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インタビュー 006
  • 土地活用税務コラム

税理士リレーインタビュー 第六回 税理士法人FP総合研究所 顧問 山本和義様 「資産税は、過去計算ではなく『未来設計』」

公開日:2017/07/20

土地活用と税金の問題は、切っても切り離せないにもかかわらず、個人の土地オーナー様にとって毎年のように改正される税制は、かなりハードルの高い問題でもあります。
難しい税金の話はもちろんのこと、対応すべきさまざまな問題は、税理士の先生に相談するのが一番です。少し敷居が高いと感じている方は多いかもしれませんが、気軽に相談ができるうえに、土地活用も含めたさまざまなアドバイスや提案を得ることができます。

インタビュアー(以下I):山本先生は、長年「不動産」や「相続」に特化して取り組まれてきたとうかがいました。

山本和義(以下Y):大阪は地価も高く不動産オーナーにとっては、不動産の活用は避けて通れない状況にあることから、相続業務に専門特化するには、不動産賃貸業を営むオーナー様を対象にしていこうということは決めていました。そうしたお客様とは毎年の所得税の確定申告などを通じて長いお付き合いになることが多く、その延長線上に相続のご相談が期待できます。
私は「何でもできるということは、何もできないこととイコールである」とよく言うのですが、専門特化すればするほど、他の人にはわからないことが山ほど出てきます。ですから、自分の不得手な部分については、その分野の専門家とコラボすればいい、という考えでやっています。

I:一言で「不動産資産」といってもさまざまなケースがありそうです。

Y:そうです。賃貸不動産のオーナー様が確定申告を行う際には、必ず固定資産税の「課税明細書」を提出していただくのですが、所有地にも、自宅の土地、賃貸物件の土地、未利用の土地など、いろいろあります。申告の際に経費になるかならないかを判断するには、その内容を明らかにする必要があるわけです。
また、課税明細書では、共有者がいても「○○他1名」となっているだけなんですよね。賃貸物件などでは、共有の割合に応じて所得を分けて申告しなくてはいけませんので、登記事項証明書を取って共有割合を確認するようにしています。
所得を持分に応じてあん分するのは非常に手間がかかるので割愛される方もいますが、「所有者は誰で、持分はいくらか」という点については、登記事項証明書などでしっかり確認して、正しい申告につなげていく必要があります。
そうしないと累進税率が適用され、より高い税負担になってしまうだけでなく、その土地からの収入による貯蓄もすべて特定の者の相続財産ということになってしまい、税の払い過ぎを何重にも招くことになります。

I:相続に関する3つの目的として「納税資金対策」「遺産分割対策」「節税対策」を挙げられていますが、その三者間でバランスをとることになりますか。

Y:私は「節税はおまけ」だと考えています。納税対策と相続争いを防止する対策の副次的効果として「結果的に相続税の負担軽減にもなる」ということでないといけません。
そもそも、相続人の皆さんそれぞれに、遺産に対する希望や目的は異なります。相続したら早く売ってお金にしたいと思っている人もいれば、先祖からの土地だから何とか守っていきたいと考える人もいます。早く現金化したい人には、自身の借金を返すとか、何か他に使いたい事情があるのかもしれません。
あるケースでは、「土地があるので、借金をして賃貸住宅を建てましょう」ということになりました。そうすれば全体の税額が下がり、相続税の負担軽減になります。ただ、節税の効果が相続人全員に及ぶ一方で、建てた賃貸住宅の経営リスクは特定の人が引き受けることになります。そこをどうするのか、という点が難しいわけです。
もめているところは、結局、何をやってももめますね(笑)。「総論賛成、各論反対」みたいになってしまって、落としどころが見つからないのです。

I:ご本人が遺言書を準備しておけば、そうした争いは避けられるのではないでしょうか。

Y:さんを説得して」とご相談をいただくことも多いのですが、そこはお父さんのお気持ち次第ですから、「お父さんも同じテーブルについて、一緒に話をしましょう」とお勧めするようにしています。逆に、ご本人に強い意志がある場合もあります。この場合も相続人の方々を集めて、「お父さんはこういうことを目的に、こんなことをやろうと思うから」ということをしっかり伝える必要があります。
そうしないと、いざ亡くなったとき、お父さんがなぜこんなことをしようとしたのか、子どもたちには理解できないということになりがちです。頑張って準備した遺言のせいで子どもたちがもめることになってしまったら、お父さんの努力が報われませんよね。

