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生活を考える

志賀直哉旧居に見る
「窓」の有効なつくり方

明治から昭和初期に活躍し、「小説の神様」と呼ばれた作家・志賀直哉。
彼が壮年期の約9年間を過ごした家が奈良県高畑町に現在も残されています。
自然との一体感や、家族への思いやり、来客への配慮を大切にした工夫の数々を
さまざまな「窓」に着目してご紹介します。

大作家が奈良に残した「美術作品」

志賀直哉旧居がたたずむ奈良県高畑町は、歴史ある文化財や豊かな原始林が残る奈良の中でも特に風光明媚な場所で、作曲家や洋画家などの芸術家が多く住んでいた地域です。春日の杜の新緑や静寂のもとで自らの仕事を深めたいという思いがあったのでしょう。一生に23回も転居を繰り返した引っ越し好きの志賀直哉でしたが、1929(昭和4)年~1938(昭和13)年まで、家族とともに長くこの地で暮らしました。

特筆すべきは、作家自身がこの家を設計したということ。施工は京都の一流数寄屋大工が手掛けました。建物は数寄屋風でありながら、洋風の仕様や当時最新の設備も多数取り入れられた和洋折衷のデザイン。余計な装飾を省いた合理的な建物の芸術性に、本質を見抜き、簡素な文章で人の心情を描写する作風を重ね合わせることができます。

敷地面積は約435坪。床面積約134坪の建物は、前庭、中庭、裏庭という3つの庭に囲まれるように建ち、春日山の原始林とのつながりも感じさせます。暮らしの中で庭の様子や遠くの山々の景色を眺めたり、庭に訪れる野鳥や虫たちの気配を感じ取ったり、自然の風を室内に取り込んだりすることを意識して計画したことが、「窓」や間取りの工夫から見てとれます。

住宅街の一角にたたずむ志賀直哉旧居。昭和53年より学校法人奈良学園が管理し、セミナーや地域文化活動の拠点として利用しています。土塀の外から見ると建物の一部のみが目に入り、全体像は見えません。奥に進むにつれ、その広さや室内の開放感に驚く見学者も多いのだそう。

数寄屋門をくぐり、石畳を歩いて緑の木立の間を進んでいくと、奥に玄関が見えてきます。

光のもとに文人墨客が集う「高畑サロン」

建物中心に据えられた約20帖の食堂は、南北に大きくとった開口部から心地良い風が吹き抜けて、夏でもさわやかな居心地。ここは親友の武者小路実篤や谷崎潤一郎など名だたる文化人が集った文化活動の場でもあり、家族の団らんの場でもありました。志賀邸には近隣に暮らす文化人や白樺派の仲間が集まっては芸術談義に花を咲かせたことから、当時「高畑サロン」とも呼ばれていたそうです。作家を慕って訪れる人を分け隔てなく迎え入れるマインドを表わすかのような、心地良い開放感のある空間です。

1階の食堂。写真の左手は廊下越しに中庭に面しています。右手の出窓の向こうがサンルーム。それぞれの壁の上部には、最大限に通風を高めるための雲障子が設けられています。

※雲障子…鴨居の上に設けられた、採光や通風のための小さな障子。

1階サンルーム。大きな天窓と黒い瓦敷きの床がモダンな空間です。右手の窓の先に見えるのは広大な裏庭。ここに集った人々は、芸術や人生を論じたり、麻雀、囲碁、トランプなどに興じたりしながら交流を深めました。

食堂の南側に隣接してサンルームも設けられています。家人はベランダと呼んでいた部屋で、大きな天窓から陽光がたっぷり降り注いで、自然の中にいるような雰囲気。また、サンルームと食堂の間には出窓とカウンターが設けられた、ユニークな造りになっています。

出窓上部の面にもガラスをはめ込むこだわりよう。天窓からの光がガラス越しに食堂まで届きます。

裏庭に面した大きな窓のそばには、当時から使われていた三つ葉の形のコーヒーテーブルと、椅子が2脚。芝生の緑が美しく目に映ります。

サンルームの北側は、妻の部屋の広縁につながっています。茶室を思わせる躙り口(にじりぐち)の上には、壁の内と外をつなぐ小さな下地窓があり、パブリックとプライベートの空間を完全に区切らずゆるやかに分けています。
妻の部屋をサンルームの隣に設けたのは、妻にも高畑サロンの集まりに気兼ねなく参加してほしいという意図があったのかもしれません。

※下地窓…土壁の一部に塗りを施さず、竹などを編んだ下地を露出させる窓のこと。茶室に多く用いられる。

妻の部屋の広縁につながる躙り口。自然なアーチを描く広葉樹の梁が印象的。

妻の部屋の広縁側からサンルームを見たところ。

「窓からの景色」というおもてなし

2階の客間は、滞在する人への配慮が感じられる特別なビュースポット。雪見障子を開放すれば、北東に若草山や御蓋山(みかさやま)を望み、眼下に裏庭の池も見ることができます。季節ごとに変化する美しい景色こそが、志賀直哉が客人のために用意した最高の贈り物だったといえるでしょう。

