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インタビュー 016
  • 土地活用税務コラム

税理士リレーインタビュー 第16回 『「成年後見もできる」「家族信託もわかる」「遺言もわかる」という3つがバランス良くできないと、お客様の満足は得られません。』 あすか税理士法人理事長・税理士・法学博士 川股修二様
あすか税理士法人 社員税理士 中野研様
あすか税理士法人 税理士 武田直様

公開日:2018/09/28

家族信託を使って保有会社をつくるケースが増加

インタビュアー(以下I):あすか税理士法人様は、札幌でかなり大規模に展開されています。

中野(以下N):当税理士法人は、札幌での相続税の申告数において5本の指に入ります。道内各地の拠点で活動している事、税理士所属数が申請中を含め13名であり道内でNo.1という事も特長です。高度な税務サービスを提供するためには、税理士として専門性がかなり必要になります。税理士一人ひとりが得意分野を持ち、一丸としてやっていくところに当税理士法人の強みがあります。

I:そうすると、お付き合いされている関与先様も非常に多いということですね。

N:現状、従業員60人体制で約1000件超のお客様とお付き合いさせていただいております。法人のお客様のほうが多いですが、相続に関連するサービスを展開していることから、個人のお客様も多く関与させていただいております。個人のお客様の事業規模が大きくなりますと、その方たちが法人を持ったり、法人成りをしたりという事もございますので、割合は個人より法人のほうが多くなります。また、不動産や建設に関する法人のお客様が多いですね。北海道に多い業種でもあり、深くお付き合いさせていただいております。

I:不動産の管理会社、保有会社を作るという形が多くなっているとお聞きしています。

武田(以下T):確実に増えています。家族信託を使った保有会社をどんどん作っていっています。家族信託を使うと取得税が下がります。従来から所得税対策で法人成りをしたいというニーズが多かったのですが、法人内に取り込んでしまうと取得税が掛かってしまうため、それが足かせとなってなかなか進まなかったお客様もいらっしゃいました。そこで家族信託を使うことで、やり易くなったケースが多くあります。
例えば、おじいちゃんを亡くして、おばあちゃんが賃貸住宅経営をしていたとします。売却する金額ないし評価額が、建物だけで仮に2億だとすると、不動産取得税と登録免許税で約900万円が掛かります。移転コストですね。ところが、家族信託制度を利用し、所有物件を受益権化して法人に譲渡すれば、コストは80万円で済みます。法人成りするだけの方法でかかったコスト900万円が、毎年90万円の節税しかできないとペイするまで10年かかりますが、家族信託制度を利用すれば80万円のコストを1年で回収できるため、大きなメリットを提供することができます。
個人経営をされている方にとって、法人成りは夢なのだと思います。どこかで社長になりたいという思いがあるのかもしれません。
また、株式で事業承継するという事は不動産取得税も登録免許税も掛からない為、売買の世界に入ります。そうすると資産の移転が簡単にできるという事は既にご存知なのですが、コストが掛かりすぎるから断念した方々が多くいらっしゃいました。ところが、家族信託を使えば不動産取得税は10分の1ですから、そのご用命が増えています。

N:当税理士法人では、北海道内では先駆けて家族信託サービスを提供させていただいております。取得税軽減のほかにも家族信託には様々なメリットがあり、積極的な提案の結果、何件も実績がございます。

T:認知症に関する事例もありました。地主のおじいちゃんが、そろそろ認知症になるかもしれないという事で相続税の試算をしてみたところ、とんでもない税額になることが分かりました。もし認知症になってしまったら、相続税対策で資金を借り入れたり、不動産建築の契約を行ったりする事が出来なくなってしまうかもしれないという状況でしたが、家族信託を使えば、託された息子さんがおじいちゃんの代わりに契約行為を行うことができます。もしおじいちゃんに何かあったとしても、相続税対策を進められるという事で非常に役立っています。