I:そういう意味でも、税理士さんとしっかり相談しながら遺言書づくりを進めることが望ましいですね。

Y:遺言書を作っても、リスクが特定の人にいくことについては解決できません。しかし、リスクを取らない限り、リターンはないわけです。ローリスク・ミドルリターンくらいはうまくするとあるかもしれませんが、ノーリスク・ハイリターンなんて絶対にあり得ません。
では、誰がそのリスクを最終的に引き受けるのか。そこは家族みんなで集まって、いろいろ検討して、リスクもコストも踏まえたうえで、相続人が選択するしかないことです。
そして、そうやって選んだことの結果については、良い結果も悪い結果もすべて相続人の皆さんが引き受けることになります。
そのことはきちんと説明します。そうしないと、うまくいっているときはいいのですが、結果が悪いと、どうしても「お前の責任だ」となりがちですから。
そのため、他の先生方からは「資産税って、リターンも大きいけれどリスクもすごくある仕事ですよね」とよく言われますし、私も資産税業務に特化した当初はそう思っていました。
でも、今はそうは思いません。リスクが事前に明確であれば、そのリスクを誰が負担するのかを決めればいいのであって、発生するリスクやコスト、たとえば税務調査で否認されたら、これだけの税負担が増加する。そういう要素をしっかり洗い出し、「それでよろしいですか?」と、事前にきっちり確認します。それが税理士の仕事ですから。

I:資産税対策における最近の傾向としては、どのようなものがありますか。

Y:トレンド的には不動産の現金化ですね。相続財産における土地のウェートが下がってきて、銀行貯金のウェートがどんどん高まっています。上場有価証券はどうしても相場でアップダウンしますが、現金預金はずっと右肩上がりです。
こうした傾向は、やはり納税のことをよくよく考えてのことではないかと思います。また、現金化といっても、売りやすいものを現金化するわけではありません。売りやすい土地は優良資産ですから、いつでも売れるような土地は手元に残して、要らないものは時間をかけて整理をして現金化していくわけです。

I:山本先生からも、そのようなアドバイスをされるのですか。

Y:そうですね。なかなか売れない土地については、やはり努力が必要です。地方の郊外などですと、大きな道に面しているような土地でも、交通量の少なさがネックになって、なかなか活用もできないのが実情です。
そうなると、土地を所有していても収益をまったく生まず、反面、固定資産税や相続税の負担が避けられません。物納という手もありますが、地方の土地オーナー様にとって、活用の困難な不動産の「不」は、マイナスの「負」というわけです。
こういう状況ですから、最後はオーナー様が決めるにしても、我々プロの専門家がそれなりに材料を提供して、その中から少しでも有利になる方法を選んでいただければと思います。

I:山本先生は、「資産税は、過去計算ではなく、未来設計」とおっしゃっています。今だけの判断ではなく、「未来をどうつくっていくか」という視点から、お客様にアドバイスをされるのではないかと感じました。

Y:正直に言って、明日のことは誰もわからない中で、「こんな前提条件で考えたら、こうなります」というお話をすることしかできないんです。つまり、「未来設計」というのは「未来のことだから、よくわからない」ということでもあるわけです(笑)。
ただ、せっかく相談に見えたときに、そんなことを言ってしまうと仕事になりませんから(笑)、最初にいらしたときには「明日のことだから、ご希望どおり何でもできますよ」とお話しすることにしています。
そして、「まだ何の対策もしていないのだから、今を0点と考えると、私がちょっとアドバイスをしたら20~30点くらいはすぐに取れます」と言うんです。0点の人にいきなり合格点の60点を取れと言っても無理ですが、0点だった人が20~30点も取れたら、すごく成長したように思えるじゃないですか。すると、「もうちょっと何かないかな?」という欲が出てきますし、60点が取れたらまた欲が出て、さらに80点、90点を目指すようになっていきます。
そうやって、それぞれの目標に向けて我々が1つずつお手伝いさせていただくことで、より良い成果につなげていくことができるのではないかなと思っています。

I:相続税の基礎控除が下がって、まさにその0点から相続対策をスタートされる方が増えています。そのような方に対しては、どういうところからアドバイスをされますか。

Y:所有者の方が亡くなったら、結局は「どう分けるか」という話に尽きるわけです。遺産分割については税金の有利不利の説明をしなければいけないので、まずはそこをきっちりお伝えします。それから、相続人の方々の気持ちや家庭内弱者の方の立場を踏まえた「総論」の説明をさせていただきます。
たとえば、家を出た人もいれば、ずっと家を守ってきた人もいて、そこで、「財産は家を守ってくれる人に」とか「自分は外に出たから遺産はいらない」などといった話にもなります。そうしたことはあくまでご自分から申し出るものであって、周囲に強制されるべきことではありません。
また、残された高齢のお母さんというのは、意外と立場が弱いもので、子どもたちにそっぽを向かれたら困るという気持ちから、あまり強いことを言えないんですね。そこで、相続した土地や不動産を現金化したり物納したり、お母さんが安心して老後生活を送れるような方法のアドバイスもします。そういったことも、税理士の役割だと思いますので。
その上で、「それでも、決めるのは皆さんであって、税理士ではないですよ、こんな考え方もあるし、こういうところにも配慮したものでなければいけないのではないですか」とお話しします。

