「消臭力」などでおなじみのエステーの研究員をお招きして、
家のニオイの解決策を探っていく特集の最終回。
今回は家事代行サービス・ハウスクリーニングのプロ、
ベアーズさんをお招きして、「掃除」「ニオイ」の観点から意見をいただき、
家のニオイをさらに深堀りしていきます。
プロのお掃除テクニックも必見です。
株式会社ベアーズ
野口志保さん
家事代行事業本部 BL研修・サポート課
エステー株式会社
田澤寿明さん
R&D部門 研究グループ 第1チーム兼 応用技術開発プロジェクト担当
大和ハウス工業株式会社
金指有美
住宅事業推進部 東日本住宅設計室 一課 主任
オシャレなオープンキッチンや一体感あるLDKにおける意外な悩み
- ダイワハウス金指(以下、金指):家のニオイ対策は、住宅の設計や消臭芳香剤で防ぐことができるとともに、基本的には1に掃除、2に換気が大切とこれまでの対談で伺いましたので、今回はお掃除の専門家としてベアーズさんをお招きしました。まずは実体験として、掃除でニオイはかなり軽減されるものでしょうか。
- ベアーズ野口さん(以下、野口さん):はい。掃除を始める前と後を比べると、ニオイは減っていると実感します。帰宅したお客さまからも「家の空気が違う!」とおっしゃっていただくことが多いですね。
- エステー田澤さん(以下、田澤さん):やはり「ニオイの元を断つ」ことは有効ですね。長年住んでいる方は自分の家のニオイに気づきにくいものですが、たくさんのお宅に伺う機会が多いベアーズさんの経験で「家のココが特にニオイやすいかも」というポイントはありますか。
- 野口さん:玄関を入った瞬間に、油や汗、靴といった特定のニオイを感じることがあるので、その部分を特に念入りに掃除します。実は一番厄介なのは油のニオイです。油は空気に乗って家中を漂い、床に落ちて溜まっています。調理中以外に、キッチンから離れた部屋で油っぽいニオイを感じたら、油の粒子がそこまで飛んで来ているということです。
- 金指:近年オープンキッチンを好まれるお客さまが増えている一方で、油汚れやニオイが部屋中に充満してしまうのでは?という心配の声も聞かれます。換気はもちろん、しっかりと周辺の床や壁を掃除することが大切ですね。
- 田澤さん:油は時間が経つと酸化してニオイが変化するんです。同じ量の油を比較しても、酸化した油ほどニオイを感じやすいので、汚れがついたら早めの掃除を心がけたいですね。
- 野口さん:それではさっそくキッチンまわりのお掃除方法からお話ししましょう。
キッチンやダイニング周辺のお掃除はどうすればいい?
- 金指:先程お聞きしたキッチンから飛ぶ油汚れはどのように掃除をすればいいでしょうか。
- 野口さん:温かいうちに拭き取れば掃除は簡単です。コンロまわりはみなさん掃除をされていますが、コンロまわりの壁や床、換気扇に残った油汚れがニオイの原因となっていることも多いので、こまめに掃除したいですね。食器棚や冷蔵庫の上も目につかないので放置しがちですが汚れやすいポイント。あらかじめ新聞紙を敷いておくと、捨てるだけで手軽ですよ。
あと、見落としがちなのが照明器具。油汚れとほこりが混ざりあったものがつきやすいので、「軍手ぞうきん」で一緒に拭きましょう。
【野口さんおすすめ!】あらゆる箇所のお掃除に役立つ“軍手ぞうきん”とは
ゴム手袋の上から軍手を装着した「軍手ぞうきん」なら、ぞうきんが入りにくい隙間や細かい箇所も指先の感覚でお掃除できます。ゴム手袋は、指先の感覚が分かるビニール製の薄手タイプだと作業しやすいです。
- 野口さん:加えて、キッチンから拡散した油は床に落ちるので、床の拭き掃除も併せて行いたいですね。フローリングなら普段はドライタイプのお掃除シートや掃除機を使う方が多いと思いますが、洗剤を使って水拭きするとさっぱりとしてニオイも軽減できます。夏場なら3日に1回、冬場なら週1回が目安です。
- 金指:掃除の際には換気をしてニオイを外に出すことも大切だと思いますが、換気方法のポイントはありますか?
