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コラム No.25

CREコラム

生産性向上の鍵を握る「物流生産性革命」

公開日:2017/02/28

コラムNo.22で、国土交通省の進める「生産性革命プロジェクト」のいくつかを紹介しましたが、今回はその中の「物流生産性革命」をさらに詳しく取り上げます。
物流や倉庫は、これまで企業活動の中でも、多くの場合、コストセンター、必要最低限の設備としてとらえられてきました。販売するまでの在庫であり、エンドユーザーへ届けるまでの保管する場所という機能しか持っていなかったからです。
しかし、現在、サプライチェーンの変化、改革に伴い、物流がロジスティクスと呼ばれるようになり、企業のサプライチェーンの中でも重要な位置づけを占めるようになってきました。市場を見据えたうえでの、効率的な物資、設備、商品・サービスの配置、配送、サポートという機能を持つようになったわけです。

鍵となる「物流生産性革命」

今回、国土交通省が打ち出した「生産性革命プロジェクト」の中にも、「物流生産性革命」として、経済成長の重要なファクターとして位置付けています。
前号でもお伝えしたように、日本の労働者1人あたりの労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)は、OECD加盟35カ国中22位(従来基準)、主要先進7カ国で最も低い水準となっています。これからの成長を目指すには、この労働生産性を上げるしかありません。
こうした状況を打破し、生産性を向上させるために、ひとつの鍵を握っているのが物流です。どれだけ十分な生産計画を立て、効果的なビジネスモデルを構築しても、商品である「モノ」が正確に、効率的に流通しないことには、すべての計画が台無しになってしまいます。
また、少子高齢化の流れは、物流業界においても大きな問題となって表れています。
物流分野では、特に中高年層が多く、トラック事業では就業者の約4割が50歳以上と言われており、現在でも深刻な人手不足が、さらに深刻度を増す可能性があります。
そうなれば、生産性の向上以前に、現在の労働力の確保もままならなくなり、この問題をなんとか解決するためにも、飛躍的な生産性を向上させる必要があるわけです。

国土交通省が提唱する施策のいくつかを紹介します。
まず、現在のトラック主体の輸送から、鉄道や海運を活用した、トラックドライバーを必要としない手段の活用があげられます。この動きを「モーダルシフトの推進」と呼んでいますが、たとえば、トラックドライバーを確保しにくい年末年始やゴールデンウィークなどに、鉄道貨物を活用して臨時列車を運行したり、ドライバーを乗船させずにフェリーでトラックのみを輸送したり、鉄道や海運の効果的な活用を目指しています。
このモーダルシフトは、トラックドライバー不足対策、定時性・スピード性の確保に加えて、環境問題の課題解決にも役立ちます。交通渋滞による大気汚染、CO2排出や遅配、なども問題を鉄道や海運によって少しでも防ごうというわけです。

ITを活用した「賢い物流管理」

ITを活用した「賢い物流管理」として、「ETC2.0」と呼ばれる取り組みを行っています。これは、特車通行許可の簡素化したり、ETCの情報と連動して渋滞情報や効果的な車両運行のための情報支援サービスを行ったりするものです。
さらに、過積載車両による道路へのダメージを防ぐために、WIM(Weigh-in-motion:自動重量計測装置)と呼ばれる仕組みによって過積載の取締を強化して、過積載車両を削減(2020年度目途に半減)しようとしています。
ITによる物流生産性への貢献は、空車の回送や待ち時間の解消にもつながります。現在、空車回送や待ち時間の増加傾向が大きな問題となっており、積載率も41%に減少しているとされています。
これに対して、輸送拠点の効率的な設置、トラックの予約システムを構築することで、空車や待ち時間を解消し、本質的な生産性の向上を図ろうとしています。

再配達問題の解決へ向けて

続いて、大きな問題となっているのが、宅配便の再配達の問題です。国土交通省の調べでは、5年間で約13%(約4.4億個)増加しているようです。女性の社会進出や独身者の増加、多様なライフスタイルによって生まれてきたといえますが、トラックドライバー全体の約1割、年間約1.8億時間に相当するこの再配達の労働力問題は、社会的損失ともいえる状況です。
これに対して、消費者と宅配業者・通販業者とのコミュニケーションの強化、消費者の受取への積極的参加の推進、受取方法のさらなる多様化、受け取り施設の開設、利便性向上の取組、既存の枠組みを超えた関係者間の連携促進などの取組を、「物流総合効率化法」の改正などによって支援しています。

また、経済成長を伴う生産性の向上は、国内だけの問題ではありません。アジア諸国等における物流事業を拡大することで、新たな市場の開拓、物流ネットワークの構築によるあらゆる産業の市場拡大に貢献することが可能です。
特に、食品や医薬品分野における、冷凍・冷蔵技術を伴った物流技術のアジア全域への拡大は、大きな機会と言えるでしょう。

参考資料:国土交通省生産性革命プロジェクト

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