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コラム No.28-11

CREコラム

今さら聞けない「不動産証券化」(11)三つのタイプの不動産証券化

公開日:2018/02/28

資産流動化型と資産運用型

不動産の証券化には、資産流動化型と資産運用型(ファンド型)、開発型の三つのタイプがあります。
資産流動化型は、資産である不動産の保有者(オリジネーター)が、賃貸マンションやビルなどの資産をSPC(特別目的会社)に移転させます。SPCはその資産が生み出す収益を裏付けとした証券を発行して資金を調達します。証券化の対象となる不動産の存在が前提になることから、「まず、モノ(資産)ありきの不動産証券化」といわれています。

資産流動化型は、わが国では不動産証券化の原点ともいえる仕組みです。銀行が不良債権の重荷に苦しみ、融資の担保になっていた企業の不動産を売却して不良債権処理を促進しようという金融業界の要請から始まりました。不動産売買市場を活性化して不良債権処理を進め、景気回復に大いに貢献した枠組みです。

資産運用型の証券化は、複数の投資家から資金を集めて不動産に投資して運用し、その運用収益を投資家に分配する仕組みです。J-REITはその代表的な例ですが、運用する資金の存在が前提になることから、「まず、カネありきの不動産証券化」と呼んでいます。このとき集めた資金を「不動産ファンド」といいます。そして、アセットマネジメント(AM)会社が少数の限られた機関投資家に呼び掛けて募集するこのファンドを「不動産私募(プライベート)ファンド」といいます。広く投資家に呼びかけるJ-REITが公募ファンドであるのと対をなしています。

■不動産証券の種類

資産運用型には、私募ファンドの仕組みの違いとして物件の追加取得の有無により2通りの証券化が存在します。証券化商品が組成された後に物件をさらに取得してより多くの投資機会を得たい投資家のために、不動産を追加取得するタイプがあります。

追加取得しない場合は、証券化商品(または信託受益権)は投資した時点で物件が固定されリスクも確定しますが、追加した場合はリターンが増える可能性があると同時にリスクも増大する懸念が生じます。またその分の追加出資の要請に応える義務が生じます。

どのような追加取得物件なのか、投資家には分かりません。AM会社が不動産の投資判断をするのです。投資家には見えないことから、これを「ブラインド・プール」と呼ぶこともあります。

不動産私募ファンドはJ-REITに匹敵する市場規模

資産運用型の私募ファンドの多くは、賃貸収入だけでなく、不動産を売却することで得られるキャピタルゲインも投資の大きな魅力と目的になっています。このため運用不動産は長期間の保有を前提にしていないケースがほとんどで、通常、2~5年など比較的短い期間で売却されます。また、J-REITのように商品内容の情報開示が乏しく、その実態については不明な点が少なくありません。

三井住友信託銀行系のシンクタンクである三井住友トラスト基礎研究所が2017年に公表した「私募ファンド市場動向」によれば、2017年6月末時点の不動産私募ファンドの市場規模は、運用額ベースで約15.8兆円と推計されています。J-REITの約16.2兆円に匹敵する数字を出しています。

■私募ファンドとREITの市場規模推移

出所:不動産私募ファンドに関する実態調査(2017年9月・三井住友トラスト基礎研究所)

先ほど「不動産証券化が自己目的化している」と述べましたが、「まず、カネありきの不動産証券化」である資産運用型は、まさしくこの典型といってよいでしょう。ファンドを組成して不動産に投資するのですから、自己所有の不動産に価値を見出す資産流動化型に対し、投資資金を集めて不動産を探し、より良いリターンを得る資産運用型は不動産証券化そのものがビジネスの根幹をなしています。

言い換えれば、資産流動化型は不動産を保有するオリジネーターの証券化に対する動機が強いのに比べて、資産運用型は、投資価値のある優良不動産を探してくる運用機関のAM会社と投資家の証券化へのインセンティブが強く働いている、といえるのではないでしょうか。

普及しはじめた開発型証券化

資産流動化型と資産運用型が、存在する不動産(建物)を証券化の対象としているのに対し、開発型証券化は、これから建設する建物を対象とするものですから、当然ハイリスクになります。

最近は新規開場がほとんどなくなりましたが、ゴルフ場は建設過程において会員権の価格が大きく変動しました。会員権の販売が順調に進めば、建設資金がより多く集まり、工事が進んで完成が見えてきます。会員権の販売を始めた当初は、整地も進んでおらず、会員権価格は低くても、数年後にコースが完成し開場した後には会員権価格は上がるのが一般的なパターンでした。

ゴルフ場建設と会員権の関係のように、開発型証券化では、物件(建物)の完成の進行段階に応じてリスクが変化するのです。開発型証券化は期間が短いために証券化のコストが高く、その分リターンも高くなります。追加の資金が発生することもあります。分譲マンションなどを対象にした物件を中心に普及してきているようですが、開発型証券化は、ハイリスクハイリターンなことから、開発主体であるデベロッパーやゼネコンの信用力が投資家を募集する場合での大きなポイントになるようです。

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