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インタビュー 004-1
  • 土地活用税務コラム

税理士リレーインタビュー 第四回 竹本守邦税理士事務所 竹本守邦税理士(前編)
「遺言書とは被相続人の意思を最大限に活かせるもの」

公開日:2017/03/20

インタビュアー(以下I):竹本先生はハウスメーカーからの依頼で、土地オーナー様向けのセミナーを数多くされていると伺いました。基本的にどのようなお話をされているのでしょうか。

竹本(以下T):それほど多いわけではなく、せいぜい年1回程度でしょうか。ハウスメーカーさんからの依頼なので、いらっしゃるのは個人で不動産を複数持っている方が中心です。そのため、自宅以外の不動産も含めて、上手に相続する具体策をお話ししています。やはり、先祖代々の土地を持っている方にとって、所有する不動産をできる限り手放さないで相続するのが一番いいわけですから、そういった点に絞って具体的なお話をします。

I:まさに、お聞きしたいポイントなのですが、そうした土地オーナー様は、どういうことに気をつけて相続対策を行えばいいのでしょうか。

T:セミナーでは、まず私自身の相続の体験談をお話しします。私の父は、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士で、子どもは男の子ばかり4人です。そういう専門家の家族ですから、さぞかし相続もうまくいくだろうと思われるでしょうが、「それでも大変なんですよ」ということを、まずご理解いただくわけです(笑)。
実際、父は専門家ですから、いろいろな対策をしておいてくれました。最大の対策は、「財産の棚卸し」です。父は毎年の正月休みにコタツでゆっくり寛ぎながらそれをやっていたらしく、1月1日現在における所有財産の価額と内訳を手帳に残しておいてくれました。要は父の財産目録がすでにできていたわけで、すごく助かりました。それでもその中身については有価証券が多く、銀行口座が十何個もあったので非常に労力もかかり大変でしたから、被相続人になる方はできるだけ早く対策に着手することが大切だと思います。

I:被相続人が亡くなると、そこから10カ月の間に相続人たちの間で分割協議を行う必要があります。十分な時間のように思えますが、実際にはあっという間に経ってしまうようですね。

T:分割協議が調ととのわない限り、遺産を自分名義に変更できないので、自身の預貯金がない方は納税もできません。期限内にまとまらないと、遺産分割の調停や審判を経て、結局は訴訟になるケースも少なくありません。そうなると、あとで詳しく説明しますが、税制上のいろいろな特例が使えなくなって、支払う納税額においても不利になります。分割協議をできるだけスムーズにまとめるためにも、早い時期から相続対策をじっくりと考えていただく必要があるわけです。

I:最近、スムーズな「相続」ではなく、争う相続、いわゆる「争族」が増えているようですが、その背景にはどういったものがあるとお考えですか。

T:相続人の権利意識が強くなったということでしょう。戦前の民法では家父長制度というか、ほとんどの財産を長子に相続させるのが普通でした。しかし、今は法定相続人として子どもは平等に相続できる権利があります。
そうなると、たとえば家の事業を継いだ長男に事業用財産を全部渡したいと親が思っていても、それができなくなってしまうわけです。
「相続分はもらえる」「自分には権利がある」ということで、兄弟それぞれが法定相続分を請求すると、結果的に大変な争いになります。「兄弟は他人の始まり」とも言いますから。

I:そうならないために、あらかじめ何をしておくべきか、ということですね。

T:「争族」は何としても避けるべきです。とりわけ分割協議の際に子どもたちの配偶者が口を出し始めると非常に厄介なことになります。配偶者たちは分割協議の場には出てこなくても、家で作戦会議を開いて自分たちの権利を主張してくるわけです。
うちの家族のケースでは、「相続人以外の人には一切口を出させない」という約束をしてから、分割協議に入りました。ただ、一般のお客様にはそんなことは言えませんので、ここが一番難しいところですね。

「争族」を効果的に避けるために、我々税理士としては、相続のご相談を受けたら、すぐさま資料を提供して、十分な分割協議の時間を確保するよう努めます。とにかく期限内にすべてを収めてしまうことが大事だと思います。
私の父が何をしてくれていたかというと、まず金庫に300万円の現金がありました。分割協議がまとまるまで、父の銀行口座は凍結されてしまいますから、うちの母が使う当座のお金を用意しておいてくれたんです。あるいは葬式費用の準備という意味もあったのでしょう。それから、4人の子どもに均等にお金が入るよう生命保険が掛けてありました。その分だけで、納税資金としては十分でした。

