特集:旧耐震賃貸住宅物件のこれから第3回 軽量鉄骨造と重量鉄骨造を賃貸住宅経営の視点で考える
公開日:2018/06/29
POINT!
・賃貸住宅において、パネル工法と呼ばれる軽量鉄骨造の賃貸住宅が多くなっている
・建築費、減価償却費、解体費用など、さまざまな視点を持つことが重要
「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」
建物の構造は、大きく「木造(W造)」「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」「鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC造)」の4つに分かれます。
S造とは、柱や梁など骨組に鉄骨を使用した建て方のことを指します。ちなみに、「S」はスチールの略で、柱が鉄になっており、強度を高めた鉄を使用しています。S造の中には、「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類があります。鋼材の厚みが6mm以上あれば「重量鉄骨造」、6mm未満のものを「軽量鉄骨造」と呼びます。
賃貸住宅においては、RC造、S造等が主な構造ですが、パネル工法と呼ばれる軽量鉄骨造の賃貸住宅が多くなっています。他の建て方に比べ費用が抑えられ、また耐震基準レベルが高く、工期が短いため、オーナー様から支持を得ています。
大和ハウス工業の賃貸住宅は、主に「軽量鉄骨造」を採用しています。軽量鉄骨造と重量鉄骨造では、鋼材の厚みに差があると述べましたが、重量鉄骨造のメリットとしてあげられる点は、構造上の理由から『自由度の高い間取り』『広い空間』などです。
「重量鉄骨」の方が、言葉のイメージ的に強そうですが、どちらも耐震性能が高いといえます。重量鉄骨造は重さがある分、揺れた時の衝撃を吸収しやすいという特徴があります。対して軽量鉄骨造は、重量鉄骨造に比べると、骨組みは細く軽いですが、筋交いを多く使用するブレース工法などを用いることで耐震性を上げています。
また、『遮音性』に関しても、確かに重量鉄骨造は、使われている柱が太く、それを覆うために壁も厚くなる分その効果は高まりますが、軽量鉄骨造でも床材などの建築資材を変えるだけで、高い遮音性が期待できます。
収益性と工法
賃貸住宅経営の収益性で重要な、建築費や減価償却費の観点で比較すると、少々異なります。
まず、同規模の賃貸住宅ならば、建築費は軽量鉄骨造の方が安くなります。それにともない、固定資産税等が安くなります。構造による賃料差はあまりありませんので、軽量鉄骨造の方が高利回りが期待できます。また、軽量鉄骨造の賃貸住宅は、耐用年数が19年(鉄骨3mm以下)、27年(3~4mm)の2パターンあります。重量鉄骨造の賃貸住宅では34年になります。同一価格の物件では、軽量鉄骨造の方が減価償却費が多くとれることになります。しかし、物件価格は重量鉄骨造の方が高くなることが多いので、減価償却費に関しては、時に重量鉄骨造の方が多くとれることもあります。
参考までに、建て方別の法定耐用年数をまとめると以下のようになります。
軽量鉄骨と重量鉄骨の特徴比較
軽量鉄骨造 | 重量鉄骨造 | |
---|---|---|
19年、27年 | 法定耐用年数 | 34年 |
柱と梁だけでは強度を保てないために筋交いを使う「ブレース構造」 | 構造 | 柱と梁を一体的に固定し、筋交いを不要とする「ラーメン構造」 |
建設コストが比較的安い →固定資産税も少なく済む |
メリット | 柱の数を少なくすることで、広いフロアや自由度の高い間取りが可能。 |
筋交いを使う分、レイアウトの自由度は下がる | デメリット | 建設コストが比較的高い |
高層ビルや高層マンション等に用いられる「鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC)」は47年。同じく、鉄筋コンクリート造(RC)は47年です。ハウスメーカーなどが多く採用している、重量鉄骨造(厚さ6mm以上)は34年、軽量鉄骨造(厚さ3mm~4mm)は27年、軽量鉄骨造(厚さ3mm以下)は19年です。また、賃貸住宅ではあまり見かけませんが、木造は22年となっています。
もちろん、この耐用年数を過ぎても、建物が使えないということはありませんし、耐震性が落ちるということもありません。この年数はあくまでも、会計上に定められた年数であることに注意してください。
最後に、旧耐震賃貸物件をお持ちの方が建て替えを行う場合、まず既存物件の解体を行わなければなりません。解体費用については、軽量鉄骨造の方が安価となるケースが多いようです。建て替えを前提とした収支計画を立てる方は少ないかもしれませんが、この解体費用の差は、見えない利回りの差につながります。