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コラム vol.495-2
  • 土地活用税務コラム

不動産オーナーの法人活用(2)不動産保有会社の活用テクニック 建物の名義を誰にしたらよいのか

公開日:2024/05/30

建物の所有

「収入確保と税務対策のために賃貸住宅を建てる場合、その名義を誰にしたらよいのですか?」というのは非常によく受ける質問です。しかし、それほど簡単に決められるものではありません。次のような条件によってその答えは大きく異なります。

  • ①土地所有者の相続発生までの予想期間
  • ②土地所有者の相続財産の総額と相続税額予想額
  • ③土地所有者の現在の所得金額
  • ④後継者の現在の所得金額
  • ⑤建築予定物件から得られる収支見込額や建築総額

土地所有者が賃貸建物を建築する場合

短期的な視点から税務対策をするためには、建物の所有者は土地所有者本人が良いでしょう。土地所有者が自分で賃貸用建物を建築した場合は、土地の評価は「貸家建付地」、建物の評価は「貸家」となり相続税評価額の引下げ効果があるからです。さらに、小規模宅地等の特例の適用により、貸付事業用宅地等として、200m2まで50%減額されます。
しかし、この場合は、今後入ってくる収益が土地所有者の財産を増やすことになり、長い目で見れば、相続税の課税対象が増加していくことになります。さらに、土地所有者が高額所得者である場合には所得税の負担を軽減することもできません。

親族が賃貸建物を建築する場合

土地所有者の親族が、土地所有者から使用貸借で土地を借り受け、その土地の上に親族が賃貸建物を建築します。この場合、土地の評価は自用地となり、税務対策としての効果は全くないことになります。土地所有者と生計を別にする親族がその賃貸建物の所有者である場合には、小規模宅地等の特例も適用されません。
一方、家賃収入は所有者である親族のものとなりますので、将来の相続財産の累積は防げますし、土地所有者の課税所得が多額であれば土地所有者の所得税を軽減することにもなります。もっとも、親族がすでに高い所得を得ていて、高額の所得税・住民税を支払っている場合には所得税等の税務対策にはなりにくいでしょう。
しかし、将来的には賃貸収入から生じた所得を親族が蓄積していくことにより、相続税の納税資金を確保することができる方法といえます。

同族会社が賃貸建物を建築する場合

土地所有者が新たに設立した同族会社、あるいはすでに存在する同族会社が、土地所有者から無償返還による賃貸契約により土地を借り受け、その土地の上に賃貸建物を建築します。この場合、土地の評価減額は貸地(自用地価額×80%)としての評価減額があるため、土地所有者自身が建築するのとほぼ同じ評価減の効果があります。
ただし、20%減額に相当する価額は、その同族会社の株式の評価をする時には、純資産価額の資産に計上されるため、同族会社の株式の評価額が高くなります。 結果として、賃貸建物の収入は会社に移転しその一部を会社の役員として頑張って働いている親族に報酬として支給すれば、建物を親族が所有するよりフレキシブル(機動的)に対応できます。
この3つの方法の中では、税務効果(相続税・所得税・住民税)、収益移転効果を考えると、超短期的な場合を除き、会社で所有することがバランスのよい方法といえるのではないでしょうか。
しかし、それ以上に、相続人の間での争いに備える上で、誰が所有しておくかは重要です。税金の額だけで決めるのではなく、遺産をどう承継させるのか、遺言書作成も視野に入れて判断することが重要です。また、そのためにはすべての相続財産を把握し、かつその評価及び相続税の試算をしておくことが必要です。手順を追って全体を総合的に見て判断されることを強くお勧めします。

役員や家族従業員の給与・報酬

会社設立時に際して、誰が出資し役員になるかを決めなければなりません。出資者は必ず役員にならなければならないということではありません。株式会社では出資者(株主)はあくまで会社に資金を提供する人で、役員はその会社の業務を執行する人や監査する人です。定款の定めにより、取締役会のない株式会社を設立することもでき、この場合、3人以上の取締役や監査役は必要とされませんので、1人以上の取締役だけを選任します。出資者(株主)は資金提供者であるため会社の所有者となりますので、その会社の価値が上昇すると、その出資の評価額が上昇することになります。
会社に財産を移転させていくという方法をとるならば、最初から子ども等が出資しておくとよいでしょう。もし出資金がないのであれば、その資金を贈与することもひとつの方法です。
また、当初の出資者は不動産所有者がなっておき、所有の土地や建物を会社に現物出資する、負担付きで譲渡するなどによって、株式の評価を引き下げてから子たちに同族会社の株式を贈与するという方法も税務上効果的です。相続時に、贈与等により不動産保有会社の株式が、不動産所有者ではなく子どもあるいは孫等に移っていれば、相続税がかからないことになります。

過大な給与は否認される

不動産保有会社に収益物件を移転して、家賃収入をそれ以降会社の収入とすることができても、そのままでは会社に法人税がかかります。会社には業務を執行する人(役員)が必要であり、家賃回収やその管理、物件の清掃、会社の経理、その他さまざまな仕事をする従業員も必要です。
しかし、役員として報酬を支給することによる資金分散も目的のひとつですから、不動産所有者自身を役員にして多額の給与を支給するのでは、その効果を自ら低減してしまうことになります。そこで、役員や従業員には不動産所有者以外の親族もなるのがよい方法です。しかし、何の勤務もしないのに形式だけ従業員や役員にしておき給与を支払っても経費性が認めらません。週に3回程度、賃貸建物の掃除をしている人に月給30万円を支払うようなことは通常考えられませんし、普通はパートタイマーとして時間給1,000~1,500円(地域・業種にもよりますが)程度でしょう。この場合、「この給与のうち相当部分は業務に見合う給与を超える過大部分である」と、課税当局に給与の損金性が認められず、所得税と法人税のダブル課税とされることも考えられます。
役員であったとしても、役員として土地の購入や建物の建設、借入金調達などの意思決定や重要な書類への署名押印などを実際に行っているといった実態がなければ、従業員給与と同様に過大役員報酬として否認されることもあります。
したがって、きちんとその業務に従事している人に、出勤簿、清掃チェックリストヘの担当者の押印などで勤務の実態を客観的に証明した上で、報酬を支払っておくと確実な対策となるでしょう。

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