「新しい家はどんなインテリアにしようかな?」と想像するのは、
家づくりにおいてもっともワクワクする瞬間のひとつ。
一方で、「失敗したらどうしよう…」と大いに迷う部分でもあります。
でも大丈夫。
インテリアには、これさえ守れば居心地のいい空間ができる、一定の法則があるのです。
この連載では、ダイワハウスのインテリアコーディネーターが
「長く住み続けられて、心からくつろげる家」にするためのインテリアの法則を、
照明・収納・家具・色彩計画などテーマ別にご紹介していきます。
6回目のテーマはキッチン計画です。
キッチンスペシャリストの資格を持つ
エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)松成志磨子が
「くつろぐためのキッチン計画」をレクチャーします。
Profile
大和ハウス工業 山口支店 住宅設計課
インテリアコーディネーター 二級建築士 キッチンスペシャリスト
エコピープル(eco検定®合格者) エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)
松成 志磨子
お客さまの住まいづくりに対するご要望を丁寧にお伺いし、その想いに寄り添いつつ全体のバランスを見ながらプロとしてプラスアルファのご提案を差し上げます。細部まで考えられた空間は『居心地の良い暮らし』に繋がります。自分たちらしい暮らしや心地良い時間、心豊かな日々が送れるように、インテリアだけでなくライフスタイルも含めたトータルコーディネートをご提案いたします。
はじめに使いやすく、お気に入りのキッチンは
くつろぎの時間を生み出す
家で過ごす時間が長くなり、家族で食卓を囲んだり、一緒に料理をしたりする機会が増えた人も多いのではないでしょうか。キッチンに立つ時間もその分長くなったので、キッチンの使いやすさはおうち時間の快適さを左右すると言えるでしょう。
調理しやすく、後片付けがしやすいキッチンは、家事の負担軽減につながり、結果的にくつろぎの時間を生み出してくれます。また、キッチンをお気に入りの空間につくり上げていけば、そこで過ごす時間そのものが「作業の時間」から、「くつろぎの時間」へと変わります。
「作業効率を高めてくつろぎの時間を捻出する」「キッチン自体をくつろぎの空間にする」。そんな2つの側面から、快適なキッチンをつくるポイントを解説します。
法則その①収納は取り出しやすく、しまいやすいレイアウトに
限られたスペースに、様々な形状のモノがおさめられているキッチンは、しっかりと収納計画を考えておかないと乱雑になりがちな場所です。すでに持っているモノの量や形、使われ方なども考慮しつつ、これから新たに加えたいモノも想像しながら、キッチンの収納スペースが足りるかどうかを細かく確認して、収納計画を立てます。
普段使いの食器は引き出し収納に
普段使いの食器は、立ったまま楽な姿勢で手が届く高さに収納すると取り出しやすく、しまいやすいです。また、引き出しタイプの収納なら奥にしまってある物まで一目瞭然で見やすいのが特徴。引き出し収納を取り付ける際は上から中を見渡せるよう、床から1mくらいまでの範囲が適しています。
奥行きのある開き戸タイプの収納には使用頻度の低いアイテムをしまうといいでしょう。手前のモノを動かさないと奥のモノが見えないため、市販品の取っ手つき収納ケースを利用するなどしてモノのしまい方を工夫しましょう。
フライパンはコンロ下、鍋やボウルはシンク下
鍋・ボウルとフライパンはなんとなく一緒にしまうことが多いかもしれませんが、鍋は水を入れてから火にかける動作が必要になるので、料理の下ごしらえ用に使うボウルと共にシンク下に、フライパンはコンロ下にと分けるのも一つのアイデアです。動線主体で収納場所を考えていくと、無駄な動きを減らせて家事ストレスが軽減できます。
調理家電は使用頻度に応じて設置場所を計画
電子レンジや炊飯器、トースター、コーヒーメーカー、電気圧力鍋、フードプロセッサー、ホームベーカリーなど普段使用する調理家電や器具は、サービスカウンター上にそのまま設置するもの、取り出しやすい場所にしまうものなどに分け、それぞれの寸法を測って設置スペースを決めていきましょう。使いたい場所に合わせてコンセントを計画するのも忘れずに。
