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コラム vol.192
  • 土地活用法律コラム

何も対策をしないことが一番大きなリスク!空き家にさせない!「実家信託」※1のススメ 第4回 実家信託で実家を建て替える!

公開日:2017/02/28

平成27年1月1日以降に開始した相続から、相続税の基礎控除が大幅に減りました。平成26年までは、 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数 でしたが、平成27年以降は、 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 と、それまでの4割も削減されています。今まで相続税がかかってこなかった人が今後はかかる可能性が高まっています。
そこで、土地の有効活用と相続税の対策が一挙にできるので、実家を賃貸不動産に建て替えて、その一室にお住まいになる方も増えてきました。
ところが、大きな落とし穴が待ち構えているのです。 何も対策をしないことが一番大きなリスク!空き家にさせない!「実家信託」※1のススメ

Aさんの実家を建て替える!

Aさんは都心に土地と築50年の店舗と住所を兼ねた実家があります。現在、ご両親(父80歳、母77歳)は健在でお二人で住んでおり、実家の名義は父です。Aさんが代表取締役を務める不動産管理会社が実家の管理をしていました。父は現段階では判断能力はありますが、最近は年のせいか元気がなくなり、体力もなくなっているため外出が億劫になってきたようです。
昨年からテナントから店舗の建替の希望がきていますがAさんは父の健康状態が気になっています。

ケース1)何もしなかった場合

Aさんは父の代理で建替に向けて話を進めていましたが、父は家の中で転倒したことがキッカケとなり、判断能力がかなり低下してしまいました。そこで、Aさんは建替にかかる契約一切が代理でできなくなりました。テナントは建替ができないことがわかると他に物件を探して出て行きました。家賃も入らなくなり、Aさんは父の介護費用を負担することに頭を悩ませています。

成年後見制度を使ったら?

裁判所に成年後見人を選任してもらったら、建替はできるでしょうか?
通常、建替を行う資金を調達するには不動産を担保に入れて金融機関から融資を受けることが多いのですが、成年後見人と言えども勝手に実家の土地に抵当権を設定したり融資を受けたりすることはできません。
成年後見人は、成年被後見人(Aさんの父)に代わって、居住用不動産を処分する(抵当権の設定も処分に該当します)には家庭裁判所の許可を得なければならないからです。
成年後見人を付けても店舗の建替のために父が債務者となって融資を受け、抵当権等を設定することを裁判所は原則許可しません。成年後見人は被後見人の財産を減らすようなことはできないからです。

ケース2)Aさんが父の代理で建替を進めた場合

それでは建替工事の途中で、父が認知症になってしまった場合はどうなるのでしょう?
例えば、父が債務者となり金融機関から融資を受けて建替が始まり、Aさんは父の代理として契約を進めていましたが、建物が建ち最終の支払い段階で父が全く判断能力を失ってしまった場合です。Aさんは代理として建物の登記や抵当権設定の手続きができないので、最終の融資もおりません。そうなると建設資金が払えなくなり、Aさんや金融機関、建築業者が一斉に頭を抱えてしまう状況になってしまうのです。

何も対策をせずに親が判断能力を喪失してしまうと、成年後見人を付けても実家の建替は非常に困難になります。子どもが親の代理で建替を進めても、途中で工事が止まってしまう可能性が高くなります。

実家信託を使ったら・・・

不動産管理会社はすでにありましたので、Aさんはその会社を受託者として実家信託を組んでもらうことにしました。
実家信託の仕組みは、当コラムの第2回にも書きましたが、「名義と財産権」を分けることですので、父が元気な間にあらかじめ実家の名義をAさんが代表の資産管理会社に変更して、実家を建て替えることができるように託しておきます。名義は変えても財産権の変更はないので贈与にはなりません。贈与税ももちろんかかりません。
また、Aさんの父が元気な間に、全額の建築資金を借りて、資産管理会社名義での信託の専用口座※2へ入金しておきます。Aさんが建築途中で寝たきりになっても支払いはいつでも可能ですし、すでに不動産の名義は資産管理会社なので抵当権の設定や建物の登記もスムーズに手続きができます。
父が債務者として全額の建築資金を先に借りてしまうので、もし、父が債務を残して相続が起きても債務控除ができるので相続税対策も兼ねることができます。
登記上は所有権移転ですが贈与税もかかりませんし、流通税も登録免許税のみで固定資産評価額の0.4%(土地は軽減措置により0.3%)で、通常の登録免許税2%に比べると、5分の1から6分の1で済みます。

実家信託での注意点

実家信託をする上で注意することがあります。それは、受託者が「営業」として信託を引き受けるのであれば信託業法の適用を受けるため、内閣総理大臣の免許や登録が必要になってくるということです。つまり、不特定多数の人を対象に報酬をもらって信託を組むことはできません。
実家信託では信託を引き受けるのは家族などの信頼できる、限られた人や法人なので、原則として信託業法の適用は受けられません。
Aさんの今回の信託も不特定多数の人を対象にしていませんので、上記の趣旨からは問題ありません。

知らないことが何よりオソロシイ

親が認知症になってしまうことの実家に及ぼすデメリットがいかに大きいか、お分りいただけたでしょうか?知らなかったでは済まされません。実家を建て替える場合には、凍結させないために実家信託をぜひ、ご活用ください。

※1 「実家信託」は、司法書士法人ソレイユが商標登録出願中です。

※2 信託口の口座を開設してくれる金融機関は以前は少数でしたが、近年は理解が深まり増加傾向にあります。

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