大和ハウス工業株式会社

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土地活用ラボ for Biz

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ビジネスイノベーションを加速する物流戦略 内田和成×浦川竜哉コラム No.5-4

早稲田大学大学院商学研究科
早稲田大学ビジネススクール教授
内田和成
 × 
大和ハウス工業株式会社
常務執行役員建築事業担当
浦川竜哉

スペシャル対談

リスクとどう向き合うか

内田今後の展開におけるリスクについてお伺いしたいと思います。ひとつは、御社にとって非常に脅威と思う競争相手、潜在的な競争相手とは、どういう事業だとお考えですか。

浦川競争相手の可能性としては、予測できるところとまったく予測できないところがあると思います。予測できるというか、今まさに起きていることですが、物流不動産の開発については、外国資本からの攻勢はすでに起きています。資金をバックに強力なライバルが参入してきています。
国内では、当社も含めて数社が先行していたのですが、不動産会社や建設会社、生命保険会社の名前もお聞きするようになり、もはや完全に異業種格闘技の様相を呈しています。ですから、今後どの業界が脅威になってもおかしくない状況になっています。

内田次に、先ほど出てきた構造変化や心理的変化についてお伺いしたいと思います。昔とは異なり、個人でも企業でも、全部を自分で持つ必要がないという状況になりつつあります。外にあるものをうまく活用するとか、持たざる経営というものが、ある種のブームになっているわけですね。お客様の立場からすると、ネットの時代ですからお店などは持たなくても直販でいいとか、配達に関してもトラックじゃなくてドローンでいいとか、さらなる変化が出てくることも考えられるわけです。
顧客のビジネスの変化を支えてきたがゆえに御社が抱えているアセットが、ある日、世の中的にはあまりニーズがなくなるといった、そういうリスクをお考えなのでしょうか。
あるいは、仮にそうなるにしても時間的猶予があることなので、リスクヘッジができているのでしょうか。

浦川持たざる経営ですね。今までのものがどう動いていくかについては、非常に予測しがたいところではありますが、最近の「Dプロジェクト」を一例として挙げましょう。
ある電機メーカーの事業撤退を受け、当社が土地を購入させていただき、土地建物はSPCでもって我々が大手運送企業に賃貸することにしました。このプロジェクトでは、単なる土地建物の売買・賃貸借に加えて、具体的には、電気から成長産業のテナントへ、業種、会社を超え人員をシフトする産業構造の転換、企業を超えた異業種間でのビジネスデベロップメントとしてお手伝いさせていただいています。
そういった観点から見れば、長期的で強固なビジネスパートナーとしての関係の中で取り組ませていただいていますので、構造的変化、心理的変化を踏まえてのチャレンジングな部分はありつつも、リスクは低減できているのではないかと考えています。

内田逆に言うと、強固なパートナーシップの関係の下、顧客の持たざる経営においても、その時々に応じてしっかり応えていけば、今、御社が持っている施設が無駄になることはないだろう、少なくとも10年ぐらいのスパンでは大丈夫だろう。そういう理解でいいですか。

浦川実は、契約満期になってからの満期解約はゼロ、中途解約やお客様のデフォルトもゼロなんです。これは、企業の成長戦略の物流機能という面において、お客様に成功していただいているからで、そうした実績も一助になっているのかなと思っています。

内田たとえば、ある家電量販店のように、大きく伸びた後に、ちょっと調子が悪くなる会社もありますよね。そこの物流形態が、自社のセンターではなくてメーカーから各店に直送してもらうやり方をとったりすれば、自社センターが不要になるといった方向での業態変更は十分あり得るわけです。そうなったとき、御社がセンターを賃貸で提供していたとしたら、それが無駄になってしまうというリスクはあるのではないでしょうか。
企業側の戦略変換だけでなく、他との競争に敗れて契約を継続しがたいケースなど、今後はいくらでも起きる可能性がありますよね。そういうリスクに対しては、どのようにヘッジされますか。

浦川おそらく、そういうことは今後増えていくと思います。ただ、先ほどの満期解約がないということがひとつのヒントになるかもしれません。結局、5年でも10年でも15年でも、償却がかなり進んでいますので、償却した後、ビジネスとして有利になるのが建主と借り主なんです。

内田なるほど。ということは、顧客のビジネス環境に非常にドラスティックな変化が起きない限り、他の物流センターにスイッチするインセンティブはないと考えていらっしゃるわけですね。しかし、彼らが競争に負けて事業を継続できなくなることは十分あり得ますよね。

浦川そうですね。「Dプロジェクト」は20年間で土地建物を回収するという考え方をしています。ですから、20年後に建物を壊して建て替えることになっても、良い土地がただで手に入ったと考えれば、何も問題はないということです。
それに、最新鋭の倉庫をつくったとしても、10年経ったら築10年の倉庫であり、20年経てば築20年の倉庫になるわけです。たとえば、今のマルチテナント型のランプウェイの物流センターも、今は最新鋭ですが、産業構造が衰退しなくても、レギュレーションや法律の変化もあり得るわけで、そこは常に想定しています。
今、中国の一部では60フィートのコンテナが走り出していますが、日本の交通事情、道路事情からして、60フィートのコンテナが普及するとは思えません。それには法律の改正も必要になりますが、60フィートのコンテナはエレベーターがあっても運べませんから、もし来港したらトラックが上がれないランプウェイの倉庫になってしまうわけですね。
こういう事業構造の変化・衰退、あるいは各種法律やレギュレーションの変化に対応して、倉庫を建て替えるには、早く償却して、その時々の最新鋭につくり替える以外の正解はないと思っています。我々の正解は、常にそこにあるのではないかと考えています。

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