都心で住まう“都市ナカ暮らし”は、自分らしい価値観やこだわりを大切にしたい方、
利便性を求める合理的な考えの方にお届けしたいライフスタイル。
この“都市ナカ暮らし”を快適にするために、近年、
「2階にリビングを配置する」という、新しい間取りの考え方が注目され始めています。
この「2階リビング」がもたらす新しい住まい方と、プランニングのポイントについて、
住まいづくりのスペシャリスト、東京本店住宅事業部 設計部 浅井郁優がご説明します。
快適な都市ナカ暮らしには、2階リビングがおすすめ！
都市ナカ住宅の2階リビングとは
リビングは家の中心となる大切な場所。家族や友人が集い、楽しいひとときを過ごせる快適な空間にしたいものです。従来のプランニングのイメージにより、リビングは1階にあるべきとお考えの方もいらっしゃるようですが、特に都市ナカの場合は、周辺環境の影響などから、リビングを2階に配置するほうが実は住みごこちが良くなるケースが多いのです。それでは都市ナカ暮らしの利便性と、住み心地やプライバシーの確保とをうまく両立する2階リビングについて、見ていきましょう。
まず日当たりについてですが、1階よりも2階の方が位置が高くなる分、光が差し込みやすく室内が明るくなります。また、建物が密集している都市ナカでは、プライバシーの確保や防犯面からも1階に大きな開口部を設けることは難しくなりますが、2階リビングなら、バルコニーにつながる大きなテラス窓を開放して、気持ちのよい風を通すことができます。さらにバルコニーからの眺めも楽しめますね。2階リビングであれば、前面道路からの視線を気にせずゆったりとくつろぐことができますし、外からは留守かどうかがわかりにくいのも安心です。
また、住まいの天井高は2m40cm程度が一般的ですが、ダイワハウスのxevoΣ（ジーヴォシグマ）は2階でも2m72cmの天井高にできます。この頭上の空間プラス32cmの差が、私たちに空間の広がりをより一層感じさせてくれます。2階リビングの天井高を高くしておくことで、気持ちのよいゆとりある空間が生まれるのです。
2階リビングで、家事動線がスムーズに
2階リビングのメリットとして家事動線がスムーズになることも、重要なポイントです。都市ナカ暮らしでは、1階に庭がとれない場合や、日当たり、プライバシーの問題から、2階のバルコニーに洗濯物を干すケースが多くなります。この場合、2階にバルコニーと浴室や洗濯機などの水回りを配置することで、ワンフロアで脱衣から洗濯、そして洗濯物の取り込みまでが可能になり、効率のよい家事動線が生まれます。家事動線をよくすることで、毎日の負担が軽減され、より快適な暮らしが実現できます。
都市ナカ住宅で気をつけるべき、北側斜線制限とは？
都市ナカ住宅では日当たりや風通し以外に、もう一つ気をつけなければならないことがあります。北側隣地の日照の悪化を防ぐための「北側斜線制限」という法令上の制限があることをご存知でしょうか。新しく建てる建物の高さは、真北に向かった隣地境界線までの水平距離の1.25倍に、5m（低層住居専用地域）または10m（中高層住居専用地域）を加えた高さ以下に収めるように制限されています（高度地区を除く）。この高さからはみ出した部分は勾配をつけて、北隣の住宅への日光をさえぎらないようにします。つまり2階の北側に面した空間の天井高が、この規制の影響を受けることになります。
しかしこの北側斜線制限の課題も、2階リビング＋2階水まわりにすることで解決できます。1階には寝室を配置し、天井高は一般的な2m40cmに。そして、2階の南側には天井高2m72cmのリビングを設けます。一方で、天井高をそれほど必要としない浴室・洗面などの水回りを、北側斜線制限の影響を受ける2階の北側にまとめることで、北側斜線制限を解決しつつも、リビングは2m72cmの天井高が実現できます。
このように2階リビングは、北側斜線制限の課題を解決しつつ、快適さや暮らしやすさも併せ持つため、都市ナカ暮らしにとって合理的なプランと言えるでしょう。都市ナカ暮らしにフィットしたプランニングをしていくことで、大切なお住まいを、より快適な空間にしていくことができるのです。
