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コラム No.29-4

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不動産証券化のトレンドを追う第4回 地銀が地方創生で不動産証券化に意欲

公開日:2017/04/14

地方銀行が不動産証券化を使って地域活性化を図ろうとしています。国が進める「地方創生」推進の観点から、市街地の開発や不動産の有効活用に関して、金融サービスの一環として自治体に不動産証券化の手法を提案するもようです。

地方創生で連携協定相次ぐ

昨年7月、名古屋銀行と瀬戸信用金庫は地方創生に関して連携協定を結びました。互いの営業基盤や情報、ノウハウを活用して、自治体とともに街づくりや地域の活性化を推進していくことで合意しました。

名古屋銀行は第二地銀41行中第4位で、預金量3兆円を超える上位行。瀬戸信金は265信金中、第12位。預金量1.8兆円と業界大手です。中京地区で固い営業基盤を持つ2つの地域金融機関が手を結んで、地域振興策を実現していく狙いがあります。そのなかには、老朽化した自治体所有の公的施設を不動産証券化の手法を使って再生するなどの金融サービスを提供することも盛り込まれているようです。

同年9月には、地銀64行中第10位の八十二銀行(本店・長野市)が、三菱東京UFJ銀行など三菱系の金融4社と三菱地所の計5社と、地方創生に関する連携協定を締結しました。八十二銀行は三菱東京UFJ銀行の友好地銀の一角で、三菱東京UFJ銀は競合しないよう長野県内には支店を設置していないほど、格別の配慮をしている間柄でもあります。そこに三菱UFJ信託銀行、東京海上日動火災、明治安田生命、三菱地所というそれぞれの業界で大手企業が加わるのですから、異例の提携といっても過言ではありません。これには何か大きな背景があるのではないかと思わせます。

東京五輪の次は、リニア中央新幹線

この2つの連携協定の裏には、2027年の開業に向けて工事が進んでいるリニア中央新幹線があります。リニア中央新幹線は、品川から相模原、甲府、飯田、中津川(岐阜県)の各都市を経て名古屋(新大阪までの停車駅は現在計画中)をつなぐ路線が決まっています。首都圏から中京圏への先行開業は、各地で大きな経済効果を生むと期待されており、地方創生と連動した動きが活発になっているのです。

2020年東京五輪の次にやってくる国家プロジェクトは、2027年開業のリニア中央新幹線だ・・・。

リニア中央新幹線は10年後の開業を目指しています。3年後の2020年東京五輪のあとに到来する一大プロジェクトとして、沿線の自治体と地銀は取り組みを急ピッチで加速しています。リニア中央新幹線の停車駅で見ると、名古屋銀行は中津川、名古屋の2駅、八十二銀行は飯田市が営業エリア内に入ります。とくに八十二銀行は三菱地所という不動産大手と組むことで、リニア中央新幹線の駅舎建設を軸にした飯田市全体の再開発事業に地銀として関わっていきたいとの思いがあると見られます。

一方、メガバンクの三菱東京UFJ銀行も、リニア央新幹線では友好地銀とのパイプを通して、“リニアビジネス”を展開していく狙いがあります。八十二銀行と協定を結ぶ1か月前、山梨中央銀行と地方創生に関する連携協定を締結しました。山梨中央銀も三菱東京UFJ銀の友好地銀であり、リニア中央新幹線では甲府に新駅が開業する予定です。銀行業界ナンバーワンのメガバンクはそもそも、こうした地域経済における格好のビジネスチャンスに力を発揮するために、地銀との関係を重視してきたのです。

とはいえ、地方に証券化の担い手は少ない

地方が元気を取り戻し、高齢化や人口減少に負けない街づくりを推進していくには、土地の有効活用を促す不動産証券化は大きな武器になると思われます。品川-名古屋間を最速40分で結ぶ次代の新幹線が開通すれば、リニア新駅を核にした市街地の再開発は活発になることが予想されます。そこでは、新たな資金調達手段として、あるいはまた既存の不動産の有効活用策として不動産証券化がクローズアップされるのは間違いありません。

ところが、その手法を理解し役立てる担い手は、地方ではまだ少ないようです。国土交通省が一昨年から始めている「地方都市の不動産ファイナンスによる環境整備」の議論でも、この点が指摘されています。国交省は、不動産証券化の手法を導入して地方都市での資金循環を改善し地域活性化を推進する狙いから、「地方都市不動産ファイナンス協議会」を京都、新潟、長野、熊本など全国11都市で開催しました。各地の協議会では、築数十年の物件をまとめてリノベーションする際の資金調達方法や、社員寮の建設に不動産証券化を活用した整備・運営についての相談などが話し合われました。

地方都市不動産ファイナンス協議会の機能・役割

出典:地方都市の不動産ファイナンス協議会実施状況(国土交通省 土地・建設産業局 平成27年12月8日)より一部抜粋

ここで課題になったのは、プレーヤーとなる人材です。地方都市には不動産証券化に関わる案件が少ないので、この分野の専門家は大都市に集中し、地方では不動産証券化の担い手が不足しています。また、地銀などの地域金融機関では、案件が少ないためノンリコースローンなどの検討を行う人材や体制が整っていません。

しかし、地方における不動産証券化の担い手不足は、冒頭に紹介したように、地銀などの地域金融機関がメガバンクなどと連携し、徐々にそのノウハウを蓄積していくことで改善されていくと思われます。こうした提携は、国交省が進めてきた、不動産ファイナンスによる環境整備の一つの成果かもしれません。リニア中央新幹線などの一大プロジェクトが本格化すれば、リニア新駅を軸にした都市再開発事業は本格化します。そのとき、不動産証券化は多くの地方都市で盛んに活用されるのではないでしょうか。

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