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コラム No.134

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脱炭素社会実現へ建築物省エネ改正法が成立

公開日:2022/07/28

2022年6月13日に脱炭素社会実現のための建築物省エネ改正法が公布され、すべての新築物件に対して省エネ基準の適合義務を明文化し、木材利用の促進なども盛り込まれました。同時に、炭素をうたい文句にした悪質住宅リフォームにクギを刺す、異例のアナウンスが消費者行政サイドから出ています。

新築物件すべてが対象になる

建築物省エネ法(正式には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」)は2017年に施行されました。延床面積2000m2以上の大規模な非住宅建築物を新築する場合は省エネ基準の適合が建築確認の条件になり、2019年の法改正で2021年から基準の対象が300m2以上の非住宅建築物に拡大されました。
そして今回、住宅・非住宅を問わずすべての建築物が省エネ基準の対象になりました。2025年に脱炭素(カーボンニュートラル)を実現させるという国の目標を盛り込んだ法改正となり、名称は「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」と改められました。
建築物省エネ法は、2017年の施行から2021年、さらに今回の改正法が公布から3年以内の施行ですから、2025年まで矢継ぎ早に規制を強化した印象があります。背景には、建築分野だけでエネルギー消費全体の3分の1を占めることが挙げられます。建築分野での省エネを促進しなければ、政府目標の温室効果ガス削減をクリアできないと判断したからです。
すべての新築建築物を省エネ基準に適合させるには、省エネ性能の改善を実現させる住宅関連の機器や資材、部品などを供給するメーカーの協力が不可欠。それぞれの分野で最も優れた省エネ機器を製造する企業(トップランナー)を増やすため、改正法ではトップランナー制度を拡充するための後押しをします。
建設・不動産業界関連では、注文住宅を年間300戸以上供給する事業者、賃貸アパートを年間1000戸供給する事業者は、「住宅トップランナー」として省エネ基準の削減目標がすでに示されています。住関連機器メーカーに対しては、省エネ性能の向上や消費エネルギー削減に対応した「ZEH(net Zero Energy House)・ZEB(net Zero Energy Building)」水準へ誘導するなど、トップランナー制度の拡充が行われる見通しで、住宅トップランナー制度は、事業者の対象を広げていくことも予想されます。また販売・賃貸の住宅物件は、省エネ表示をするよう促進していくことも決まっています。

木材利用の促進をうたう

法改正のもうひとつの大きなポイントは、木材を利活用することが明記された点です。建築分野は木材需要の約4割を占めているといわれており、建築分野で木材を積極的に利用することで消費エネルギーを削減するだけでなく、地球温暖化を招く二酸化炭素を吸収することになるため、気候変動対策の観点から木材利活用を盛り込みました。

防火規制の合理化として、大規模建築物について大断面材を活用した建築全体の木造化、もしくは防火区画を活用した部分的な木造化を認めることとしました。また、低層部分は別棟扱いを認め木造化を可能にします。2級建築士でも行える簡易な構造計算で可能な3階建て木造建築物の拡大も定めています。木材活用に関しては現在、資材の高騰いわゆる「ウッドショック」が続いており、政策実現のためには木材価格の安定が求められるところではないでしょうか。

悪質リフォームに早期の警鐘ならす

今回の法改正で、国土交通省は2022年6月、消費者庁からの「考え方」を関係団体や事業者に事務連絡しました。消費者庁が出したのは、住宅リフォーム工事におけるトラブルの未然防止に関する「考え方」です。住宅リフォームに関しては、改修が不要と思われる住宅を訪問しては改修を強要したり、リフォームの必要な案件でも工事費用を不当に高額請求したりするなどの悪質なリフォーム販売が後を絶ちません。

図:訪問販売による相談件数の推移(PIOーNET 登録分)

国民生活センター「各種相談の件数や傾向」(2022年2月18日更新)より作成

国民生活センターのまとめによると、訪問販売によるリフォーム工事に対する相談件数は2021年に6,774件。「隣家で作業をしている業者が来訪し、屋根修理の契約をした。後日、壁の補修も必要だと言われ追加で契約したが、解約したい」などの苦情が寄せられています。点検商法は2021年に5,154件。「損害保険で雨どいの修理ができると業者の訪問を受けた。せっかくなのでドローンを使って屋根の撮影もしてはどうかと言われてお願いした。不安になったので断りたいが、業者と連絡が取れない」などの相談がありました。
特に2020年に国内で本格化した新型コロナウイルスの感染拡大で、自宅にいることが増えた高齢者が訪問販売トラブルに巻き込まれるケースが目立っているようです。
消費者庁は、消費者の省エネに対する関心の高まりに乗じて、こうした悪質商法が拡大することを未然に防ぐ狙いから、2025年度の施行とされる今回の省エネ改正法の施行に際して、住宅リフォーム業者に対しては不当販売しないようクギを刺し、消費者に対しては被害に遭わないよう早期の警鐘を鳴らしました。

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