小さな水槽の中に、見飽きることのない水と魚の美しい世界が広がる「アクアリウム」。第1回でご紹介したように、さまざまな楽しみ方がありますが、空間をより印象的に演出するインテリアアイテムとしても重宝されています。
水槽を効果的に取り入れて心地よい空間をつくるためには、どんなことを心掛ければいいのでしょうか。また、家具やオブジェと違い、生きた魚や水を扱うアクアリウムを住まいに設置するにあたり、どんな点に気をつける必要があるのでしょうか。
今回は、アクアリウムのレンタル・メンテナンスおよび空間プロデュース事業を手掛ける「アクアプロデュース彩(さい)」の杉山勝さんに、住まいづくりのポイントや注意点を伺いました。
家づくりの段階から計画を
癒やし効果が高いことから、病院や福祉施設などの設置事例も多いアクアリウム。住まいにおいても同様に、自由気ままに泳ぐ魚たちやゆらめく水草を眺めていると、自然と日々のストレスが和らいでいきます。
近年はインテリアとしての人気も高く、住まいの個性をより引き立たせるアイテムとして取り入れる方が増えています。
もともとお住まいの家に置くことももちろん可能ですが、水槽の規模によっては床の補強などが必要な場合があるため、設置方法やサイズが限られてくることも。より内装と一体感を持たせた形で効果的に取り入れたいなら、家づくりの段階から計画されることをお勧めします。必要な仕様・設備を整え、水槽を含めた空間全体をコーディネートすることで、美しく調和した「アクアリウムのある住まい」が実現できるでしょう。
設置する場所と目的を考える
アクアリウムを暮らしのどんな場面で楽しみたいか、どんな機能を持たせたいかによって、設置する場所や方法は異なります。ここでは、いくつかのアイデアをご紹介します。
リビングの壁に埋め込み型水槽を
見た目がすっきりと美しい、壁面埋め込み型水槽。家族が集うリビングに設けると、住まいのシンボルとして空間のグレード感を高めてくれます。裏側はストックヤードにして、後ろからメンテナンスができるようにするのが一般的。水槽より開口を一回り小さくするのがポイントで、水槽のフチや水面が見えない方が、よりスタイリッシュな印象を与えます。
壁面埋め込み型水槽例:アクアプロデュース彩 ショールームにて撮影
リビング・ダイニングの仕切りとして
「大きなLDKが欲しいけれど、リビングとダイニング・キッチンは程よく仕切りたい」という方もいらっしゃるでしょう。間に水槽を設置すれば、開放感はそのままに、空間を緩やかに仕切ることができます。ただし、この場合は水槽の全面、あるいは一方の面を壁につけても3面が見えることになるため、水槽内のレイアウトに工夫が必要です。
仕切りとしての設置事例:アクアプロデュース彩 施工事例より
お客さまを迎えるエントランス空間に
玄関に水槽を設置すれば、毎日帰宅した時に癒やしを感じられ、来客の際に住まいを印象付けることができます。また、玄関とリビングの間の壁に埋め込み、両方から鑑賞できるようにする場合もあります。玄関から生活空間が見えすぎないよう、石や流木などで、目隠しを兼ねた高さのある水槽レイアウトをつくるケースが多いです。
玄関の設置事例:アクアプロデュース彩 施工事例より
寝室に置いて、安らぎ感を高める
事例としてはあまり多くありませんが、「一日の終わりに好きな魚を眺めてリラックスしたい」と、寝室に水槽を置く方もおられます。この場合は、音に注意が必要です。特に海水水槽は、寝る時にポンプの音やろ過装置に落ちる水の音が気になってしまうことも。最小限にする方法はありますが、ゼロにすることはできないため、心配な方は比較的音が気にならない淡水水槽がお勧めです。
空間を引き立てる水槽レイアウトのコツ
先程も触れたように、アクアリウムは大きく分けると淡水水槽と海水水槽があり、それぞれ魚の種類やレイアウトの手法はさまざまです。部屋のインテリアスタイルに合わせて、どんな雰囲気を演出したいかを考えていきましょう。一般的には、派手な色の魚が少なく水草がメインになる淡水水槽は、ナチュラルで自然な印象を与えます。一方、豪華で格調高いイメージにしたい場合は、鮮やかな魚が多く幻想的な雰囲気を持つ海水水槽が適しています。
また、美しく見せるためには水槽内のレイアウトも大切です。一つのポイントは、「完全に左右対称にしない」こと。
左右非対称にすることで自然な雰囲気が生まれる(アクアプロデュース彩 ショールームにて撮影)
岩やサンゴなどで山をつくる場合、「左右で高さを変える」「中央から少しずらした位置に置く」などを心掛ければ、自然の風景に近いイメージになります。また、「奥行きをつくる」ことも重要です。石などを横一列に配置するのではなく、前後させて置いた方がレイアウトにメリハリが生まれます。
住まいに設置する際の注意点
住まいにアクアリウムを取り入れるにあたり、いくつか家づくりの段階から気をつけておきたいことがあります。まず、水は非常に重いため、水槽の幅や高さによっては床や壁の補強が必要です。住宅の居室床の積載荷重について、建築基準法施行令では、1800N/m²(180kg/m²)と規定されており、補強の方法は構造や階数によって異なるため、家を建てる際に相談されると良いでしょう。
また、メンテナンスがしづらいと、後から後悔することになりかねません。ホースやポンプを使って給排水をする場合、水栓や排水口の位置を考慮しておきましょう。大型水槽の場合は、初めから専用の給排水設備を設置することもあります。さらに、水が電気設備にかかると漏電のおそれがあるため、コンセントをできるだけ高い位置に取り付けるなどの配慮も大切です。
こうした基本的なポイントの他にも、「もしもの地震に備えて水槽を台に固定する」「日当たりの良すぎる場所は避ける」などの注意点があります。魚は生き物なので、きちんと責任を持って世話していくことができるよう、最初にしっかり相談・計画されることをお勧めします。
チェックリスト
- 水槽のサイズによっては床の補強が必要な場合がある
- 必要に応じて、水栓や排水口の位置、専用の給排水設備の設置を検討する
- 漏電を避けるため、コンセントはリスクが少ない位置に
- 地震に備えて、台などに水槽を固定しておく
- 水槽内の温度が上がると魚に影響を与え、コケも増えやすくなるため、直射日光を避けて設置する
まとめ
アクアリウムは、暮らしの楽しみを広げるとともに、インテリアとしてうまく取り入れれば、美しい癒やしの空間を演出することができます。しかし、設置にあたってはさまざまな注意点もあるため、「アクアリウムのある暮らし」に興味をお持ちの方は、ぜひ一度ダイワハウスにご相談ください。
アドバイス
アクアプロデュース彩(有限会社グエル・パラッシオ) 代表取締役 杉山勝さん
1975年千葉県生まれ。2001年に有限会社グエル・パラッシオを設立。2006年に水槽のレンタル・メンテナンスを手掛ける「アクアプロデュース彩」を立ち上げ、個人宅をはじめ医院や福祉施設、オフィスなどの空間プロデュースに携わる。
アクアリウムのある暮らし