I:土地はたくさんあっても手元に現金がないというケースでは、どのように対応すればいいでしょうか。

T:土地の一部を売却して、そのお金で保険に入るということも必要になってくるでしょう。納税資金対策としては、生命保険に加入するのがもっとも合理的な方法です。ただし健康でないと入れませんから、ぜひとも早い時期から生命保険には入っていただきたいと思います。
保険金は受取人の指定ができ、もっとも簡単で、争いも起きず、被相続人の意思どおりに分けられる財産です。これは最低限の対策として、必ずやっておくべきだと思います。保険は年をとると年々入りにくくなりますし、保険料も高くなりますから、とにかく早めに入っておくことが重要です。病気になってからでは遅いのです。
さらに、「二次相続」を踏まえる必要も出てきます。被相続人の妻には、相続財産の半分まで相続すれば無税で済む「配偶者の税額軽減」の制度があり、まずは「一次相続」でそれを最大限活用すべきことになります。しかし、子どもたちがそれぞれ一つ以上の土地を要求すると、その制度を最大限活用できなくなり、子どもたちの相続税額も膨れてしまいます。そこで、土地についてはひとまず母と子どもの共有にしておき、二次相続の際に母から受け継ぐようにしておけば、結果的には子どもたちのものになるわけです。言ってみれば、予約のような感じですね。そういった二次相続のための分割も最初に決めておくと、トラブルを避けやすくなります。

I:相続対策においては、やはり遺言書が決め手になるのでしょうか。

T:そう思います。相続対策の中で、特に重要になるのが遺言書です。遺言書がないと、皆さん、法定相続分の権利をそのまま主張したり、勝手なことをやり出したり、収拾がつかなくなります。特に同族会社の経営者の場合には、遺言書が絶対に必要だと思います。それがないと、事業承継がなかなか思うように進みません。
遺言書とは、被相続人の意思を最大限に活かせるものです。ただし、「遺留分を侵さない限り」ですので、そのための工夫については、やはり税理士に相談する必要が出てくると思います。
弁護士に相談される方が多いのですが、依頼者の意向を100%汲み上げられるように法律の問題を考えるのが弁護士の役割なので、この時残念ながら税金のことまで考えてはくれません。
その点、税理士は民法にも強く、かつ税金の計算にも強い存在です。依頼者は通常被相続人ですが、依頼者だけではなく、被相続人を含めた全体のことを考えて、それを調整する役割を担うのが税理士です。争いが起きて審判にもつれこんでしまうと、数年ないしは10 年くらいかかる場合もあり、最終的には納税すらできなくなったりします。そういう状況を避けるべく、あらゆる手立てを考えるのが私たちの仕事ですから、そこは信頼していただいていいと思います。

I:遺言書の効果的な活用法というのはありますか。

T:遺言書には、「付言事項」というものがあります。これは、法律的には効力はありません。ただ、相続人の感情に訴えることによって、相続人が「これに従わなければいけない」という気持ちになることもあるでしょう。
たとえば、事業を承継する人間は一人だけ、他には特に財産がない場合、「長男にすべてを相続させる。そうすると、他の兄弟には取り分がなくなってしまうけれど、先祖代々この事業をやってきたのだから、これからも続けていかなければいけない。だから、他のみんなは我慢してくれ。残せる財産はないけれど、嫁に行ったときにはこれだけのことをしてあげたよね」みたいな(笑)。それから、奥さんのことが心配なので、長男の嫁に対して「大変苦労をかけるが、家内のことはよろしく頼む」とか。
そういうことを書くと、残されたほうも感情的に考えることもあると思います。被相続人側のそういう配慮も必要ではないでしょうか。

I:相続対策における目的、その優先順位を整理すると、どうなりますか。

T:まずは、相続争いを回避すること。次に、何とか納税ができること。さらに、少しでも税金を減らすことができれば、それで十分ではないでしょうか。
納税する現金がない場合は、そのための準備として生前対策を行う必要が出てきます。資産の組み替えや有効活用など、相続税を専門にやっている会計事務所ならば、依頼者の状況に合った対策を考えてくれるはずです。
たとえば、貸宅地を更地にして税金を「物納」するのも一つの方法です。貸宅地のままだとだいたい更地の半分くらいの値段になってしまいますが、借り主に交渉して出ていってもらって、建物を取り壊して更地にして、その土地を物納すれば倍の値段で国が買い取ってくれるわけです。貸宅地の物納条件は厳しいので、それを回避する役割もあります。

I:竹本先生のところでは、どのような相談が多いのでしょうか。

T:生前対策のご相談ですね。ご相談いただくと、まず相続税の試算を行います。「今の状況で相続が開始したら税金はどれだけになるか」「納税資金が足りるかどうか」「特例を受けられる財産があるかどうか」などを明らかにしながら、コツコツと一つずつ対策を考えていきます。そうすると、「これとこれだけやれば納税資金は十分で、これをやりさえすれば大丈夫」ということが見えてきます。大概は二つ三つの対策を組み合わせれば何とかなります。 その意味でも、相続対策でまず大事なのは、やはり財産の棚卸しです。うちでは、現地を確認したり、所有権が誰にあるのかを確認したり、できるだけ精密にやります。そのお客様の財産の詳細がちゃんとわからない限り、適切な対策を組むことはできませんから。
その結果、「ここをこのままの状態にしておくのはまずいですよ、税務上の手続きを取りましょう」という話になり、その時点で対応しておくと、いざ相続が始まったときには、かなりのことが整理できているので、とてもスムーズに進めることができます。

(後編へ続く)

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竹本 守邦(たけもと もりくに)

TKC全国会 資産対策研究会 代表幹事<
TKC中部会 資産活用委員会 名古屋大和部会 部会長
竹本守邦税理士事務所 所長・税理士

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