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コラム No.140-12

CREコラム

脱炭素社会と不動産(12)CO2削減

公開日:2023/12/26

脱炭素社会実現には2つの狙いがあります。二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにして地球環境を改善すること、CO2を生み出す燃料の枯渇を最大限遅らせることです。この2つの課題に対して不動産市場の中で貢献できることを考えます。

「実質ゼロ」が持つ意味とは?

脱炭素とは、環境破壊をもたらす地球温暖化の原因となる「温室効果ガス」の代表格、二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにすることです。この「実質」の部分がポイントです。

日常の消費生活や企業の生産活動などさまざまな場面でCO2は排出されますが、現実的には地球上からCO2排出を完全になくすことは困難。そこで省エネや再エネで排出をできる限り低減させたり、排出したCO2を森林などに蓄えてもらうなどして「吸収」(回収)させるカーボンニュートラルなどの手法を使い、ゼロに近づけます。これが「実質」の言葉が持つニュアンスだと言えます。

プラスチック製品を減らす取り組みの一環として、スーパーやコンビニなど小売店舗でレジ袋を有料化するようになりました。利用者によっては手提げ袋の用意がなく、その場で購入する人がいます。店舗としても利便性の観点からレジ袋を置かないわけにはいきません。プラスチックゼロはなかなか難しいのが実情。しかし一人でも多くの消費者が「プラスチックは石油で作られるので、利用すればするほどCO2排出に繋がる。しかし、利用しなければCO2削減になる」と認識できれば、プラスチックの使用量は低減されます。「実質ゼロ」は地道な取り組みといえるでしょう。

化石燃料の枯渇リスクがある

「脱炭素」の意義はもうひとつ。化石燃料の枯渇をできるだけ遅らせることです。
CO2は石炭や石油、液化天然ガスなどの化石燃料を使うことで発生し、大気中に排出されます。エネルギー資源である化石燃料を現状のペースで使い続けると、やがてなくなってしまう可能性があります。

化石燃料とは、地下に埋もれている燃料資源のこと。数千万年以上前に生息していた生物の死骸が海底に沈み、微生物によって分解されたのち地熱で温められているうちに燃えやすい成分に変化したといわれています。こうした過程が「化石」の生成過程と似ていることから「化石燃料」と呼ばれています。

経済産業省・資源エネルギーが作成した「エネルギー白書2022」によると、石油の埋蔵量はこのまま採掘すると約50年後には底を突くと予測しています。このため、化石燃料の使用量を低減させる(省エネ)、あるいは代替エネルギー(再生エネルギー)を使うことが求められています。

脱炭素社会実現における「環境不動産」の役割

国土交通省「環境価値を重視した不動産市場形成にむけて」によると、不動産分野(業務部門や住宅部門)におけるCO2排出量は、日本全体のCO2排出量の3分の1を占め、増加基調にあるとされています。ビルやマンション、工場などの建設・解体工事で発生するものや、建築物に居住している人や企業が使うエネルギー消費でCO2は膨大な量にのぼります。国土交通省は、不動産・建築業界が脱炭素社会実現のために果たすべき役割について、「持続可能な環境価値の高い不動産のストックを形成していくことが重要だ」と指摘しています。そしてこの不動産を「環境不動産」と呼んでいます。
環境不動産は、省エネ設計など環境価値の高い不動産を指します。脱炭素の側面から見ると、CO2削減を目的にした省エネ・再エネが主軸になっています。CO2排出の大きな要素であるエネルギーの発生を低減または代替させることが環境不動産の大きなテーマのひとつです。

近年はオフィスビルのテナントやマンションで、電力消費量を実質ゼロに抑えるZEB(Net Zero Energy Building=ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)やZEH(Net Zero Energy House=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のニーズが拡大。太陽光発電などの再エネ設備に対する国や自治体の補助金、支援制度も充実してきました。
省エネは個人、法人ともに節約や環境改善の意識が向上するに連れて恒常化していると思われます。省エネが製品評価の中軸になり、家電選びでは省エネが最優先事項にもなっています。

しかしエネルギーの低減で脱炭素を目指すには限界があります。脱炭素の大きな担い手は再生エネルギー。現在開発または利用が進んでいる再エネは、①太陽光②風力③水力④バイオマス⑤地熱――など。発電設備の建築や管理のコスト、自然の力(風向きや風速など)を利用する安定供給の問題もあり、一朝一夕に推進できるとは限りません。水素やアンモニア、波力や潮の流れを利用する「波力発電」「潮流発電」など海洋環境を資源とするエネルギーも研究途上にあるといわれています。再エネの利活用が進むには、超えるべき課題が少なくないようです。

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