I:他に、山本先生が気をつけられているポイントはありますか。

Y:遺産の内容については「故人の財産はこれだけでしたよ」と、きちんと情報公開することにしています。こういうことは、自分の取り分がどうあれ、皆さん、やはり知りたいはずですし、変に隠さないほうが、かえってもめないものです。
配分における民法の規定というのは、話し合いがまとまらなかった際の基準にすぎず、法定相続分でなければならないということではありません。あくまで、亡くなった方がどう考えているかということをベースに、ご家族で決めるべきことです。
そのためにも正しい情報を共有していく必要があると思います。

I:できるだけ平等に、争うことなく、皆さんが納得できる地点に落着できたら何よりですね。

Y:私は金額を同じにすることが平等な遺産分割ではないと思っています。
亡くなった方の思いを考慮したら、この人は多くなる、この人は少なくなる。それが平等というものではないでしょうか。
たとえば、「こっちの孫は好きだけど、こっちの孫は嫌い」という気持ちがある方は、好きなほうのお孫さんに一生懸命やってあげたらいいのではないかと思います。

I:そこは結局、残す側の気持ちが最優先という判断でいいのでしょうか。

Y:ご自身の財産なのですから、遠慮しないで率直な思いを遺言書に残すべきだと思います。
それでも、あまりにも誰かに偏っていたら、やはりもめますけどね。
最近の傾向で困ることは、一人住まいの方が急に亡くなったりすると、財産がどこにいくらあるのかわからない事態になることです。こういう場合、物理的に一番近いところにいた相続人の方が代表で遺産整理をすることになる事例が多くありますが、その方がいくら一生懸命にやったところで、なかなか実態がわからないものなんですね。
すると他の相続人が「他にも預金があるはずなのに、ないというのはどういうことだ」などと言い出して、結局、もめることになるわけです。

I:最近は一人暮らしの高齢者が増えていますから、そこは切実な問題ですね。そういう事態を招かないためにも、生前のうちから財産整理をしておく必要がありそうです。

Y:「ないことの確認」は非常に重要です。私は「確認できる残高はありませんでした」というレポートを作成して、相続人の方々に書面で報告するようにしています。
税理士は、残された財産については相続税がかかるので一生懸命に情報を集めますが、ないという証拠については積極的に資料を収集しないようです。かなり大変な作業になりますが、これをきちんとやることが業界のスタンダードにならないといけないと思います。

I:会計事務所は「ちょっと敷居が高いな」とお感じになる方も多いので、気軽にご相談いただくためのアドバイスをお願いします。

Y:会計事務所は敷居が高いとよく言われますが、そんなことはありません。相談料についても、だいたい「○時間でいくら」という表示になっていますが、初回はいただかない場合が多いと思われ、ぜひ、お気軽にいらしてください。もし、お知り合いの方がいらっしゃるのであれば、その方からご紹介をいただくのが一番いい方法なのかなと思います。
また、今は毎日のようにどこかで税金に関するセミナーが開かれていますから、そこに参加されて、いろいろな先生の話を聞いてみるのもいいのではないかと思います。ご自分のことを相談するわけですから、相性というのは重要です。能力云々よりも、相談してみて納得できそうな人を探すことが大切なのではないでしょうか。

I:相談に伺う前に、何か準備は必要ですか。

Y:対策にかける時間が長ければ長いほど、無理なく効果的な相続ができると思います。平均余命を参考にして、残りの時間を使って、毎日少しずつ贈与していくのが理想でしょう。準備を始めるタイミングとしては、お孫さんができるだとか定年になるだとか、一般的な目安はそのあたりでしょうが、「誰に残したいのか」が決まっていると、対策がしやすいと思います。
ただ、気持ちというのは変わることもあるので、生前に渡してしまうのか、遺言書でとりあえず今の気持ちをきちんと書き残しておくのか、そこは悩ましい部分です。遺言書の場合は気持ちが変わったら書き直しができますが、渡してしまった財産は戻ってきませんから(笑)。
また、生前贈与すると、相続税で課税される財産が贈与税だけで済むので、税金上は有利ですが、想定外にご自身が長生きした場合、生活費は大丈夫かという点も考えておく必要があります。

I:確かに、未来設計=未来のことはわからない、ですね(笑)。

Y:私は自分が90歳までに亡くなるという前提で、ライフプランを立てています。そして、私が死んでも相続税がかからないように、財産は全部、妻に残します。配偶者の税額軽減の適用を受ければ1億6,000万円まで相続税がかかりませんから、間違いなく大丈夫でしょう(笑)。子どもたちに残すよりも良い方法だと思います。
その次に、妻が亡くなったら残された財産は子どもたちのものになりますから、「ちょっと我慢すればお前たちに財産は来るのだから、欲しかったらお母さんをヨイショしておけ」と言っています。
それまではせいぜい母親の機嫌をとって、せっせおと小遣いをもらいに行けばいい。そうすれば親子仲もうまくいくでしょう?(笑)

I:これは、皆さんにもすごく参考になるお話だと思います。もめない相続というのは、結局は個々の考え方と準備次第なのかもしれません。貴重なお話の数々、本当にありがとうございました。

山本和義(やまもと かずよし)

税理士法人FP総合研究所 代表社員・税理士

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