- 野口さん:風の通り道を考えて、入口と出口となる2箇所の窓を開けると効率よく換気ができます。お客さまのご希望があれば、掃除の後に消臭芳香剤などをスプレーして仕上げることもありますね。
キッチン掃除の本丸!排水口の汚れを取るお掃除
- 金指:次に掃除しづらい排水口について教えてください。
- 野口さん:排水口のぬめり汚れのニオイには、アルカリ性の重曹と酸性の酢の化学反応を利用した掃除方法がおすすめです。重曹を排水口にふりかけ、その上から酢をかけるとぶくぶくと泡立って汚れが浮いてきます。その後、軽くこするだけで簡単にキレイになります。
あとは、丸めたアルミホイルを普段から2〜3個排水口のゴミ受け(ストレーナー)に入れておくと、水流で転がって汚れを絡め取り、ぬめり防止にも役立ちます。
- 田澤さん:アルミホイルから発生する金属イオンが、ぬめりの元となる雑菌を抑える仕組みですね。生ゴミの三角コーナーも臭いやすい箇所です。特にプラスティック製や樹脂製のものは、ステンレス製よりもニオイを吸着しやすいです。
- 野口さん:それは実感します。三角コーナーや排水口のゴミ受けは網目の間や細部に汚れが残りやすいので、泡タイプの塩素系漂白剤をスプレーした後、45Lサイズくらいの大きめのゴミ袋に入れ、コップ1/2杯ほどの水を加えて口を結んでシェイクします。15分ほど置いて水で洗い流すと、手を汚さずに隅々までキレイになりますよ。
野口さんのお掃除方法を動画でチェック!
カーペットなどのファブリックを清潔にしてリビングのニオイを断つ
- 金指:前回のエステーさんからのお話で、リビングのラグやソファ、カーテンに染み込んだニオイがその部屋のニオイになりやすい、とお聞きしました。ベアーズさんではどんなところを重点的に掃除されますか?
- 野口さん:ファブリック類は食べこぼしの汚れやほこり、汗、皮脂を吸い込んでニオイの発生源になっています。これは裏ワザ的な使い方なのですが、カーペットやラグはゴムやビニール製の手袋をはめ、手のひら全体で強めになでると、掃除機では取りにくいほこりや髪の毛が驚くほど取れますよ。手袋は厚手で指先に凹凸があるものがおすすめです。
野口さんのお掃除方法を動画でチェック!
- スナック菓子をこぼしてしまったら重曹の出番です。お菓子の欠片を取り除いた後、汚れた部分に直接重曹をふりかけて1〜2時間ほど置くと、汚れやニオイを重曹が吸着してくれます。その後、掃除機で重曹を吸ってください。頻繁には洗濯できない大物ファブリックがさっぱりします。
野口さんのお掃除方法を動画でチェック!
- ソファの座面と背もたれの隙間も汚れが溜まりやすい場所です。ゴム手袋に軍手を重ねた「軍手ぞうきん」で隙間に手を差し込むと汚れがキレイに取れます。
野口さんのお掃除方法を動画でチェック!
- 田澤さん:ほこりや髪の毛にはニオイが吸着し、カビの発生にもつながります。普段の掃除では手が届きづらいこうした場所からニオイが出ている可能性はありますね。
汚れやすいトイレ&ニオイの発生源が多い洗面所の掃除術とは?