パントリーは扉の使い勝手も考慮して選ぶ
パントリーの配置パターン
戸棚タイプ
ウォークインタイプ
ウォークスルータイプ
パントリー(食品庫)には戸棚タイプ、ウォークインタイプ、ウォークスルータイプなどがあり、必要な収納量などから選びましょう。また一般的なのは戸棚タイプですが、細かいところでは扉の形状も使い勝手を左右するので吟味しましょう。たとえば折れ戸は奥行きが限られた場所でもコンパクトに開け閉めできますが、扉をたたんだときに「扉だまり」ができるので、出し入れの際に間口がやや狭くなります。しまいたいものや、自分の動作を具体的に想像しておくと、使いやすいパントリーになります。
法則その②家事をシェアする想定で寸法を考える
夫婦や家族で家事をシェアする機会が増え、複数人でキッチンに立つことも増えています。全方向から囲めるアイランド型や、左右一方だけが壁に接したペニンシュラ型のキッチンも選ばれています。カウンターキッチンの奥行きも、複数の人が同時に作業できるよう、標準サイズの65cmより32cm広い97cmの奥行きを選んだり、誰かが作業しているときにも後ろを通れるよう通路幅を広めに設計したりもできます。
キッチンの高さは、メインに使う人が無理のない高さで、さらにキッチンを使うご家族にも使いやすい高さにしておくのもいいでしょう。
法則その③掃除しやすい素材を選ぶ
キッチンは家の中でも特に汚れやすく、ニオイもつきやすい場所です。汚れたらすぐに拭き取ることは基本ですが、あらかじめ油はねや汚れに強い壁材や床材などを選んでおくことで掃除がしやすくなります。
キッチンのワークトップ(天板)の素材は人工大理石やステンレスなどが主流ですが、最近はセラミックも人気です。人工大理石よりも熱や傷に強く、汚れが染み込みにくいのでお手入れもラクです。
キッチンのニオイ対策には他にも、機能性の高いレンジフードを選ぶ、換気ができる小窓を設計する、勝手口ドアを採風タイプにするといった方法もあります。
法則その④キッチンをくつろぎ空間に変えるアイデア
毎日のご飯をつくり、片付けをするキッチンは、長い時間を過ごす場所です。キッチンをくつろぎの空間に変えるアイデアをご紹介します。
気持ちがポジティブになるデザインを選ぶ
お気に入りの色やデザインのキッチンなら、家事のやる気もアップするもの。システムキッチンの扉の面材や取っ手をお気に入りの色・デザインにしたり、キッチン・収納の壁面にアクセントタイルをあしらったりするのも人気です。
メーカーのシステムキッチンのカラー展開も幅広くなっています。床や建具の色と揃える木目調も人気ですが、ブラックやグレー系といったスタイリッシュなカラーの面材と組み合わせるスタイルも増えています。LDKの空間全体でトータルカラーコーディネートするのが素敵です。グリーンや小物など、あとから配置するものも想定して、自分好みのキッチンをつくり上げましょう。
キッチン照明にもこだわる
カウンターキッチンの上部からデザイン性の高いペンダントライトを吊り下げたり、キッチンの天井や背面収納壁面に間接照明を取り入れたりすることもできます。作業に必要な明るさは確保しつつ、キッチンに立つのが楽しみになるようなさまざまな光の演出が可能です。
見せる収納
キッチンの背面の壁にオープンの収納棚を取り付けて、お気に入りのコーヒーカップや小物などを飾って「見せる収納」を楽しむ方法もあります。
生活感のあるものを隠す
リビング・ダイニングからキッチンが見える間取りは多いですが、冷蔵庫やごみ箱、電子レンジなどのアイテムを見えないように配置すると生活感が出にくくなります。特に冷蔵庫は存在感があるので、キッチンの奥に配置したり、引き戸をつけて食器棚と一緒に隠したりする方法がおすすめです。
家づくりにおいて、キッチンの間取りが決定して、設備や仕様を決める段階になっても「やっぱり平面プランのこの部分を変えたい」という話が出てくることも少なくありません。そんな場合でも、設計士とコーディネーターが連携しながら、お客さまのご要望を叶える形をご提案できるのは、住宅メーカーの強みです。お客さまのご要望を細かくヒアリングして、ご満足いただけるキッチンをご提案いたします。ぜひ納得のいくまでご相談ください。
くつろぐためのインテリアの法則