CREコラム
不動産テック入門(13)「物件情報・メディア」
公開日:2020/08/31
消費者にとって住まいに関する質問や疑問、知りたい情報は数多くあります。各種の不動産サイトは住宅関連情報を居ながらにして提供してくれます。「不動産テック入門」の最終回は「物件情報・メディア」。各社は有益な情報をいち早く提供して「売る」「買う」「借りる」など多くの住関連ニーズに応えています。
圧倒的に多いマンションの物件情報
物件情報ではマンションに関するものが圧倒的に多く、新築・中古・賃貸ともに豊富な情報を蓄積しているサイトが少なくありません。仕組みはほぼ共通しています。都道府県別に物件を検索でき、知りたい地区をクリックすればさらに狭いエリアで検索対象が広がります。そして該当するマンションの新築・中古販売や賃貸物件の情報が検索結果の画面に表れます。
そこには専有面積から間取り、築年数などの基本情報をはじめ、スーパーや学校など周辺地域の情報も網羅されています。マンションごとにクチコミも掲載されているケースが多く、5つ星による評価を導入しているサイトが目立ちます。
クチコミに特化したWebサイトもあります。マンションの購入や賃貸を検討している人に対して、既に住んでいる人や住んだことがある人の多くが提供している情報です。住み心地や室内の施設の充実度など、不動産会社が提供する定性情報と異なり、実生活に即した意見が聞けるので、大変有益な情報サイトといえるのではないでしょうか。
ユーザーに役立つ「Q&Aコーナー」
あるマンション情報サイトでは、宅地建物取引士などの専門家によるQ&Aコーナーを検索形式にして設けており、会員にならなくても無料でその回答を見ることができます。住宅の購入は一生に一度の大きな買い物。また賃貸するにしても、いったん契約を交わせば、すぐに解約して引っ越すことは容易にできません。特に管理費用や修繕積立金、管理組合制度など、マンションの入居経験がない人にとっては聞きたいことが山ほどあります。
こうした悩みごとへの回答は、蓄積していけばほとんどの疑問・質問に対して答えることになり、サイト運営上効率的な仕組みだといえるでしょう。これはIT大手企業がサービス開始当初から展開してきたユーザーサービス手法の一つで、トラブル時における質問とその回答をあらかじめ用意しておくものです。該当しない場合や回答、解決策が見つからない場合には、新たに質問を設けて次の解決策を探る仕組みです。住宅・不動産情報に関する質問は、想定できるものが少なくありません。こうしたサービスもまた物件情報サイトの特徴といえるでしょう。
またこのサイトではブログ形式による専門家の物件訪問を掲載しています。実在するマンションの周辺を多くの画像と共に提供する連載企画で、マンション内部には入らずに、あくまで外見や周辺環境を「チラ見」するというコンセプト。最寄駅からマンションまでの風景を画像で紹介しており、面白い企画です。
図1:住宅・不動産情報満載の専門サイト
充実している住宅・不動産総合メディア
不動産業界は「売る」「買う」「建てる」「借りる」のほか、投資や税務対策などの業務や関連する法律や税制など、多種多様の情報で溢れています。これに加えて国の住宅振興策や再開発事業、さらには住宅着工統計や建築基準、国土開発など広大な裾野を持つ業種です。
住宅・不動産総合メディアは、消費者向けから不動産会社など法人向けのニュースを中心に不動産業界のあらゆる情報を網羅しており、その充実度には目を見張るものがあります。不動産の物件配布業から出発し既に半世紀以上の歴史を持つ老舗や、設立10年で上場を果たした新興企業、大手就職情報会社のグループ企業などが立ち上げたサイトがアクセス数を競っています。
地質、インテリア画像のSNSも
ユニークなサイトもあります。住所を検索窓に入力すると、土地の地盤を無料で回答してくれるサービスを提供している会社があります。地盤に適合した耐震住宅建築の資料として、また自宅の耐震性能を知る上でも有益な情報で、ハザードマップではわからない地盤や災害リスクについて点数評価しています。新築の戸建て住宅を建設する際には、地盤の基礎知識を得ることができて心強い味方になりそうです。
室内のインテリア画像を大量に紹介するSNSメディアもあります。例えば、「猛暑・紫外線対策」のテーマではブラインドやグリーン(観葉植物)で暑さをしのぐ画像が投稿されています。主にスマートフォンで撮影した画像とコメント、キーワードでサイトを構成しています。
不動産会社や住宅ローンの比較サイトもあります。これらのサイトは、利用者を不動産会社や銀行に紹介することで手数料を得るビジネスモデルです。
このように、2000年以降にインターネットが本格的に普及し、不動産情報を紹介するWebサイトは、様々なビジネスモデルを駆使しながら乱立していますが、すでに、所在地や価格、間取りなど定性情報を単に羅列するだけでは消費者の支持は得にくくなっている状況にあるといえます。
競合が激しい不動産情報サイトにおいては、新たなITの技術を活用しながら、消費者ニーズを満たす、きめ細かなサービスが求められているようです。