大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

メニュー
コラム vol.468
  • 土地活用税務コラム

ホールディングス(持株会社)は、事業承継において有効な方法

公開日:2023/10/31

ホールディングスを設立する

現在、多くの中小企業において、事業承継は大きな課題となっています。息子に継がせるか、生え抜きの従業員に継がせるか、それとも第三者に売却するか、社長にとっても、事業承継の戦略を決断しにくい状況になっていると言えるでしょう。
この3つのパターンで、会社としてどのようなかたちがあるのか考えた時、私はホールディングス化(持株会社の設立)※を有効な手立てとしておすすめしています。

  • ※ホールディングス(持株会社)とは、子会社の株式を保有する会社のこと。株式を保有するだけで事業を行わない「純粋持株会社」と事業を行う「事業持株会社」があります。

ホールディングスを設立し、事業を行ってきた会社の株式や不動産などの資産を保有し、管理します。事業会社は事業を行うために残し、ホールディングスではオーナーや家族の資産を増やしていくために、不動産を活用しながら資産運用を行います。事業が厳しくなった時はホールディングス会社で持っている不動産の家賃収入が事業を助けることもあるでしょうし、仮に事業を第三者に売却したとしても、ホールディングスがあることでオーナーと家族に資産が残ります。
事業会社とホールディングスを分けることで、資産は残しながら、事業を将来そのまま子どもに継いでもらってもいいし、生え抜きの従業員に事業会社だけ継いでもらってもいい。また第三者にM&Aで事業会社を売却することも考えられます。そのような選択肢が増えるので、オーナーとして将来への安心感も増すのではないでしょうか。

ある事例では、将来の事業承継を目的として、事業会社と、ホールディングスといってもいわゆる資産を管理する資産管理会社を兼任するようなかたちで持ち株会社を設立しました。
家族を含むオーナーの資産と事業の資産を区分けすることが大事です。中小企業の場合、事業会社の中に個人の資産と事業としての資産が混在してしまうケースがあります。そこをしっかり分割して管理することで、事業の収益性が見えてきます。逆に言うと、オーナー個人や家族の資産は当然残しておいたほうがいいわけです。将来M&Aで会社を売却することがあっても、自分の資産まで第三者に売却する必要はなく、事業だけを売却することもできます。
すでに不動産収入と事業収入がある会社の場合、事業の収益と不動産収益が明確になっていない会社もあります。このふたつを別の会社に切り分けた時、それぞれの事業の実態が見えてきます。内部統制の管理という意味でも、会社を分けることには効果があります。また、不動産が本業を助ける時もあります。事業会社の資金繰りが苦しくなったときは、不動産で貯めた収入で本業を支援することもできますし、売却して現金化をして、資金を援助することで、コロナ禍のような厳しい状態を耐え抜くこともできるかもしれません。不動産を活用して選択肢を増やしておくことはやはり有効だと考えられます。

不動産の有効活用という点においてもホールディングスは有効です。昨今の不動産価格の上昇によって、不動産の活用方法も変わってきています。状況によって不動産の活用方法を変えるためにもホールディングスは良い選択だと考えられます。ホールディングス化することで、将来どの選択肢でも取れるような体制を整えることができます。

不動産を購入する時は「どのように購入するか」を考える

中小企業の資産防衛対策として不動産を購入する際は、「どのように買うか」というスキームがとても重要になります。例えば、両親が買ったほうがいいのか子どもが買ったほうがいいのかというシンプルな話もあれば、会社でホールディングスを設立して購入したほうがいいなど、方法はいくつもあります。いろいろな会社の決算書、確定申告書等を見ていると、「別の方法があった」と思うことがあります。どのように購入するのがいいのか、ご自身にとってふさわしい方法を専門家に相談しながら検討することが重要です。当然、どこの場所にどのような不動産を購入するかも重要ですが、スキームと不動産をミックスすることで、より良い方法が選択できると思います。

相続は長期で考える

相続は、事業承継も含めて、時間があればあるほど対策の幅が広がります。
例えば「生前贈与」。令和5年度の税制改正で7年に延長されましたが、これまでの税制で言えば、亡くなられてから3年以内、生前贈与は差し戻されて相続税が計算されます。亡くなる3年前に言われてももう遅いが、20年前からしっかり贈与していれば効果が得られたという、長期の時間軸が必要となる代表例です。贈与をするのであれば、計画的に行うことが大切です。
相続の発生日は誰にも分からないものですが、どのように承継していくのか計画立ててやっていく。令和5年度の税制改正は、お客様にそのような意識を持っていただくためにも、良い方向につながるものだと思います。
もう一つ不動産が絡む例として、自社株の評価において、取得してから3年以内の不動産については時価評価をするように通達で定められています。逆に言えば、3年経過した不動産は相続税評価額になります。「来年承継したいから対策を練りたい」と言われても、3年置かないといけないので、これにもやはり時間が必要です。

事業承継は物的承継と人的承継の二つに分かれます。物的承継は自社株をどうやって承継していくか、人的承継は後継者をどう育てていくかということです。経営者の育成においては、さらに長い期間が必要です。短期間で経営者を育てるのは難しいものです。オーナー社長が10年後に子どもに継いでもらいたいのであれば、早い段階から、税理士を交えながら、経営に関する数字を理解してもらうことが大切です。その上で、経営に関する知識や経験の蓄積、将来の計画を進めていく必要があります。

メルマガ
会員登録

注目
ランキング

注目ランキング