「新しい家はどんなインテリアにしようかな?」と想像するのは、
家づくりにおいてもっともワクワクする瞬間のひとつ。
一方で、「失敗したらどうしよう…」と大いに迷う部分でもあります。
でも大丈夫。
インテリアには、これさえ守れば居心地のいい空間ができる、一定の法則があるのです。
この連載では、ダイワハウスのインテリアコーディネーターが
「長く住み続けられて、心からくつろげる家」にするためのインテリアの法則を、
照明・収納・家具・色彩計画などテーマ別にご紹介していきます。
2回目のテーマは、収納計画です。
収納マイスターの資格を持つ、エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)の
石﨑英子が「くつろぐための収納計画」をレクチャーします。
Profile
大和ハウス工業 富山支店 住宅設計課 主任
インテリアコーディネーター 収納マイスター 整理収納インストラクター
エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)
石﨑 英子
美しい空間作りだけでなく、お客さまが住まわれてからも心地よく快適に暮らしていただけるよう、お好みのインテリアと暮らしやすさとの調和を大切にすることを心がけている。ライフスタイルや趣味、理想の暮らし方などのご要望をお客さまとの会話から汲み取り、お好みの色やデザイン、日々の生活の中での困りごとなどをきめ細やかにお伺いしながら、プロとしての提案を加えて思いを形にするのがモットー。
はじめに収納の目的は「しまう」ためではない?
せっかく素敵なインテリアにお気に入りの家具などを揃えても、物が散らばってごちゃごちゃとした空間では落ち着けませんよね。「くつろげる家」の条件として必須となるのが収納計画です。
しかし、深く考えずただ大きめの収納スペースをつくっても、片付けたい場所から遠くて不便だったり、雑多に物を詰め込んでしまって探しにくくなったり、うまく機能しなければ意味がありません。
収納の目的は物を「しまう」のではなく、「使いやすくする」こと。「使う場所の近くに収納場所を設けること」が、取り出しやすく、片付けやすい収納の原則です。
法則その①家族の動きに合わせてリビング・ダイニング収納を計画する
家族が一堂に会してくつろいだり、仕事や家事をするリビング・ダイニング。人の動きと物が雑多に交錯する空間なので、綿密な収納計画が必要です。物を使う場所の近くに収納できるよう、まずは家族の普段の生活スタイルを想像して、「何をどこで使うのか」を考えていきましょう。
リビング・ダイニングで何をしてくつろぐ?
例)本を読む、音楽を聴く、映画を観る、趣味のお稽古の練習をする、ペットと遊ぶ、ゲームをする…など
読書を楽しむ方なら本棚を、音楽や映画鑑賞を楽しむ方ならCDやDVDソフトの収納スペースを大きめにとり、できれば所蔵メディアのサイズに合わせて棚を設計するといいでしょう。
趣味はテレビやドラマ、VOD(動画配信サービス)の鑑賞…という方なら、リビングテーブルの上にリモコン類が乱立してしまうかも。壁がけテレビの下に掘り込み収納をつくれば、ブルーレイレコーダーやリモコン類を収納することもできます。赤外線を通すブラックガラスの扉をつければ、見た目もすっきりしてホコリ対策にもなります。
リビング・ダイニングで行うルーティンは何か?
例)家計簿をつける、郵便物の整理をする、仕事をする、勉強をする、アイロンがけをする、洗濯物を畳む、メイクをする、ペットの世話をする…など
リビングで勉強や仕事をするなら、造作デスクや仕事道具の量に応じた収納スペースを設置すると片付けやすくなります。アイロンがけや細かな家事をするなら、リビングの一角にアイロン台や掃除用具などをまとめて収納できる扉つきの納戸。リビングでペットの世話をするなら、ペット用品をまとめてしまえる足元の掘り込み収納なども想定しておくといいでしょう。
リビング・ダイニングに持ち込むべきではない物をどうするか?
