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コラム No.90

CREコラム・トレンド

増加するサウンディング型市場調査

公開日:2019/10/31

行政と民間業者が公有地の活用や民間活力の導入について事前に直接対話する「サウンディング型市場調査」が、いま増加しています。官民連携事業の推進につながるとして地方自治体で広がりを見せています。

建築用語に由来する?

サウンディング(Sounding)と聞くと、多くの人はサウンド(音)を鳴らすことを想像すると思いますが、そのほかにもいろいろな意味があります。その一つは、「地層の深さを調べる」という地盤調査を意味する建築用語です。サウンディングによって地盤の性質を把握し、その結果に基づいて建築基礎の設計や基礎工事を実施します。最近はあまり聞かれなくなりましたが、事業の狙いや概要などを予め関係者に周知しておくことを「サウンドする」と、ビジネスパーソンの一部で使われていました。
サウンディング型市場調査は、地方自治体が街づくり事業や公共施設の有効活用や転用を行いたい場合、そのアイデアや意見を広く民間事業者に求めるため直接対話し、最大限の結果が得られるよう条件整備していきます。これにより、民間事業者は自らのノウハウと創意工夫を事業に反映でき、参入しやすい環境(公募条件)を生むことができます。サウンディングは建築用語では地盤調査ですが、官民連携事業においては、選定された民間事業者が事業展開しやすいよう「地ならし」をしておく、という意味合いが込められているのではないでしょうか。

今年度は60%増の案件数に拡大

1997年に公共施設の設計や建設、維持管理・運営に、民間の資金とノウハウを活用して民間主導の公共サービス提供を行うPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)法ができました。法施行から今日まで、財政がひっ迫する地方自治体などでPFI事業が幅広い分野で展開されていますが、サウンディング型市場調査もそれにつれて増えています。国土交通省の発表によれば、2017年度に全国で50件のサウンディング型市場調査が実施され、2018年度は51件、そして今年度(2019年度)は1.6倍の84件と急増しています。

サウンディング型市場調査(以下、サウンディング)の高まりを受けて国交省は昨年、「地方自治体のサウンディング型市場調査の手引き」を作成しました。サウンディングは、事業の発案段階や事業化の検討、事業者の選定段階でその内容や仕組みに関して、直接対話することで民間事業者の意見を聞いたり新たな提案を把握したりして事業の検討を進めるもので、その狙いは情報収集にあります。また、事業の検討の段階で対外的に情報提供して、民間事業者に参入意欲を高めてもらう狙いもあります。

出典:国土交通省「地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き(概要)」をもとに作成

インセンティブ設定と情報保護がポイント

サウンディングを実施するには一連の流れとポイントがあります。まず、地方自治体がサウンディング調査の実施要領を作成して、Webサイトで公表します。実施要領の公表にあたっては、サイト掲載だけでなく、記者発表や広報誌、業界紙などを活用して周知し、より多くの民間企業に対して参加を呼びかけます。
「手引き」では、対象となる用地や施設に対して感じている課題や問題点を自治体が具体的に示すことが重要と指摘しています。自治体の悩みが明確であれば、事業化に向けてより有益な提案を受けることができるからです。逆に、具体的な用地活用方針が明確に定まっていない場合、あるいは提案を受けて新たに計画を検討するような場合には、そのことを課題として示します。そのほうが民間事業者のノウハウを発揮した自由度の高い提案を引き出せるから、としています。
サウンディングで最も重要なことの一つに、積極的な参加と優れた提案や意見を促すためのインセンティブの設定が挙げられます。優秀な提案を行った民間事業者には公募時に加点したり、優秀な提案を行った民間事業者と随意契約を締結するといったインセンティブを設定することが求められます。国交省では、これまでのサウンディングで、こうしたインセンティブを導入した例は少数で、「サウンディングへの参加実績は、事業者公募などにおける評価の対象とならないことが実施要領に規定されている場合が多い」と、手引きの中で述べており、インセンティブ導入の必要性を説いています。インセンティブが大きいほど民間事業者の参画意欲は高まりますが、インセンティブが小さい場合は参画意欲が低下し、サウンディングの参加者が少なくなります。

出典:国土交通省「地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き(概要)」をもとに作成

もう一つ重要なことは、民間事業者のノウハウ保護です。サウンディングに参加した民間事業者との対話内容や提案は、公表時においてある程度は保護しなければいけません。そのまま公表した場合、提案した事業者の事業計画や事業手法などが流出することになり、民間事業者の参加意欲を下げることにつながりかねません。また、サウンディングに参加した民間事業者の名称を公表した場合、その企業が事業に対して優位に立っていると同業他社が判断し、公募する企業が減って競争力を失うことが考えられます。そうなると入札企業が少なくなり、事業にかかる経費(予算)にも選択の幅が狭まります。

地方自治体としては、多くの業者が参加して優れた提案や意見を数多く収集することが理想的です。このため、民間事業者からの提案内容や独自ノウハウに関しては、知的財産の観点から情報の保護を行うことが必要となりそうです。

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