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コラム vol.341-2
  • 賃貸住宅経営のポイント

「所有者不明土地」とは? ~増加する理由と問題点について~

公開日:2020/11/30

POINT!

・所有者不明土地は、不動産の取引や利用に大きな支障が生じる

・2018年11月「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行

前回のコラム「土地活用にもパラダイムシフトが必要な時代となった」でも、今年2020年は土地・住宅政策の転換となる、新たな総合的土地政策や住生活基本計画の変更を行う年回りであることをお伝えしました。

実際、空き家や所有者不明土地(≒空き地)の問題が、全国的に広がっています。土地活用をする土地オーナー様から見ると、放っておけない話です。
政府も、中長期的な視点から、様々な対策を取り始めています。
これから数回に分けて、ここ数年、土地活用を行う上で、大きな影響のある「所有者不明土地」問題についてお伝えします。

「所有者不明土地」とは

2017年の所有者不明土地問題研究会(一般財団法人国土計画協会)によれば「2016年(平成28年)時点の所有者不明土地面積は、地籍調査を活用した推計で約410万haあり、九州(土地面積:約367万ha)以上に存在する」という衝撃的な報告がされました。

「所有者不明土地」とは、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成三十年法律第四十九号)の定義では、「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」のことをいいます。

つまり、次のような土地のことです。

  • ・登記簿や固定資産課税台帳など所有者がわかる台帳が更新されていない土地
  • ・複数の台帳で記載内容が違うことから、「誰がその土地の所有者か?」を、すぐに特定することが難しい土地
  • ・所有者は特定できても、その所有者の所在(転出先や転居先)がわからない土地
  • ・登記名義人が既に亡くなっており、その相続人=所有権者が多数となっている共有地
  • ・所有者がわかる台帳に、全ての共有者が記載されていない=「誰がその土地の所有者か?」がわからない共有地

何故、発生&増加するのか?

所有者不明土地が発生する、主な理由として挙げられるのが、社会が大きく変化していること。具体的には「相続時」に「登記をしなくてよく」、また、相続時に登記をしなくても「(その時は)困らない」という現状です。それは、以下の国土交通省の調査データからも明らかです。

図:世帯の所有する空き地の取得原因等

(出典)国土交通省「土地基本調査」
(注)本調査における「空き地」には原野、荒れ地、池沼などを含む

(出典)国土交通省「土地基本調査」
(注)本調査における「空き地」には原野、荒れ地、池沼などを含む

国土交通省「人口減少・高齢化社会における土地利用の実態に関する調査」より作成

そもそも登記とは「どのような不動産か?」「誰がその不動産の所有権などの権利を持っているか?」ということを証明する(公示する)制度です。
表示に関する登記は税務当局が徴税のため情報を把握したいという理由もあり、法的にも強制で費用は掛かりません。ただ、権利に関する登記は、法的にも任意の制度になっています。

所有者不明土地の問題点とは

所有者不明土地は、不動産の取引や利用に大きな支障が生じます。例えば、誰が所有者かわからなければ、売却や貸し借りなど取引できません。子どもが多く、人口が増えていた時代に共有で相続したが登記をしなかった不動産が、時を経て、権利者が増えてしまったり、親族といってもお付き合い自体が疎遠となり、話をまとめるのに苦慮したり、「どこに共有者がいるのか?」がわからなかったりします。また、郊外や地方では過疎化が進み、不動産の価格(≒不動産価値)が減少し、誰も欲しがらず、所有者自体が誰なのかがわからなくなってしまった管理不全の不動産もあります。

さらに、不動産の近隣住民が迷惑を被るケースも多々あります。例えば、今にも朽ちそうな築年数が古い建物が建っている土地、不法投棄などがされゴミ屋敷のようになり悪臭が漂っているような土地、草木が生い茂り、虫などがわいている管理不全の土地です。
このような土地では、所有者が誰かわからなければ文句も言えませんし、かといって勝手に立ち入り、対処することもできないので、非常に困った状態に陥ります。

2017年(平成29年)12月に出された、前述の所有者不明土地問題研究会最終報告「眠れる土地を使える土地に『土地活用革命』」でも、支障事例から見た、所有者不明土地の問題点として、次の5つの点を指摘しています。

  • 1.不動産登記簿の情報が必ずしも最新ではない
  • 2.土地所有者の探索に時間・費用がかかる
  • 3.探索しても真の土地所有者にたどりつけない可能性がある
  • 4.必ずしも既存制度が活用されていない
  • 5.弊害は多岐にわたる。例えば、国土荒廃、課税漏れ、獣害、治安悪化、廃墟、土地利用・取引の停滞など

このような中、2018年(平成30年)11月に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行されました。
例えば、所有権の登記名義人が亡くなった後、長期間にわたって(相続)登記がされていない土地があった場合、亡くなった方の法定相続人等権利持っている人を探索したうえで、登記官が職権で長期間相続登記未了であることなどを登記に付記して、法定相続人等権利を持っている人に登記手続きを直接促すことができるようになりました。

ただし、所有者不明土地問題を解消するためにはまだまだ必要なことが多くあります。

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