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コラム No.52-3

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プロパティマネジメントが不動産価値を上げる (3)プロパティマネジメントに欠かせない「ライフサイクルコスト」の考え方

公開日:2018/06/29

建築物のコストを考える場合、どうしても、最初にかかる建築費(イニシャルコスト)に目を奪われがちですが、現実の建築物は、何十年もの長期期間の寿命を持ちますから、初期投資の金額よりも、建設後のコストのほうが大きくなります。

建築物の一生のコストを考える

「ライフサイクルコスト」という言葉をご存知でしょうか?Life Cycle Cost(ライフサイクルコスト)の頭文字をとりLCCと呼ばれることも多いこの考え方は、建築物の一生すべてに関わるコストのことです。

当然、建築物は作っただけでは機能しません。まず水道光熱など、人が生活するためのエネルギー、設備(コスト)が必要です。そして、快適に使い続けるためのメンテナンス、セキュリティ、さらには、建築物がその役目を終えるときには、解体費用というコストがかかります。そうした建築物の誕生から最後までを含めた総コストをライフサイクルコストといい、建築物をプロパティ(資産)として捉えた場合は、非常に重要な観点となります。このライフサイクルコストをいかに効率的に管理するかは、プロパティマネジメントとして非常に重要な業務の一つです。

さまざまなライフサイクルコスト

ライフサイクルコストには、厳密にいえば、金利や物価変動の影響まで加味する必要があります。主な要素としては、以下の図で表したように、「建設費」「修繕費」「保全費」「運営費」「管理費他」などです。図は便宜上、同じウェートにしていますが、ケースによって異なります。細かく挙げれば、「水光熱費(上下水道代、電気代、ガス代など)」「保険(火災保険、地震保険など)」「税金(固定資産税など)」「更新費」「清掃費」「警備費(警備会社委託)」などがあります。

図:ライフサイクルコストの構成要素

建築物の耐用年数は用途や構造体によって異なりますが、一般的に40年から50年程度とされています。建築物の寿命が長いほど建築に関する費用のウエートが低くなり、運営維持に関する費用のウエートが増加していきます。つまり、長寿命の建築物を望むほど、運営維持の費用についてよく考えなければならないわけです。
建築費用以外の運営維持に関わる費用は、建築費の数倍以上かかるといわれていますから、企画段階から、将来的な水光熱費などの運営維持費や修繕費用などのコストについて検討しておきます。

ライフサイクルマネジメントによって資産価値の維持を図る

そして、このライフサイクルコストを効果的に削減しながら、建築物が生み出す価値を最大化するために、最適な管理を行っていくのが、ライフサイクルマネジメント(LCM)です。
「日本ファシリティマネジメント推進協会FMガイドブック」によれば、ライフサイクルマネジメントとは、「ファシリティの企画段階から、設計・建設・運営そして解体までのファシリティの生涯に着目して計画、管理を行う考え方。ファシリティに依存する効用の最大化、ライフサイクルコストの最適化、資源やエネルギー消費・環境負荷の最小化、障害や災害のリスクの最小化を目標とする」とあります。
建築物を資産としての価値を高めるためには、ライフサイクルマネジメント(LCM)の観点から、効果的な運用管理、修繕計画やリニューアル計画を行い、建築物の価値の保持、機能アップによる価値の向上を図る必要があるというわけです。プロパティマネジメントの観点からの、ライフサイクルマネジメントの具体的な手法としては、まずは現在、適切な施設維持管理がされているか、省エネルギーが適切かという調査、診断、分析から始まります。
その結果、「維持管理会社は適切か」「清掃、更新は容易か」「水光熱費は適切か(センサーや断熱仕様、深夜電力活用をどうするか)」などについて、検討が必要となるでしょう。また、過去の修繕工事を確認し、ライフサイクルコストの観点から、テナントのニーズに対応した「長寿命、高耐久の部材や機器の採用」「再生エネルギーの採用検討」などの費用対効果の高いリニューアル計画や改修計画、修繕計画の策定が必要となるかもしれません。
また、エネルギー施策に関しては、「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」や「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)などをはじめとして、さまざまな省エネルギーの施策が展開されており、建築物の評価、価値に直結しています。
こうしたライフサイクルコストの観点に立つと、建築物は、機能性はもちろん、耐久性や修繕・メンテナンスのしやすさなど、隠れた部分に大きな価値を持っています。たとえ、建築時点でコストを抑えることができたとしても、ライフサイクル(一生)として捉えることができないと、大きな損失につながりかねません。
ライフサイクルコストの理解と把握は、投資家のみならず、不動産ビジネスに関わる人たちの意思決定の大きな要素となっています。

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