I:成年後見人制度というものがあると思いますが、やはり家族信託の方が多いのでしょうか。

N:後見の制度も当然ございます。しかし、後見人制度はどうしても被後見人の方の財産を守る方向に進んでいきますので、積極的な運用というところでは難しいところがあります。家族信託ではそういう事はありません。財産を預けてくれた委託者の方の利益を目指して、託された方が積極的に運用する事も許されています。
例を挙げますと、成年後見人制度は、家庭裁判所が最終的に財産処分の許可を出すという仕組みになっています。例えば、自宅をお持ちのおじいちゃんが施設に入る場合、おじいちゃんの自宅を売らないと施設に入れないという時でも、家庭裁判所からの許可は出ません。「住宅ローンがあるから売ってはいけません」という話になります。そういうところが非常にやりづらいのです。大規模修繕もそうで、余程説得力がなければオーケーは出ません。ですから、相続税対策などは論外です。相続税を払うのは長男ですから、長男の税金を安くするために、何故おじいちゃんのお金を使うのかという話になる訳です。
それに、成年後見人制度は、どちらかというと司法書士さんの専売特許です。我々も財産の成年後見監督人という仕事はやりますが、それは成年後見が終わった後です。成年後見人制度は相続税の対策ができませんし、自由度がありません。
ところが、家族信託というのは基本的には財産です。財産とは、土地・建物・お金・未上場の有価証券、さらに愛犬も可能です。但し、それらは物であり、身上監護といわれる、病院で手術を受ける、施設に入るといった時に、信託では許可を出すことはできません。ですから、家族信託と成年後見人制度では、身上監護の部分が必ず残ります。我々は、「家族信託は物、財産」、「心の問題は成年後見人制度」が必要であると考えています。だとすれば、任意後見人制度から始まる成年後見人制度をお勧めするのも、やはり我々の仕事です。
尚且つ、家族信託では拾えない財産というものも沢山あります。ですから、遺言も必要になります。遺言は「その他の財産は長男へ相続させる」といった事を、最終的なカテゴリーの中でやるものです。だからこそ、今、税理士の一番先端をいっている資産税の先生は、「成年後見もできる」「家族信託もわかる」「遺言もわかる」という3つがバランス良くできる人です。それらが揃わないと、お客様の満足は得られません。そのためにも普段から勉強する事が大事ですね。

待つのではなく、お客様のニーズを発掘し対応していく

I:相続税対策を進めていく上での課題、あるいは注意されている点などございましたらお願いします。

N:特徴的なのは、大和ハウスさんとのコラボレーションの中で、お客様の困りごとを発掘していくというところです。待っている訳ではありません。待っているというのは、お客様からこういう事をやりたい、ああいう事をやりたいというご質問が来てから、我々専門家が対応するという事です。あすか税理士法人の場合、大和ハウスさんの協力を得て、月1回「ゼロからはじめる信託学校」というセミナーを開催しています。全8回ほどのコースのセミナーで、毎回40~50人の生徒さんにご参加いただいております。そこにおいで下さる生徒さんは、自分の財産をどういう形で承継させたら良いのか、どうやったら良いのかと悩んでいる状態です。明確にこうして欲しいという具体的な要望がある状態ではありません。
セミナー終了後には30分程無料相談をさせていただきますが、30分では終わりませんから、相続・贈与相談センター、大通Forte(フォルテ)にお越しくださいとお伝えします。

この場所は、ご自身の財産のすべてを把握・共有していただくための場所、そしてゆっくりと納得していただき、お考えを引き出す場所です。午後からみっちり、相続税の計算、分け方の問題を大きなモニターを使いながらじっくりやります。
本当にじっくりとお話ししないと、お客様の本当のニーズを引き出すことはできません。
また、セミナー後の個別相談ではセミナー内容をじっくり振り返りご自身の状況を見つめなおす時間もありませんし、ほかの方がいらっしゃる中で財産の話もしづらい面がございますので、弊社の応接にお越しいただいて、できるだけきめ細やかなサービスをさせていただく。お悩みごとは皆さん多かれ少なかれ色々あると思いますが、その辺りを発掘といいますか、しっかりとお伺いして、そこに対応していくというところが大事なところだと思っています。

I:相続税の改正があって、相続対策をしなければいけない人が増えてきていると思います。その印象や実感はございますか。

T:基礎控除が下がった段階で、申告件数に関しては2倍近くになりました。普通に働いていて退職金を貰った方、地主さんではなく、一般の方まで対象になってしまいましたので、今まででしたら相続税を払わなくてよかった方々でも申告が必要になりました。