- 金指:トイレは汚れやすく、ニオイを気にされるお客さまも多い場所ですよね。
- 野口さん:汚れがつきやすく臭いやすい箇所としては、便器のふち裏、尿が飛び散りやすい床や壁、温水洗浄便座のシャワーノズル、意外と臭うのがスリッパやマット、タオルなどの布製の小物類です。ふち裏とシャワーノズルは「軍手ぞうきん」で磨けば、細かなところまで指先の感覚で掃除できます。床と壁は飛び散った尿によるニオイをしっかり拭き取りましょう。掃除は便器まわり→壁→床の順で行うといいですね。
- 田澤さん:床や壁はニオイの発生源になりやすいですね。飛び散った尿を餌に雑菌が繁殖すると、アンモニアなどのアルカリ成分のニオイを放出します。ニオイ成分が染みついている場合もあるので、取り切れないニオイには、トイレ用の消臭剤なども併せて活用いただくといいと思います。
- 金指:尿跳ねしやすい壁に汚れのつきづらい防汚クロスなどを採り入れるとお手入れがしやすいです。通常の壁紙でも、水または中性洗剤をスポンジかやわらかいタオル等につけて軽くおさえるようにして汚れを浮かせ、乾いた布で水分を拭き取ることをおすすめします。
- 田澤さん:人の嗅覚は湿度の高い場所ではニオイを感じやすいので、同じ水まわりの洗面所も臭いやすい場所と言えます。排水口のニオイ、ハンドタオルの生乾き臭などは気になるポイントだと思います。
- 野口さん:洗面所の排水口は排水口用のパイプ洗剤を使います。洗面ボウルの内側と、髪の毛が詰まりやすいパイプの内部を溶かすお手入れをすると、ニオイの根本原因に対処できます。また、足拭きマットも臭いやすいので、吸湿消臭効果のある珪藻土マットなどを検討されてもいいですね。意外と洗濯機からニオイが発生していることも多いので、洗濯槽クリーナーで定期的なお手入れもおすすめです。
- 金指:最近は洗面ボウルと洗面化粧台の一体型が増えているので、つなぎ目に黒カビなどが繁殖することなく快適にお使いいただけると思います。水栓と鏡のあいだのスペースも掃除がしにくいという声を受けて、最近は壁から水栓が立ち上がったものもあります。水まわりの設備は汚れがつきにくく、お掃除しやすく進化していると実感します。
家の第一印象となる玄関のニオイを左右するものとは…
- 金指:玄関はその家のニオイの印象を左右する場所なので気にされるお客さまも多いようです。
- 田澤さん:靴のニオイ対策がポイントですね。靴のニオイは「イソ吉草酸」に代表される汗臭の一部。毎日履くお子さまのスニーカー、通勤用の革靴、通気性の低いブーツなどは雑菌が繁殖しやすくニオイが出やすいです。
- 野口さん:たたきの砂ほこりを掃除した後、下駄箱の靴を外に出して通気をよくします。特にニオイが気になるというお客さまには、丸めたアルミホイルを靴に入れるワザもお伝えしています。
- 金指:最近は玄関収納を採用される方も増えてきていますが、ニオイ対策の面ではいかがですか?
- 野口さん:従来型の下駄箱は狭い密閉空間でニオイがこもりやすく、収納量が足りないと玄関のたたきに靴を出しっ放しになるケースもあるので、大容量の玄関収納があれば、収納しながら靴を乾かすことができていいですね。
収納計画を考えてほこりがつかないスッキリした家づくりを
- 金指:たくさんのお掃除術をお伺いしてきましたが「こういう家だと掃除しやすい」といったアドバイスがあれば、ぜひお聞かせください。
- 野口さん:水まわりは臭いやすい場所ですが、最近のキッチンのシンクは汚れがつきにくく、つなぎ目も少なくて清掃性が進化しています。これから家を建てる方はそうした設備を選ぶことでも、ニオイ対策ができそうですね。
凹凸部分にはどうしても汚れやニオイが溜まるので、なるべく凹凸がないものを選ぶと清潔でニオイが出にくいです。掃除のときに無理に力を入れてこすってシンクなどを傷つけてしまい、そこに汚れが溜まりカビが繁殖してしまうこともあるので注意していただきたいですね。
- 金指:メーカーさんが推奨する方法で正しくお手入れすることは大事ですね。
- 野口さん:ほこりはニオイを吸着するので、なるべく床には物を置かず掃除しやすい状態をキープできるといいですね。そういう意味では、収納計画もポイントになると思います。
- 金指:収納量が不十分だとあらゆる物が外に出しっぱなしとなり、掃除がしにくくなるかもしれませんね。物はほこりがつかない扉のついた収納棚にしまい、ポイント的に飾り棚をつくると、掃除しやすくインテリア性も高まりそうです。本日はありがとうございました。
まとめ
家のニオイの発生源となる場所別に、ニオイのプロ、お掃除のプロから役立つアドバイスをお届けしてきた本特集。ニオイは目に見えないため、家の設計段階では気付きにくいですが、暮らしの快適さを左右する重要なファクターです。これから家を建てる方は「ニオイを発生させない家づくり」の視点も加えて、理想の住まいを手に入れてください。
2020年4月現在の情報となります。