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コラム No.28-10

CREコラム

今さら聞けない「不動産証券化」(10)資金調達、運用、そして新しいビジネス

公開日:2018/01/31

低コストでの資金調達が可能

企業が資金を外部から調達する方法としては、大きく分けて二つあります。一つは、企業自らが持っている信用力を担保にした資金調達。これはコーポレート・ファイナンスと呼ばれています。証券市場で株式や社債を発行したりして、資金を引っ張ってきます。上場企業であれば、会社の資産内容は公開されており、信用力はすでに開示されています。銀行融資もこの中に入ります。

ちなみに株式・社債の発行による資金調達をエクイティ・ファイナンス(エクイティは株主資本の意味)、銀行からの借り入れはデット・ファイナンス(デットは借金、債務の意味)で、コーポレート・ファイナンスは2種類ある、と覚えておくといいでしょう。前者は返済義務がなく、後者は返済義務がある、という違いがあります。

これに対して、企業が保有している土地や施設を小口化して資金を集める不動産証券化は、物件(土地や施設)そのものが持つ収益力を元にして資金を集めます。これをアセット・ファイナンスといいます。アセットは資産という意味です。

企業の信用力で資金調達するコーポレート・ファイナンスは、企業業績が低迷しているときは、当然のことながら調達コストが高くなります。経営が思わしくない企業が発行する株式や社債は返済義務がないのですから、投資家は危なくて買えません。買うとすれば、高い配当や利回りのものに限られます。

一方、不動産の収益力を元にしたアセット・ファイナンスは、企業の業績や財務内容に関係なく、物件の価値が資金調達の条件を決めるので、経営状況に左右されることがありません。極論すれば、業績低迷時でも資産価値の高い不動産であれば、低いコストで資金を引っ張ってくることができるというわけです。

不動産証券化は、物件の収益力が命

投資家にもメリットがある不動産証券化

投資する側から見ると、不動産証券化のメリットは何でしょうか。それは「運用」できる範囲が広がったことにあります。不動産投資といえば、従来は不動産を文字通り所有することでした。地主や家主だけが不動産から得られる収益を独占していました。実物の不動産を持たない限り、そこからリターンを得ることは不可能だったのです。

ところが証券化の手法が登場したことで、不動産を保有していなくても不動産に投資することができるようになりました。さらに、多額の資金を必要としていた不動産への投資は、小口化によって個人投資家が資産を運用できるレベルにまで間口が広がりました。お金持ちの資産運用という側面が希薄になり、より多くの個人投資家が不動産に興味を抱くきっかけにもなったのです。

つまり証券化によって不動産は、より大衆化した運用対象になったということができるのではないでしょうか。それに拍車をかけたのがJ-REITです。証券化商品を上場すると聞くと、混乱する人も少なくありませんでした。それまで上場(証券)市場とは、経営的に安定した「企業」が株式を公開し、企業が展開する営業活動などによって投資家がその会社の株式を売買することで成立していたところだったからです。

J-REITは、証券化された不動産物件(オフィスビル、賃貸マンション、物流センター等)が生み出す収益に期待して投資家が資金を投じることで成り立っています。上場しているので、決まりに従って証券化の内容が公開されています。

J-REITの創設は、不動産市場の透明性の改善につながりました。不動産の証券化商品は、厳しい規則のもとで販売される金融商品となりました。不動産証券化による商品は、金融商品としてのステイタスを築くことで他の金融商品と比較され、投資商品として磨きをかけていっているのです。

不動産証券化が自己目的化している

不動産証券化は当初、不良債権処理の促進策として登場した一面を持っていました。不動産市場を何とかして活性化したいとの思いから出てきた発想・アイデアでした。そこから派生して資金調達のツールになり、同時に資金運用の新たな選択肢として成長を遂げてきました。

最近では、空き家対策や古民家事業など、資金調達の観点から不動産証券化そのものがニュービジネスとして注目されてきています。不動産証券化が自己目的化しているということになるでしょう。

証券化が登場する前までは、不動産事業は専門業者が半ば独占的に担い手としてリスクを抱えながらリターンを得ていました。宅建の免許を持ち、不動産のすみずみまで詳しい専門家だけが取り扱う商品だったのです。

しかし、証券化の仕組みが出てきて、SPC(特別目的会社)や信託銀行、証券会社などのプレーヤーが関与して事業の役割分担をすることで、不動産における所有と管理運営の分離が生まれました。

21世紀のビジネスに共通するのが、この企業活動における所有と経営の分離です。資産管理会社である持株会社と事業会社を分離するホールディングカンパニーの考え方にも似ています。不動産証券化においては、所有の主体から分かれて管理・運営する組織体を位置づけることで、リスクを分担しリターンを分配することが可能になりました。

役割分担が明確になれば、証券化業務における各種プレーヤーも参入意欲が高まります。参入障壁が低くなれば証券化市場は広がります。資金調達のため必要としていた企業が展開してきた不動産証券化は、活動そのものがひとつのビジネスとして大きくなろうとしているのです。

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