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コラム No.39-4

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今仲清の事業承継シリーズ(4)2018年度税制改正で事業承継の条件緩和を計画

公開日:2018/01/31

日本の産業を支えている中小企業の事業承継をスムーズに行うために、政府・与党は2018年度税制改正で、承継する非上場株式のすべて(現在は3分の2)について贈与税・相続税を猶予し事業を継続する限り贈与税・相続税の納税を猶予するなど、事業承継の条件を緩和する計画です。それまでは現行の事業承継支援策、たとえば自社株式等の相続税の納税猶予制度などを活用することで、有利な事業承継が可能になります。

2018年度税制改正のポイント

「中小企業の承継、相続税を猶予政府・与党が廃業対策」と、『日本経済新聞』(2017年11月22日)で政府・与党が2018年度税制改正で、中小企業の世代交代を促すための税優遇を拡大すると報じられました。その背景には、現行の制度では全株式の3分の2について税額の8割が猶予の対象ですが、この制度を使っても相続した株式の税額のうち実質的に53%しか猶予されず、事業承継に二の足を踏むことも多かった点にあります。そこで、2018年税制改正案では、次のようなポイントで事業承継をスムーズに行えるよう支援する計画です。

  • ・猶予できる株数を「全株」に引き上げることで、贈与税の全額・相続税の株式評価対象分の全額が猶予されるようにする。
  • ・猶予条件を緩和する。現在は5年間で8割の雇用を維持できなければ、全額を納税する必要がありましたが、雇用計画策定などの条件をつけた上で雇用要件は原則として撤廃されます。
  • ・5年間の事業継続期間が終了した後に、贈与時点の評価額より低い金額で譲渡(M&A)した場合や、破産、精算、合併、株式交換等があったときは、その時点の評価額で相続税を再計算し、超える部分の猶予税額が免除されます。改正で自主廃業の場合も同様に取り扱われる予定です。
  • ・親族以外の経営者や外部の企業がM&Aにより経営を引き継いだ場合の登録免許税や不動産取得税の軽減なども検討します。

こうした一連の改正により、現在は年500件程度にとどまる事業承継税制の適用件数を2,100件以上に増やしたい考えです。

現行の相続税の優遇制度

税制が改正されるまで、現行の相続税の優遇制度が適用されますので、そのポイントをご紹介します。自社株式等の相続税の納税猶予額は、経営承継相続人が納税猶予の適用対象となる自社株式等の20%相当額のみを相続したものとして計算した相続税額を引いた金額とされます。ただし、納税猶予額は他の相続人の取得財産は変わらないことが条件となります。具体的には次の手順で計算します。

  1. (1)通常の相続税額の計算
    相続税の課税財産の合計から基礎控除を引いた金額を、実際に相続した財産ではなく、法定相続分によって取得したものとみなして相続税の総額を計算します。次に、実際に各人が取得した財産の割合で按分して各人の相続税額を算出します。
  2. (2)経営承継相続人以外の相続人の相続税の確定
    この段階で経営承継相続人以外の相続税額は確定します。それは、経営承継相続人以外の相続人の相続税には、非上場株式等の80%減額による税額減少の影響は及ばないからです。
  3. (3)経営承継相続人の納税猶予額の計算
    (1)経営承継相続人は納税猶予対象株式等のみを相続するものとして、他の相続人の取得財産を合算して相続税額を計算します。株式等の評価額から経営承継相続人が負担する債務(葬式費用含む)を控除して計算します。次の(2)も同様です。債務はまず「その他の財産」から控除します。
    (2)経営承継相続人は納税猶予対象株式等の20%相当額のみを相続したものとして、他の相続人の取得財産と合算して納税額を計算します。
    (3)上記(1)-(2)=経営承継相続人の納税猶予額となります。

【事例】2900万円納付すべきところ、1779万円余りで済むケース

事例で計算してみます。自社株式全て納税猶予の適用対象であるとします。財産は自社株式の評価額1億円、その他の財産2億円、合計3億円となります。相続人2人、会社を相続しない相続人Aがその他の財産1億5,000万円、経営承継相続人Bが1億円とその他財産5,000万円で、1億5,000万円を相続したものとします。

自社株式1億円+その他の財産2億円=3億円
配偶者はいない。子2人
相続人Aその他財産1億5,000万円
経営承継相続人B1億円+その他財産5,000万円

  1. (1)通常の相続税額の計算
    3億円から基礎控除(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)を差し引き、その法定相続分は1人当たり1億2,900万円となります。これに相続税を乗じて計算すると1人当たり3,460万円となります。相続人Aの税額は3,460万円で確定です。
  2. (2)経営承継相続人Bが自社株式のみを取得した場合の相続税額
    Bが自社株式のみを相続したとすると1億円となります。これに相続人Aの1億5,000万円の財産を加算して相続税を計算すると相続税の総額は4,200万円となり、これを全体の財産に対するBの自社株式の評価額で按分すると、Bの相続税額は1,968万円となります。
  3. (3)経営承継相続人Bが自社株式の20%相当額のみを取得した場合の相続税額
    Bが自社株式の20%だけを相続したとすると2,000万円となります。これに相続人Aの1億5,000万円の財産を加算して相続税を計算すると、相続税の総額は2,440万円となり、これを全体の財産に対するBの自社株式の20%の評価額で計算すると、相続税は287万円強となります。
  4. (4)納税猶予額の計算
    (2)の経営承継相続人Bの相続税額1,968万円から、(3)のBの相続税額約287万円を引いた約1,681万円弱が納税猶予額となります。
  5. (5)各人の納付税額
    結果として経営承継相続人Bの納付税額は3,460万円-1,681万円となり、約1779万円が納付税額となります。このように通常の納付税額よりも非常に低い相続税額の納付で会社の経営承継が可能になります。

事例1の計算

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