大和ハウス工業株式会社

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土地活用ラボ for Biz

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ビジネスイノベーションを加速する物流戦略 内田和成×浦川竜哉コラム No.5-1

早稲田大学大学院商学研究科
早稲田大学ビジネススクール教授
内田和成
 × 
大和ハウス工業株式会社
常務執行役員建築事業担当
浦川竜哉

スペシャル対談

自らイノベーションを実現してきた大和ハウス工業「Dプロジェクト」

浦川内田先生には、ご著書『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(日本経済新聞出版社)において、大和ハウス工業の「Dプロジェクト」をイノベーションの好事例として取り上げていただきましたが、今振り返れば、大和ハウス工業建築事業部の歴史そのものが、イノベーションの歴史と言ってもいいかもしれません。

大和ハウス工業は今年60周年を迎えます。この60年間のうち、大きく分けて4つのビジネスモデルの変遷がありました。
第一ステージは、物流倉庫建築の建築会社として設計施工を請け負うビジネスです。
第二ステージは1970年代後半、高度成長とともに国民の所得も増え、モータリゼーションが発達し、自動車が非常に普及しました。すると、駅前を中心とする商店街から、郊外のロードサイドに店舗が移り、外食チェーン店や衣料品店など、さまざまな店舗が郊外に建つようになりました。そこで当社では、地元の土地オーナーにまず店舗を建設していただき、そこに商業店舗の賃貸事業を斡旋するというビジネスを展開しました。

第三ステージは、1992年に旧借地借家法が改正されて、事業用の定期借地権が設定されたことによるビジネスの変革です。それまでは、いったん貸借の契約が成立してしまうと、借主側の権利が非常に強かったのですが、この法改正によって、借主は契約満了時に自らの建てた建物を自らの費用で解体して、更地の状態で土地オーナーに返還しなければならなくなりました。また、再契約や更新についても「不可」という指定が可能になりました。
これによって、土地オーナーは建設投下資金ゼロで土地を貸すことができるようになり、土地活用としての店舗および事業所建設が爆発的に増えました。さらに、大型の物流センター、倉庫などについても、土地オーナーに資金や誘致他の負担をかけることなく、開発を進めることが可能になりました。

そして第四ステージは、SPC(Special Purpose Company)法の施行以降の変化です。1998年9月、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律、SPC法が施工されました。このSPC法が施行されてから、不動産の流動化による開発手法が普及していきます。当初はオフィスビルなどに利用されていたのですが、2003年、このSPCを使った日本の物流での第1号物件を、東京都の武蔵村山でスタートさせました。今ではこのSPC、不動産の証券化、流動化を使った開発手法が圧倒的多数となっています。

内田土地を活用したい土地オーナーと店舗を出店したいテナントがいますが、土地オーナーのニーズとテナント側のニーズは、どちらが先にあるのですか?

浦川両方です。現在、テナント側と土地オーナー側の双方がそれぞれにネットワークをつくり、情報共有を行っています。複数の土地をお持ちの土地オーナーが多いので、税務財務的なアドバイスを含めて、有効利用をお勧めしています。
テナント側については、企業ごとに出店戦略をお持ちですので、企業の成長戦略の一環として、出店戦略のお手伝いをさせていただいています。

内田今のお話をお伺いしていると、リクルートのビジネスモデルに似ていると思いました。リクルートという企業は、一方に働きたい人がいて、もう一方に人を集めたい人がいて、それをマッチングする。こちらに住宅を売りたい人がいて、こちらに買いたい人がいて、それをマッチングする。そういう仕事を「両手のビジネス」と呼んで、それをずっと標榜してやってきた企業なのです。
そういう意味では、一方に、土地を持っているけれど自分ではどう活用したらいいかよくわからない人がいて、もう一方に、モータリゼーションや流通の改革の中で、何か新しいお店を出したいとか、ビジネスチャンスを捉えたいという人がいる。それを御社が非常にうまくマッチングさせたのではないかと思いました。
もともと、御社は土地オーナーとも施主ともつきあいがありますから、そうした信頼関係のプールがあって、なおかつ彼らが何に悩んでいるのか、何に困っているのかを理解されていますよね。第二ステージのビジネスが非常に大きく伸びた要因は、そこにあるのではないかと思いました。

