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コラム No.108-1

CREコラム

急拡大するESG投資(1)ESG投資 登場の背景

公開日:2019/09/30

環境問題や社会的事件、企業の経営姿勢に対する取り組みなどを重視して投資対象を見極めるESG投資が世界中で広がっています。不動産投資においても、売上高や事業利益といった収益性だけを見て投資対象を選ぶのではなく、より良い地球環境を今後も継続していくために必要な活動を主要な評価軸とする投資スタンスは今後、ますます高まるものと思われます。今回からESG投資について考えます。

ESGの歴史、発端は国連によるSRIの提唱

ESGとは、Environmen(t 環境)、Socia(l 社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったもので、企業や機関投資家が「より良い社会」を実現するために配慮すべき3つの要素といわれています。
世界ではいま、地球温暖化による気候変動や資源枯渇などの環境問題が起き、男女不平等や人種・民族差別などの人権問題、さらに企業における利益相反や法令違反など「ESG」を揺るがす諸問題に直面しています。
ESG投資の起源は、社会的責任投資(SRI=Social Responsible Investment)という投資手法にあるとされています。欧米では、SRIは1920年代にキリスト教の一部宗派が教義に反する酒やたばこ、ギャンブルなどの業種・銘柄を投資の対象から外したことに由来するとの説があります。

1960年代に入ると米国では黒人差別に抗議する公民権運動が高まり、また世界各地で南アフリカのアパルトヘイト政策やベトナム戦争などに反対する社会運動が急速に高まりを見せました。
そして1990年代以降は、繁栄の裏に隠れた環境汚染や不正会計など企業の反社会的行為が世界で表面化。これを受けて金融資本市場における投資行動の見直し機運が一気に進みました。
その動きを決定的にしたのが、2006 年の国連による「責任投資原則」(PRI=Principles for Responsible Investment)の提唱です。アナン事務総長(当時)は機関投資家に対し「投資の意思決定プロセスにESGの要素を反映させるべきだ」との声明を出し、PRI(責任投資原則)の重要性を強調したのです。

財務情報の限界とワーカーズキャピタルの台頭

ESG投資が注目される背景には、いくつかのポイントがあります。ひとつは財務情報の説明力の限界。わが国では上場企業に対して四半期ごとの決算短信や有価証券報告書などの財務情報を開示することを義務付けています。そのほか、任意の開示項目には経営理念や経営ビジョン、中期経営計画、知的財産報告書などもあり、企業のディスクロージャーは企業会計の国際化と相まって年々開示項目が増えています。
しかし近年、ある調査機関が国内の上場企業を対象に過去20年の純資産と経常利益の数値が株価に適切に反映されているかを調査したところ、必ずしも関連性は大きくないとの結果が得られました。これは、決算情報などの数値情報、定性情報だけでは企業価値の真の姿は把握しづらくなっていることを示しています。そこで、企業がより良く共存していくため、従来の財務情報に加えて、環境・社会に対する認識や行動といった非財務情報を積極的に開示することが求められてきました。

ESG投資が注目される背景とは?

もうひとつの大きな背景は年金基金の存在です。2006年に国連が提唱した「責任投資原則」 (PRI)を受けて、資金運用の世界で絶大な存在感を示し、世界の投資市場で主要なプレーヤーである年金基金がこぞって「PRI」を支持するようになったのです。年金基金は労働者が拠出する大規模なファンドであり、企業年金や公的年金、労働組合の独自基金などが該当します。
年金基金は多くの労働者が長年にわたって拠出してきたファンドで、退職後の重要な生活資金の原資になっています。それだけに、労働者またはOB(退職者)の高い社会参画意識を背景にESG(環境・社会・ガバナンス)の非財務的要素を考慮する傾向が強いとされています。
年金基金は資産管理を委託している信託銀行などを通じて年金基金が株主権限を行使することもあり、公正で持続可能な社会形成に貢献することを目的としているファンドで、こうした年金基金は「ワーカーズキャピタル」といわれています。
2015年、国民年金・厚生基金を運用し国内最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連のPRIを批准したことで、国内の資産運用業界でESG投資がさらに大きくクローズアップされることになりました。

ESG投資の理解深める「SDGs」

ESG投資では、いうまでもなくESGに対する理解を深めなければ意味がありません。そこで 近年、大きな注目を集めている「SDGs」に触れておきます。
「SDGs」は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)と呼ばれ、2015年に国連で採択され、2030 年までに世界が達成すべき持続可能な開発目標とされています。貧困や飢餓の撲滅など途上国の支援を中心とした目標に、健康や福祉の増進、技術革新、気候変動への対応など先進国の課題や環境問題が加わってできており、17の目標があります。企業はこうした世界的かつ広範な目標に少しでも貢献してくことが求められています。

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