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コラム vol.504
  • 日本社会のこれから

「セルフメディケーション時代」に貢献する土地活用とは

公開日:2024/05/30

厚生労働省は増加を続ける社会保障費用の中、対応策のひとつとして、「セルフメディケーション」を推進しています。
セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調を自分で手当てする」(WHO定義)ことで、病気予防や健康の維持増進に加え、医療費適正化にもつながる取り組みです。
具体的には、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できる「OTC医薬品」(薬局やドラッグストアなどで選んで買える「要指導医薬品」と「一般用医薬品」)の活用があります。また、自分で自分の健康を守るために健康診断の受診、予防接種などもセルフメディケーションのひとつと言えます。OTC医薬品の中で、もともと医師の処方が必要だったものは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれています。
また、医療費控除の特例として、2017年(平成29年)1月1日以降にスイッチOTC医薬品を購入した際、その購入費用について所得控除を受けることができる「セルフメディケーション税制」が開始されています。
「日本一般用医薬品連合会と日本OTC医薬品協会等の関連団体が実施した生活者調査」によると、2022年3月の最新調査では「セルフメディケーション税制の利用意向」が過去最高の20.7%にのぼるなど、徐々に国民の関心が高まっていることがわかります。
セルフメディケーションによって、国民一人ひとりのヘルスリテラシーが向上すれば、医療費の削減、社会保障費の適正化につながるとして、国は「経済財政運営と改革の基本方針2022(抄)(令和4年6月7日閣議決定)」の中で、「OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上に取り組む」としています。

セルフメディケーションにおける医療関連施設、薬局

このような、セルフメディケーションの広がりは、医療関連ビジネスにも大きな影響を与えそうです。
各自治体は、地域の力を活用した医療・介護サービスの拡充を目指す地域包括ケアシステムを進めていますが、2025年は、団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となり、本格的な超高齢化社会を迎えます。
自治体が地域包括ケアシステムを推進していくためには、病院や診療所、薬局など、地域のニーズに合致した医療機関が配備されていることが重要となります。
厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」の中で、「地域包括ケアシステムの一翼を担い、薬に関して、いつでも気軽に相談できる、かかりつけ薬剤師がいることが重要」であるとし、「薬剤師・薬局は、地域包括ケアシステムを担う一員として、医療機関等の関係機関と連携しつつ、その専門性を発揮し、患者に安全かつ有効な薬物療法を切れ目なく提供する役割を果たすことが求められている」と、薬局の重要性を説いています。

「令和4年(2022年)医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚生労働省)」によれば、2022年10月1日現在における全国の医療施設総数は183,364施設で、このうち、「活動中の施設」は181,093施設。前年に比べ697施設増加となっています。

  • ・「病院」は8,156施設で、前年に比べ49施設減少、「一般診療所」は105,182施設で890施設増加。
  • ・一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3,458施設(病院総数の42.4%)で、前年に比べ57施設減少。
  • ・一般診療所は「有床」が5,958施設(一般診療所総数の5.7%)で、前年に比べ211施設減少し、このうち「療養病床を有する一般診療所」は586施設で、前年に比べ56施設減少。
  • ・「無床」は99,224施設(同94.3%)で、前年に比べ1,101施設増加。
  • 厚生労働省:令和4年(2022年)医療施設(動態)調査・病院報告の概況より

このように、全体的に有床施設が減少し、無床施設が増加しています。医療施設の増減においても、「地域包括ケアシステム」の推進を表す状況となっています。
医療施設は、医師や薬剤師などの専門職、法人としての組織、そして、そこに土地を供給する土地オーナーが欠かせません。土地オーナーも地域の一員として、施設を提供できる主体として存在しているわけです。

土地活用としての医療・介護施設、薬局を誘致

地域や不動産の条件によりますが、所有する土地の活用方法を検討している場合、地域における医療体制を確認しながら、医療や薬局などの施設を検討してみるのも良いでしょう。
土地活用による収益面も、大きなポイントのひとつですが、何よりも地域にお住まいの方の健康を守るための一助になる土地活用手段であり、社会貢献としての土地活用につながります。
土地活用の方法としては、「土地を貸す」「土地と建物を貸す」「リフォーム(リノベーション)して貸す」の方法があります。

  • ・土地を貸す
    医療法人または医師、薬局経営企業に土地を貸し、借主が施設を建設します。土地のみの賃貸契約ですから、リスクが少ない方法だと言えるでしょう。
  • ・土地と建物を貸す
    土地所有者が病院や診療所、薬局などを建築し、土地と建物を一括で貸す方法です。「建て貸し」とも言われる賃貸借契約です。施設を建設するので、初期投資が高額になりますが、賃料を市場やニーズに合わせて設定できますので、収益を生む賃貸ビジネスとして行うことが可能です。
  • ・リフォーム(リノベーション)して貸す
    土地オーナーがすでに賃貸施設を保有しており、テナントして入ることができる空室がある場合、そのスペースを診療所や薬局として使用できるようリフォーム(リノベーション)し、貸す方法です。都市部などで多い方法です。貸す側、借りる側とも、新築に比べればリスクを低減できる方法だと言えるでしょう。

いずれの方法も、周辺環境や立地条件、施設の条件などによってメリット、デメリットがあります。地域の状況やこれからの人口推移などを確認しながら、慎重に進める必要があります。また、その土地の用途地域の確認も必要です。診療所には用途地域の制限はありませんが、病院は第1種・2種低層住居専用地域と工業地域、工業専用地域には建築することができません。
医療関連市場に詳しい不動産関連企業や建築会社に相談しながら検討してください。

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