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コラム vol.109

なるほど納得!土地活用の基礎知識
第2回【市場的条件から見た土地活用】
借りる人がいないと困ります

公開日:2016/02/25

賃貸需要世帯数の動向

土地活用をするうえで、「借手がいるかどうか」は本質的な問題になります。しかも、建物を建てて貸すということの多い土地活用では、中長期にわたって運営が成り立つかどうかということが、実施の判断を左右しますので、マクロからミクロに及ぶ市場分析的な視点が欠かせません。
賃貸需要がその地域でどの程度発生しているかというトレンドについては、総務省統計局や自治体の資料から、一定期間内にどの程度の人口および世帯数の増減があったかという数字と、そのなかの何パーセントが貸家住まいかという割合から類推することができます。
例えば、東京都を見た場合、2008年(平成20年)から2012年(平成24年)の5年間で人口は346,808人増加、世帯数は339,385世帯増加しています。人口と世帯数の乖離が小さいということは、人口構成の中で単身世帯が多いということが考えられます(人口増加数÷世帯増加数=@1.02人/世帯)。
そして、東京都の持家率は平成20年で44.6%ですから(東京都統計)単純に借家率を55.4%とすれば、増加世帯の内、約188,000世帯が賃貸住宅を必要としている世帯といえます。

賃貸住宅建築の動向

一方、その間にも続々と賃貸住宅が供給されており、こちらは国交省の住宅着工統計から数字を拾うことができます。先ほどと同じ期間(2008年から2012年)に東京都で着工された貸家の数は、合計約273,000戸。つまり、需要約188,000世帯に対して約1.45倍の供給がなされたということになります。さまざまな雑誌や新聞で住宅の供給過剰が取り沙汰されていますが、数字で見る限りこれを裏付けることになります、でも本当でしょうか。

解体・除去の数

一方解体・除去される建物についてはほとんど取り上げられることがありません。
総務省統計局の住宅土地統計調査では、用途ごと、建築時期ごとに分類した建物のストック数が発表されています。平成20年調査と平成25年調査における借家の建物数を比較すると、下の表のようになります。
つまり、着工される数のおよそ半数が解体撤去されているということです。4世帯の賃貸住宅を壊して8世帯の物件に建て替えるというイメージでしょうか。
この割合を、先程の「需要の約1.45倍の着工がされている」という数字に反映させると、「約0.7倍」ということで、新規着工によるストック増加は割り引いて考える必要があるということがわかります。

また、滅失住宅の平均築後経過年数は英国77年、米国55年に対し日本では30年となっており(国交省推計値2006)、比較的短い期間で解体されてしまいます。つまり、バブル以前に建てられた多くの賃貸住宅はすでに滅失し、1980年代後半から90年代半ばに建てられた多くの建物も今後10年間で滅失が始まると考えられています。
そして、90年代半ば以降に着工された賃貸住宅の数は景気後退の影響もありそれ以前と比較して決して多くはありません。

建築時期別賃貸住宅ストック(東京都)

建築時期 平成20年 平成25年 解体除去数
昭和45年以前 282,000戸 231,100戸 ▲50,900戸
昭和46~55年 419,900戸 406,000戸 ▲13,900戸
昭和56~平成2年 625,900戸 607,300戸 ▲18,600戸
平成3年~12年 651,400戸 603,400戸 ▲48,000戸
合計 1,979,200戸 1,847,800戸 ▲131,400戸

賃貸住宅ストック予想(全国)

1951年(昭和26年)~2014年(平成26年)

出典:国土交通省「住宅着工統計(時系列)」

平成25年住宅土地統計調査からわかること

同様に、平成25年住宅土地統計調査の速報値が発表になった平成26年7月、「貸家の空室率が悪化した」という報道が駆け巡りました。平成20年時点で政令指定都市として指定されていた自治体は18ありましたが、これらの合計を見ても16.8%だった空室率が17.1%と0.3ポイント悪化していますので、確かに合っています。しかし、中身を見てみると、実は半分以上にあたる10都市においては逆に改善しています。
また、持家率についても半数の9都市が減少しています(家を借りる人の割合が増えている)。いずれにしても、統計的なデータは詳細を読み込まないとイメージが先行してしまうということが少なからずあります。
例えば、「東京都とはいえ少子高齢化は避けられない」という論旨の話をよく耳にします。平成3年から平成23年にかけての年齢構造指数の推移(東京都)を見ると、年少人口指数は19.7→17.5、老年人口指数は14.5→30.3と確かに少子高齢化の様相を呈していますが、従属(生産年齢)人口指数は34.2→47.8とこれを大きく超えた伸びを示しています。確かに東京都では、子どもが生まれず、高齢化も進んでいますが、それ以上に大人の勤労者(生産年齢世代)が流入しているということをあらわしています。そして、賃貸住宅経営においてはまさにその生産年齢の人口動向が大きく影響を及ぼすといえます。

人口集中地区(DID)

政府や自治体のデータでは、都道府県や首都圏といった大きなくくりで人口減少などが語られることが多いのですが、同じ都道府県内であっても人口が集中している地域もあれば、そうでない地域もあります。
この数値は、「人口集中地区(DID)」という数値を読み解くことで把握できます。
DIDが最も多いのは、東京都でDID人口比率は98.2%。ほぼすべての人口が人口集中地区にいるということになります。続いて大阪府、神奈川県も90%を超える分布です。一方、最も少ないのは島根県で25.0%。こちらでは、県内の4分の1にあたる地域を選択しないと賃貸住宅事業は苦戦を強いられる可能性があるということです。

商品になっているか?

同じ地域でも、間取りや面積、賃料によって市場性の有無に差が出ますので、投資計画を立てるうえでしっかり検討しなければなりません。しかしそれでも市場に受け入れられず、空室に悩む物件もあります。それらの多くは、「商品になっていない」ということが原因です。レンタカー会社や中古車販売店はどの町でも見かけますが、おしなべて店頭に並ぶ車はピカピカに磨き上げられています。
では、賃貸住宅はどうでしょう。車でいえば、廃車寸前の物件も、なんの手入れもされないまま、商品としてポータルサイトに掲載されていたりします。市場分析ももちろん重要ですが、まずその物件が「商品」として市場にリリースしてもおかしくないようなクオリティーを保っているかということを確認すべきです。
賃貸住宅は、賃料という対価を払って部屋を借りていただく商品であるという大前提を忘れずに、賃貸住宅経営に取り組んでください。

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