浦川土地オーナーとひと言でいっても、土地をどう活用するかのポイントは、皆様、違います。単に収益を上げたいということであれば、敷金、建設協力金を投下していただき、収益を最大限に上げる方法を提案します。逆に、収益よりも相続対策が大事で、借入を逆に多くしたいという場合は、敷金も建設協力金もご用意いただく必要はなく、敷金と賃料のウエイトをテナント企業と調整します。また、テナント企業に関しては、特に物流の場合、プロパティマネジメントも請け負いますので、日常の業務の管理なども行います。そうすると、毎日のおつきあいの中で、この商品がよく出ているとか、在庫が増えて回転率が悪くなっている、といった分析ができます。
あるいは、ある地域の拠点が増えている場合、別の拠点が手薄になっているので新しい情報が必要なのでは、などといったことが、日々の関係の中でわかるようになります。
そうした長期にわたるおつきあいを通して、テナント企業の出店戦略や拠点戦略、もしくはその企業がとるべき次の一手、成長戦略を提案することが可能になるわけです。

内田SPCによる物流施設の展開は、当時としては非常に画期的な取り組みでしたが、最初から順調というわけではなかったと思うのですが。

浦川2002年以降は、不動産の流動化が順調に増えていくと思ったのですが、実際にはそうではありませんでした。やはりSPC、不動産の証券化ということ自体が、まだ世の中にまったく認知されていなかったのです。
武蔵村山の第1号物件は、総投資額の約30%をエクイティで優先出資して、残り約70%をレンダー、金融機関から借入するというスキームでスタートしました。しかし、なかなか計画が進まなかったため、エクイティの優先出資の部分については、当社の比率を高めていきました。優先出資の部分も、他社から募るのではなくて、フルで当社が出資していきました。

内田資金が寝てしまう危険はありませんでしたか。

浦川当社の優先出資の比率を高めていくと同時に、出口対策を行いました。まず、私募ファンドをつくりました。最初に4つの大和ハウス工業ファンドをつくり、だいたいひとつのビークルで200~300億円くらい。それをひとつの器にして、その中に我々が出資したものを入れて、資金回収をしていきました。そうすることで、大和ハウス工業本体のオフバランス化を図り、資金が寝ることを防いだわけです。
そして、一昨年、2013年11月に念願のJリート「大和ハウス工業リート」を上場させました。もともとJリート市場では、オフィス、商業、レジデンスなど、SPC法が施行されて最初に開発が進んだリートはどんどん上場したのですが、物流はまだまだ遅れていました。
しかし、その後、物流関連各社のファンドが上場し、不動産の流動化が非常に活性化されていったことから、今では何の問題もなく、物流施設への投資、入れ替えがなされるようになっています。
こちらの出口対策も、「Dプロジェクト」として行っています。60年間のさまざまなビジネスモデルを組み入れた、入り口での「Dプロジェクト」開発については、先ほどもお話ししましたが、それと同時に、出口対策での私募ファンド、上場リートを組み合わせて提案しています。
たとえば、あるアパレルのSPA企業様との共同物流事業では、事業会社を私募リートでつくり事業展開をしていきます。このように、私募ファンド、上場リート、私募リートを用意し、出口も増やしていきました。
つまり、入り口の開発と出口の開発、これらを同時に行っていったわけです。

内田レンダー側としても最初はあまり乗り気でなかった。ところが、私募ファンドにすることで、徐々に融資を積極的に行われるようになったのは、どのような理由だと思いますか。

浦川少し時間はかかりましたが、レンダー側とも密接な打ち合わせをしながら物件をまとめるなど、彼らにとって融資しやすい形を試行錯誤していきました。

内田大和ハウス工業さん自ら、事業の優位性や評価なども含めて、不動産の証券化、流動化ビジネスを開発されていったということですね。

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