月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。

写真:Getty Images

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