周囲の山々を借景に、自然との一体感を考えて設計された客間。景色をできるだけ取り込むため、窓下(そうか)の部分がかなり狭く設計されています。

北側の窓から前庭の池を見下ろしたところ。
虫やカエルや野鳥など多様な生き物が訪れます。

前庭から眺めた客間部分の外観。

客間の隅には和室らしい丸窓と地袋があります。丸窓の底部が欠けているのは、千利休が唱えた「不完全の美」(不完全な中に美しさがあるとする考え方)を表現したものともいわれています。格子の向こうには、美しい槙の木のある風景がうかがえます。

和の趣ただよう丸窓が槙の木のある景色を切り取って、生きた絵画のよう。

あの名作が生まれた、大作家の仕事場

志賀直哉は1階北側の、落ち着いた光を得られる位置に自身の書斎を設けました。北側と東側に開いた腰高の窓が前庭の緑の風景を切り取り、まるで風景画のような眺めです。窓を閉じているときにも光を取り込めるように、窓上部には角に丸みをつけた雲障子がしつらえられました。

1階の書斎。美しい風景に包まれて作品の構想を練ったり、執筆の合間に緑を眺めて目を休ませたりしていたのでしょうか。

冬場に南から暖かな陽が入る2階の書斎。二月堂机は当時から作家が愛用していたもの。

前述の2階客間の隣には、もともとはもう一つの客間として使っていた南東向きの和室があります。1階の北向きの書斎が寒いと感じるようになると、志賀直哉は執筆の場所をこの部屋に移しました。かの有名な『暗夜行路』の後編は、この部屋で書き上げたのだとか。こちらの部屋の窓からも、槙の木の風雅な景色が楽しめます。

家族への思いが表れた窓、窓、窓

生涯に8人の子どもをもうけた志賀直哉は、家族思いのお父さんでもありました。子どもたちの成長をうながすような勉強部屋や寝室をつくり、そばで見守っていた様子が間取りからうかがえます。
また、妻のためには、敷地の中で一番居心地の良い南向きの場所に部屋を用意しました。

子どもたちが元気いっぱいに過ごせるように、勉強部屋はコルク敷きの床や腰板付きの壁で構成。庭に出やすいように床を一段下げる心遣いも。

子どもたちの勉強部屋と志賀直哉の居間の間に設けられた床格子。さりげなくわが子の様子を見守る目的と、通風を高める狙いがあったのでしょう。

妻の部屋から見た裏庭。青々と生い茂る裏庭の樹々や芝生を広縁越しに眺めることができます。広縁の右側はサンルームと、左側は子どもたちの勉強部屋とつながっています。

裏庭から見た建物。中央の大木より左側がサンルーム、右側が妻の部屋と子どもたちの勉強部屋です。

1階の書斎の隣に位置する茶室は6帖の広さがあり、南側の掃き出し窓で中庭に面しています。数寄屋大工が腕をふるった本格的な意匠の茶室ですが、志賀直哉本人は茶の湯はしいて嗜まず、妻や娘たちが茶道のお稽古に活用していたのだそう。

貴人口の腰板障子は三枚引き戸。竹の化粧桁を用いた茶室らしい軒天がのぞいています。

腰板障子を開放すると、中庭の景色と袖壁が見えます。

北側の地袋の上にも下地窓があり、自然光が手元をやさしく照らします。

路地(中庭)側から見た茶室の様子。

掃き出し窓や雲障子、天窓や下地窓など、さまざまな「窓」によって自然との一体感や家族のつながりを高める工夫に満ちた志賀直哉旧居。現代の私たちの住まいづくりにも大いに参考になりそうです。
奈良を旅する機会があれば、作家の思いが詰まった旧居を訪ねてみませんか。

Profile

志賀直哉(しが なおや)1883-1971

宮城県石巻町生まれ。学習院高等科を経て東京帝国大学文学部を中退。1910(明治43)年、武者小路実篤、里見弴、有島武郎、柳宗悦らと同人雑誌『白樺』を創刊。その無駄のない文章は、小説文体の理想として高く評価されている。1949(昭和24)年 文化勲章受章。代表作は『小僧の神様』『城の崎にて』『暗夜行路』など。

取材撮影協力

邸名 学校法人奈良学園セミナーハウス
志賀直哉旧居
所在地 〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1237-2
TEL 0742-26-6490
URL https://www.naragakuen.jp/sgnoy/
休館日 年末年始(12/28~1/5)
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