特集:賃貸住宅経営 6大リスクの回避法 金利上昇リスクにどう対処するか?
公開日:2018/09/19
更新日:2021/04/23
6回シリーズ「賃貸住宅経営の6大リスク」の最終回です。
賃貸住宅経営の6つのリスクとは、これまでに述べた(1)空室リスク
(2)賃料下落リスク
(3)修繕リスク
(4)管理リスク
(5)災害リスク(1)~(5)に加えて(6)金利上昇リスクです。
今回はこの「金利上昇リスク」に対してどう対処するかについて考えます。
金利リスクとは
土地の有効活用のために賃貸住宅を建てて経営を始めるときに、銀行から借りる融資を一般的にアパートローンと呼びます(賃貸住宅のリフォームの際に借りる融資も、同様にアパートローンということがあります)。
アパートローンは基本的には、賃貸住宅の賃料で返済しますので、借り主の属性(年収など)に加えて、賃貸住宅経営の中身(=賃料収入見込みがどれくらいなのか)も、融資審査の大きなポイントとなります。
ほとんどの銀行がアパートローンを商品として扱っています。多少条件が異なりますが、期間は35年が上限、そして固定金利と変動金利の2パターンがあります。
固定金利は、定められた期間内(あるいは全期間)金利が固定されているローンです。固定金利の場合は、金利が上昇するリスクはありません。賃貸住宅経営を始めるとき(借入時)には、想定賃料、想定経費、ローン支払いなどを含めた収益シミュレーションを立てますが、このシミュレーション上において、ローンに関する支払額が想定よりも増えることはありません。
一方、変動金利の場合は、市況などによって金利が変化します。
以下、変動金利(連動金利)に関するみずほ銀行のホームページからの引用です。
- ●新規お借入時の金利は短期プライムレート連動長期貸出金利の当行最優遇金利(期間3年超)の変更日から2週間後に見直しさせていただきます。
- ●お借入後の金利の見直しは短期プライムレート連動長期貸出金利を基準として変更日の2週間後以降の最初に到来する約定返済日の翌日より行います。その場合、短期プライムレート連動長期貸出金利の変更幅と同じだけ引き上げ、または引き下げます。
- ●金利に変動があった場合は、新お借入金利、残存元本、残存期間に基づき新しいご返済金額に見直しさせていただきます。
このように、金利上昇の可能性も金利下落の可能性もあり、当初の収支シミュレーションが変わる可能性があります。一般的に固定金利より変動金利のほうが、金利が低くなるので、変動金利を選ぶ方が多いようですが、金利の上昇リスクが伴うので注意が必要です。変動金利から固定金利に変更もできる(有償、無償の場合があります)ので、大きな金利上昇基調になれば変更すればいいと考える方も多いようです。いずれにせよ、シミュレーションが変わってしまうリスクがあります。
当初の収益シミュレーションが変わらない賃貸住宅経営を希望するなら固定金利、多少のリスクがあっても収益性重視ならば変動金利、というのが定石でしょう。
ちなみに、実際の金利については、契約日ではなく借入実行日の金利が適用されるので、注意が必要です。
2010年以降の各種金利の推移
2010年以降の各金利の推移を見ておきましょう(図1)。
図1:各種金利の推移
一番下のグレーの線は長期国債(10年)の推移です。「マイナス金利政策」を始めた2016年当時マイナスだったことがわかります。また、金融緩和政策が施行された2013年半ば以降、いずれの金利もかなり低くなり、以降低水準で推移していることがわかります。
また、銀行金利は店頭金利ですので、ハウスメーカーなどで賃貸住宅を建てると、実際にはメーカーと銀行間で結ばれた優遇金利が適用されますから、この数字より低い金利となる場合が多いようです。
図2:賃貸住宅融資(35年固定)の推移
住宅金融支援機構HPより作成
図2は住宅金融支援機構の賃貸住宅融資(35年固定)の金利推移です。
こちらも2013年以降、2016年のマイナス金利政策導入時頃まで下がり続けました。それ以降は1.5% 前後で横ばいとなっていましたが、2020年以降は、少し上昇し、2%弱という水準です。
これから金利はどうなっていくのか、多くの方の関心事でしょう。
2020年からの新型コロナウイルスは各国経済に大きな影響を与えました。日本を含め多くの国で多額の国債が発行されました。本来は国債金利上昇可能性もあると思われましたが、中央銀行の政策もあり国債金利は低位が続いています(2021年4月現在)。
いまのところ、政府や日銀の方針発表などから推測すると3~5年程度の中期的に見れば低金利が続くと思われますが、その後は不透明で金利上昇、ローン金利上昇の可能性も否定できません。こうしたことも合わせて考えて、変動金利か固定金利の選択を行うとよいでしょう。