N:昔と違って、どなたかが亡くなったから相続税の申告書を書いて下さいという時代ではなくなりました。例えば、税理士の所に亡くなった後に、「相続税はわからないからやって貰えませんか」というのではなく、生前から税理士サイドから「おじいちゃんの財産はどうしますか」という提案をして、フォローしていく。それで、もし相続が起きた時、「じゃあ、お願いします」となる流れに変わりました。税理士に対する要望も変わったのでしょうね。
それに、相続が起きれば起きるほど財産が分かれていきます。例えば、おじいちゃんが亡くなったら、長男、長女、次男と3本に分かれる訳です。同様に、その方々がある一定のご年齢になったら相続が発生します。おじいちゃんの時の相続で苦労していますから、先に自分の終活をどうするかという話にものすごく興味を持たれています。

I:相続で資産が分散するという事は、兄弟等で揉めるケースも当然あるのでしょうか。

T:以前の例ですが、財産の構成として不動産が8割近く占めていた人の相続問題で、実際の相続人の方々に対して、相続分通りに適切に分けて欲しいと主張される方がいらっしゃいました。お互い弁護士を通じてやり取りをして、結果的に2年越しに決着して、色々振り回されました。この案件、実は遺言書が無かったのです。
来年民法改正があるので、遺言書についてはもう一度考えていただきたいと思います。民法改正で大きく一般の人に関わる改正といえば、自筆証書遺言の改正と配偶者居住権の関係です。まず、自筆証書遺言に関しては、もう少し簡略化したような形になって、最後には財産目録を作らなければなりません。ですから、一度自分の財産はどういうものなのかを考えていただきたいですね。財産目録を作ることに関しては、会計事務所でお手伝いさせていただける事なので、財産の道標を作るという点においても、積極的に色々な方のお手伝いをしたいと思っています。
配偶者居住権の関係についても、今まで争いの種になってきた一つの要件の改正に向かっていますので、その点についても、分け方の相談を事前にしていただければと思います。個人的な感覚ですが、事前に相談していただいて、円滑な次世代の財産承継がお手伝いできたら良いと思っています。

N:少し話が変わって、株式のお話です。法人が優良な経営をしていると、当然、株価がどんどん上がっていきます。先代の社長から後継の方にその株を譲り渡すという事を考える時、譲渡する、売るなどの選択肢があると思いますが、譲渡すると普通に贈与になりますので、贈与税が掛かります。優良な企業であれば株価が当然ついていますので、とんでもない贈与税が掛かってしまう事もあります。買うにしても、後継者の方に資金がないと買えませんし、同族会社であれば親子間が多いと思いますので、そんなときに親が子からそんなに大量のお金を貰っても困るという事もあります。
親から子に株式を贈与する場合は、贈与税に関して、相続の場合は相続税に関して、一部猶予が受けられる、要件を満たせば免除になるという規定は元々ありました。しかし、元々の規定では、その会社の従業員さんが雇用を維持してくれないと特例は認められず、その雇用条件が厳しいものでした。それに、贈与に関しても相続に関しても、猶予が受けられるのが一部分しか認められていなかったので、ある程度のものは後継者にきっちり渡す事ができるのですが、その他の部分に関しては別途税金が掛かるか、売るしかありませんでした。
その2つの問題点が大きくあったのですが、そのあたりが今回の税制改正で解消されました。「特例事業承継税制」が創設され、特例として今年の4月から5年間に限り、雇用条件は残るのですが、指導を受ければ猶予に関しては継続が受けられますので、実質、条件が無くなったような形になります。贈与に関しても株式の限度があったものが、全ての贈与に関して猶予されるという、納税者の方にとってとても有利な規定ができました。優良な企業の社長さんは株価のところで困っています。後継者にきっちり株を渡しておかないと、経営が安定しません。国もサポートしてくれている税制ですので、その辺りを当たり前のものとして納税者の皆さんにお勧めして、円滑な事業承継が行えるよう、その特例を受けていただきたいと思って推進を進めています。

