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コラム No.38-2

PREコラム

「空き家問題の解決は地域の活性化を生む」(2)国や自治体の空き家対策

公開日:2017/11/30

POINT!

・国は平成26年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を策定

・自治体は最終手段として強制的な対応が可能となった

「空き家問題」を解決し不動産を有効活用することは、地域の再生には不可欠な課題となっています。これに対して、国や自治体は、近年、さまざまな政策を打ち出し、地域においても国の空き家対策に関するガイドラインに沿って、自治体独自の取り組みを進めているところです。

国や自治体における、空き家問題対策

空き家の増加により、特に地方において社会問題化していることを受けて、国は、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を策定し、平成27年度から施行されました。この政策では、空き家全般について、以下のような施策を打ち出しています。

  • (1)国は、空き家等に関する施策の基本指針(ガイドライン)を策定する
  • (2)市町村は、国の基本指針に即した空き家等対策計画を策定し、協議会を設置する
  • (3)都道府県は、市町村に対して技術的な助言、市町村間の連絡調整等の援助を行う
  • (4)市町村が行う空き家等対策の円滑な実施のために、国及び地方公共団体による空き家等に関する施策の実施に要する費用に対する財政支援や税制上の措置を行う

そのうえで、市町村は以下の対を実施することとなっています。

  • ・空き家等への調査を行う
  • ・空き家等の所有者等を把握するために固定資産税情報の内部利用等が可能である
  • ・市町村は、空き家等に関するデータベースの整備等を行うよう努力する
  • ・市町村による空き家等及びその跡地に関する情報の提供その他これらの活用のための対策を実施する

この政策により、問題化していたとはいえ対応が遅れていた空き家の課題が整理され、対策が義務化されたことで、地域での対応が大きく前進しています。最近、市町村等地方自治体で、「空き家バンク」の整備や、空き家に関する相談窓口の開設、Webによる情報提供などが活発になっているのは、この政策の効果であるといえます。
そしてもう1つ、この政策の特徴は、特に地域に対して悪影響が大きい空き家を「特定空き家等」として、定義しているところにあります。その判断基準となる要件は、以下のようなものです。

  • (1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • (2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • (3)適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
  • (4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

少し定義が抽象的で、空き家の立地場所や周辺の密集度、地域住民の関心度などで地域ごとに異なる判断があり、基準設定が難しそうですが、この「特定空き家等」に指定されると、自治体は最終手段として、立入調査や指導→勧告→命令→行政代執行という、強制的な対応が可能となりました。

地域の自治体における空き家対策

国の「空家等対策の推進に関する特別措置法」を受けて、地域の自治体は、空き家対策協議会を立ち上げ、空き家対策に関する実施計画を策定しています。空き家バンク等の情報提供を活発化させていることは前述しましたが、具体的な対応策は以下のような手順のようです。

(1)空き家の所有者の特定

ほとんどの場合は、登記簿上の所有者が生存していると考えられるので、特定は簡単そうですが、所有者が死亡している場合は、相続人を探さなくてはなりません。固定資産税の納入者が特定できる場合などは、相続人を特定できそうですが、登記から相当の年数が経過していたり、元所有者の相続権者が多数に及ぶ場合などは、相続人が確定するまで待たなければいけないようなケースも少なくないようです。

(2)空き家の所有者不明が確定する場合

所有権を公的に帰属させ、除去することになります。

(3)空き家の所有者が明確な場合

所有者が何の対策も講じる意思がない場合は、「特定空き家」として強制的に除去される可能性があります。しかし、所有者による維持管理が難しい場合でも、多くは、所有者と調整のうえ、民間あるいは公的セクターへの賃貸・売却等が考えられます。また、再生が可能な物件に関しては、民間あるいは官民連携によりリフォームやリノベーションを行い、地域活性化に向けて、利活用することになるでしょう。この空き家の利活用による地域再生への取り組みがこのコラムのテーマですが、その前に、地域における「まちづくり」の取り組みも見てみる必要があります。

地方再生には、地域都市機能のコンパクト化が課題

そもそも、空き家問題の根本には、地方における少子高齢化と人口の減少があります。戦後、人口増加と高度経済成長によって膨張した各地域の都市機能は、人口の減少により、一地域住民の生活環境としてはオーバーサイズとなっています。それが、地方都市エリアに空き家が点在する今の状況を生み出しているといえます。
国や自治体は、効率的な住民サービスの実現と、住民の生活基盤の再整備に向けて、都市機能のコンパクト化を推進しています。コンパクト化といっても、地域にある生活・産業基盤を全て1カ所に集約することは、不可能に近いことです。
そこで、まずは地域を機能ごとにゾーニングして、各ゾーンをネットワーク化(鉄道や道路、交通機関、物流網等による結節)することで、地方都市の再生を目指しています。つまり、面で広がる大都市的な構造ではなく、ある程度集約した都市や集落を線で結んだ有機構造のような地域の再整備です。こうすることで、地域住民の地域全体における生活環境を維持・整備しようと考えています。このグランドデザインが地域再整備の上位構想ですので、当然、空き家に対する対応は、この計画に則した効果を期待しているはずです。
言い換えれば、「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、地方自治体が空き家を地域資源の一部として積極的に利活用することで、地域の再生に取り組むにあたっての、有効なツールを提供したともいえるでしょう。
地域再生・活性化のために、さまざまな形、規模で、空き家や空き店舗、遊休地や遊休物件再利用への取り組みを行っているところが全国にあります。
たとえば、子育てを終えた女性たちが、地域の街道沿いに点在する古くなった武家屋敷などを自治体の支援を受けて改装して、肩肘の張らない瀟洒(しょうしゃ)な食事処や雑貨店を運営することで、高齢者を中心に憩いの場を提供し、地域を活性化している取り組み。
過疎化した市街地調整区域の規制が緩和されたことを受けて、若者たちが、空き家を店舗に改装し、地域住民と協働で、地域の再生と自分たちの新しいライフスタイルを実現している取り組み。
商業地域の空き家や空き店舗を活用して、行政と連携して「居酒屋村」として小規模な再開発を行い、市街地の賑わい再生と新たな事業の創出を進めている取り組み。
これらの取り組みは、地域内外の女性や若者などの活動がきっかけとなり、地域住民や民間事業者、行政が連携して新たな街づくりを推進するモデル事例として、他の地域にとっても地域再生・再開発の参考となるでしょう。

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