実例紹介2階リビングで快適な空間を実現
H様邸のご紹介
階段を上がると、開放的な吹き抜けのある2階リビングが出迎えてくれます。吹き抜けの上部には窓を設置し、ダイニングからキッチンまで十分な採光を得られるように設計しました。リビングには、南側の道路面からの視線をさえぎるために高窓（ハイサイドライト）を設けています。そして、より採光の見込める西側に広い開口部を設け、開放的な空間にしています。お住まいのH様も、日中は照明をつける必要がないほどの明るさにご満足いただいているご様子でした。
H様邸では、リビング、ダイニングキッチンから洗面・浴室などの水回りをワンフロアにまとめています。H様ご夫妻は「上下階を行き来することがないので、家事がスムーズで楽」「キッチンからリビング全体を見渡すことができ、子どもが遊んでいる様子が見えるのも安心」とお喜びのご様子です。
プランニングのポイント
プランを考えるにあたって、設計士はまず初めに現地調査に行きます。周りの環境や敷地条件から、居住空間を目的に応じてどのように配置するかを考えます。同時にお客様のニーズもお聞きすることで、おのずとリビングを1階にするか2階にするかが決まってくるわけです。
H様邸を設計する上での一番のポイントは、「オーバーハング」といって2階部分を外に張り出すプランを採用したことです。1階には玄関やガレージを作る必要があり、居室として使える広さが制限されてしまいますが、オーバーハングで張り出した分、2階リビングの面積を広くすることができました。
家に帰ってきてくつろぐ場所は、やはりリビングとおっしゃる方が多いので、快適なリビング空間にすることが一番重要です。そこで、採光をとりやすい方角を考慮しながらリビングの場所を決めます。リビングの南側に大きな窓を設けるというのが一般的ですが、交通量の多い幹線道路に面したH様邸ではあえて南側にハイサイドの窓を設置して、外からの視線をさえぎりました。そしてより多くの採光を得られる西側に大きな開口を設けています。
また、2階リビングは天井の高さにもメリットがあります。1階に吹き抜けを作ってしまうと、その分2階の部屋の面積が減ってしまい、使い勝手や延床面積に影響してしまいます。しかし2階リビングに吹き抜けを作ることによって、勾配天井を活かすことができます。H様邸のように、リビングにロフトを併設することで、空間に遊びやゆとりのプラスアルファを演出できることも、2階リビングの大きな魅力と言えるでしょう。
まとめ
今回は、より快適な都市ナカ暮らしを実現するために、十分な天井高で開放感に満ちたリビングを2階に配置するスタイルをご紹介してきました。2階リビングという新しい間取りプランによってもたらされる、都市ナカならではの利便性と、快適かつ合理的な住空間の両立。リビングの天井が高くなった分、壁や天井をデザイン性のあるものにしたり、窓際の演出や照明設備にもこだわりたくなってくるかもしれませんね。都市ナカ住宅の新しい可能性を私たちと共に見出してみませんか。
防災へのメリット
2階にLDKを配置するプランは、実は防災にも役立つことをぜひ知っていただきたいのです。近年、全国各地で豪雨・土砂災害が多発しています。被災地の映像では、1階部分が浸水・水没している住宅の数々が、記憶に新しいことでしょう。従来のプランでは、LDKや水回りなど生活の中心となる設備が1階に集中していることが多く、浸水・水没に見舞われると、その後の生活を復旧させるまでに多大な労力が必要です。しかし、2階にLDKや水回りを配置することによって、被害を大幅に抑えることが可能となります。
PROFILE
東京本店住宅事業部 設計部
浅井 郁優さん
愛知県名古屋市出身。2004年に名古屋支社住宅事業部設計課に配属。2011年に東京本店住宅事業部に異動。4階建併用住宅やコンビネーションハウジング、100坪を超える2・3階建住宅、同社の住宅展示場の設計を多々手掛けるなど、インパクトのある提案は社内外で高い評価を受けている。