例)コート、バッグ、持ち帰った荷物、不要なチラシ…など
そもそもリビング・ダイニングに持ち込むべきではない物もあります。例えば、ソファの横に立てかけられた通学カバンやダイニングチェアにかけっぱなしの背広。どこに何を散らかすのかは、家族それぞれのクセなどもあることでしょう。
「片付けて」と注意しても、意識的に習慣を変えることは容易ではありませんよね。これらは帰宅時のルーティンを考慮して、玄関からリビング・ダイニングまでの動線上にしまう場所をつくっておけば、家族の誰もが無理なく自然に片付けやすい仕組みができます。
法則その②物の住所を決める
家族が共用するものは、物の住所(定位置)を決めておきます。片付けた人だけでなく、家族全員が物の住所を把握できていると、家事をシェアするのにも役立つ上、行方不明や出しっぱなしも減って片付けが格段に楽になります。物の住所を決めるときのポイントは2つです。
使用頻度の高いものを「ハンディゾーン」に収納する
頻繁に使うものを遠くに置くと、しまうのが面倒になり出しっぱなしの原因に。手が自然に届くハンディゾーン(手を上下30度に伸ばしたときに届く範囲)に使用頻度の高いものを収納すると出し入れしやすく、探す人にとっても直感的に到達できますよ。
しまう負荷を減らす「ワンアクション」収納
家族みんながよく使うものは「引き出すだけ」「開けるだけ」といったワンアクション収納を心がけます。かごに入れて、さらに戸棚の中にしまうといった2段階になると、その手間が億劫になって出しっぱなしになりやすいです。
法則その③「隠す収納」と「見せる収納」を使い分ける
色や形の不揃いな物、生活感の出やすい物は戸棚など扉をつけて「隠す収納」にする一方、美しい物・好きな物、来客が見ても差し支えない物などは「見せる収納」でディスプレイすればインテリアの一部にもなるのでおすすめです。
見せる収納のコツ
素敵な写真集やオブジェ、食器、ワインなどの大切なコレクションは、しまい込まずに見せる収納で飾りましょう。上手に「見せる」コツは、ぎっしりと詰め込み過ぎないこと。ブックエンドなどの収納小物の色や素材を、部屋の家具や雰囲気に合わせるとインテリアと調和します。
法則その④「リバウンド」しないよう整理し続ける
実際に住み始めると、年月とともに物が増えて雑然としてくるのが必定です。「リバウンド」しないためのポイントをお伝えします。
「4分の1」の不要品を整理する
家にある物の4分の1は要らない物だと言われます。「要る or 要らない」で分けるのではなく、「使う or 使わない」の二択で仕分けして、一定期間使っていない物は手放します。さらに、使う物を「よく使う or ときどき使う」で分け、使用頻度に応じて収納場所を見直しましょう。
7〜8割の収納を心がける
出し入れしやすい物の量は、収納場所の広さに対して7〜8割程度と言われます。少し余裕を持たせることで、出し入れがしやすくなり、整理整頓された状態がキープしやすくなります。
収納場所を常に見直してアップデートする
ライフスタイルの変化や子どもの成長などで収納する物の量や種類、使用頻度は変わるため、常に使いやすくなるよう、収納場所や収納方法を見直していくことも必要です。
長年の習慣や、「普通はこうするもの」といった固定概念にとらわれずに動線主体で考えると、使いやすい収納になります。例えば洗濯物を畳むというルーティン。洗濯物を干して畳んで収納する場所が1カ所に集約されたファミリーユーティリティがあれば、ハンガーで干して乾いたらそのままクローゼットに吊るすだけ。しわになりにくい衣類は個人別に用意したカゴに入れるだけにして各自で畳んでもらうようにすれば、誰か一人に家事の負担がかかることもなくなるでしょう。
このように、普段の「当たり前」を見直すことで、家事の手間を減らすと同時に片付けやすい家にも近づきます。家づくりの打ち合わせでは、「どのような収納をつくるか」ではなく、「どんな暮らしがしたいか」という根本的なところから、コーディネーターにご相談ください。あなたにふさわしい解決方法がきっと見つかるはずです。
くつろぐためのインテリアの法則