家族信託は新しい相続のかたち

I:大和ハウス工業との案件も非常に多いと伺っています。何か最近の事例をご紹介いただけますか。

川股(以下K):あるセミナーで、私どもの事務所で一般社団法人と家族信託が使えるという話をしたところ、あすかさんの方で一般社団法人を作って、家族信託での資産承継をまずはコンサルティングして下さいという話になりました。それで、大和ハウスさんにお連れしました。今、そのシミュレーションをしています。農業系の地主の方で、有効活用できる土地が多いので、そこに関しては大和ハウスさんと一緒に提案をしていくという事になっています。ですから、こちらからもお客様を紹介させていただいて、一緒に協働していくのですが、そのキーワードとして出てくるのが、「一般社団法人」と「家族信託」です。それは今のところうちにしかできない事です。

「ゼロから始める家族信託」というセミナーに来ている方が、自分の顧問税理士さんのところに行って、「家族信託をやりたいのだけど」と言ったら、「できないから、あすかに行ってくれ」と言われたそうです。やり方がわからないのです。この間も、それで何件かお客様が移ってきました。高度すぎて、その先生の手には負えなくなってしまったそうです。

もう一つ私が取り組みたくて、実現したい事があります。ハートワン信託と一緒に仕事をする事です。家族信託というのは、親亡き後の子の問題です。障がいを持つお子様のために、どういう形で親御さんの資産を持っていただくか、障がい者の方がもしもの時に、その資産をどう引き継いでいくかという事は、私の中では、実は、信託の中でも一番信託らしいところだと思っています。
例えば、1億2000万円の定期預金があったとします。それをずっと使わずに、息子の為に置いているとします。まず大和ハウスさんの方で、我々と協業しながら、土地を探して、それから建物を建てます。土地と建物両方で1億2000万円相当の物件を探す。それをそのままハートワン信託で預かっていただく。つまり、不動産管理信託をしていただくことになります。それで何ができるかというと、特別障がい者の場合の贈与税の6000万円までの非課税枠に入るのです。1億2000万の財産は、大和リビングが管理し店子さんから落ちてくるお金を息子さんの通帳に入れるという形で、結局無税で、土地、アパートを付けた状態で障がい者の息子さんに遺すことができます。息子さんは障がいを持っていらっしゃるから、当然、遺言は書けません。息子さんが貯めたり、使わなかったお金を、次のどなたに渡すのか。例えば、非常にお世話になったいとこの方、またはお世話になった福祉施設の方に寄付する。そこまでを一緒にやりたいのです。
ハートワン信託が信託会社として金融庁から認められたので、その非課税枠がやっと使えるようになりました。しかも、不動産を預かってくれます。

N:特例で非課税になる信託で、お金も賃貸不動産も税務上は要件として満たしているのですが、普通の信託銀行ではどうしても不動産の管理ができないので、税務上は認められているのに、銀行の都合で金銭しかやってくれないという事がありました。ハートワン信託さんは不動産のプロですから、きっちり預かっていただいて有効活用ができます。是非やらせていただきたいと思っています。

I:今後ますます家族信託という解決策があるという認識が広がっていきそうですね。

K:家族信託の近未来について、先日話してきました。これから間違いなく出てくるのは、ハートワン信託さんがやっているような不動産管理信託の非課税枠を使うこと、それともう一つは生命保険信託です。生命保険信託とは、いわゆる商事信託で、生命保険会社が自分で持っている信託会社に信託して生命保険信託を作るものではありません。イメージとしては、自分の死亡保険金を、自分が家族信託というスキームを作って、そこの受託者になった人に受け取らせて貰えるという事です。受託者は受益者の為に働くわけですから、例えば、自分の保険が奥さんに5000万円入るという時に、奥様が2500万円だけ使ったら、残りは別の人に2500万円渡すこともできます。普通はできませんが、それが自由にできるのです。
おそらく5年後には、「あなたの生命保険を信託にしませんか」という時代になると思います。そうなると、世の中がまったく変わってきます。生命保険は金融資産です。マイホーム、生命保険等の財産が、受取人を複数にしたり、連続させる事がこれから始まります。それがおそらく近未来の形という事です。

I:これからの新しい相続の形だと思います。貴重なお話、ありがとうございました。

川股修二(かわまた しゅうじ)

あすか税理士法人 理事長・税理士・法学博士

中野研(なかの けん)

あすか税理士法人 社員税理士

武田直(たけだ なお)

あすか税理士法人 税理士

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