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コラム vol.475
  • 不動産市況を読み解く

2024年の賃貸住宅融資金利の見通し

公開日:2023/12/26

2023年11月末ごろから、日銀は金融緩和策の出口を模索するような様相(例えば総裁の発言など)に変わってきました。それに呼応するように為替相場は円高傾向に振れ、日々の値動きが大きくなってきました。同じように、国債金利は一時低下気味でしたが再び上昇基調になっており、為替相場・債券市場とも、上下に激しくぶれる動きとなっています。特に、国債金利は、融資の固定型金利の基準として大きな影響を与えるため、相場の推移が気になるところです。また、「金融緩和策が解除されると、金利は一気に上がるかもしれない」と考える方もいるかもしれません。今回は、賃貸住宅融資(アパートローン)金利の見通しを考えてみましょう。

1億円借りれば0.5%の上昇で返済総額1000万円

土地活用として賃貸住宅建築を行う方の多くは、金融機関や住宅金融支援機構などの「賃貸住宅建築ローン」、通称「アパートローン」を利用します(以下、アパートローンと表記します)。そのため、金利はとても気になることでしょう 賃貸住宅経営の計画では収益シミュレーションを細かく策定しますが、キャシュフロー計画の支出で大きなウエイトを占めるのがローン支払いです。ローン支払いは元金分と利息分の合計で、このうち利息金額に大きな影響を与えるのが金利です。
例えば、住宅金融支援機構の35年固定金利のアパートローンで、1億円を元利均等方式(支払額一定の方式)で2%の金利で借りた場合と2.5%で借りた場合を比較すると、2%では月支払331,262円、支払総額139,130,208円ですが、2.5%の場合は月支払357,495円、支払総額150,147,990円となります。毎月の差額は26,233円で大差がないようにも思えますが、支払総額の差額は11,017,782円。0.5%の金利差によって1100万円以上も多く利息を払うことになります。 このように、賃貸住宅建築のように借りる金額が大きく、35年間という長期間の借入では、わずかな金利上昇でも大きな差となります。

アパートローン金利の状況

銀行などの金融機関では、アパートローンでも住宅ローンでも、表向きの「店頭金利=基準金利」と、提携などの要因で店頭金利を多少引き下げた「適用金利」や「最優遇金利」が提示されるのが一般的です。これらは金利表に「店頭金利から▲0.5%」などと記載されています。また、各銀行には多種多様なアパートローン商品があります。建築する物件に制限(省エネ・子育て世帯向け・まちづくりなど)はありますが、参考金利が提示されている「住宅金融支援機構」の「賃貸住宅融資金利」の動向を見てみましょう。
ここ1年間の住宅金融支援機構の「賃貸住宅融資金利」(繰上返済制限制度無の場合)は、15年固定では1.8%台~2.1%台、35年固定では2.0%台~2.2%台となっています。
35年固定の直近2023年10月・11月・12月の参考金利を見ると、10月→11月は0.1%弱上昇しましたが、11月→12月はわずか0.01%ですが下がっています。

表:賃貸住宅融資金利 参考金利推移

  繰上返済制限制度無
  35年固定 15年固定
令和5年4月 2.06% 1.88%
令和5年5月 2.07% 1.92%
令和5年6月 2.02% 1.84%
令和5年7月 2.04% 1.86%
令和5年8月 2.09% 1.96%
令和5年9月 2.18% 2.05%
令和5年10月 2.19% 2.08%
令和5年11月 2.26% 2.14%
令和5年12月 2.25% 2.14%

住宅金融支援機構「参考金利推移」令和5年11月29日作成より作成

住宅ローンとアパートローン

住宅ローンは、「一般国民の住宅取得をサポートする」側面が強く、ほぼどの金融機関もある程度パッケージ化されたローン商品を揃えています。そのため、いわば「投資用の住宅」である賃貸住宅取得(建築)用のローンよりも、格段に低い金利設定となっています。
しかし、住宅ローン・アパートローンとも、固定金利は長期国債金利(あるいは長期プライムレート)に、変動金利は短期プライムレートに連動しています。プライムレートは金融機関が優良企業に融資する際の最も優遇された貸出金利で、長期は1年を超える期間、短期は1年以内のものです。これらの金利に各種リスクプレミアムや利益を上乗せしたものが提供金利となります。こうしたことから、「住宅ローン金利の動向」と「アパートローン金利の動向」は同じような傾向となります。違いは、「住宅ローン金利」ほうが低いということです。

住宅ローン金利:ここ数か月の動向

ここからは、住宅ローン金利のここ数カ月の動向を見てみましょう。アパートローン金利の動きもほぼ同じですが、開示情報の多い住宅ローン金利で解説することにします。
メガバンクが10月末に発表した11月適用の固定型住宅ローン金利は、前月に比べて上昇しました。10年固定型の基準金利の単純平均では3.80%(+0.12%)と、12年ぶりの高い水準で、優遇後の金利(平均値)でも1.29%(+0.12%)となりました。固定金利は長期金利の動向を反映するため、10月中の長期国債金利上昇によるものです。10月31日に長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」とし、一定程度超えることを容認するイールドカーブ・コントロール(YCC)の再修正を決めたことで、長期金利は0.9%台となりました。大手金融機関の固定型ローンの金利は前月の中~下旬の長期金利をもとに決めるのが一般的で、11月適用分のローンに10月のYCCの再修正は反映されていないと考えられます。そのため、固定型ローンの金利は12月以降にさらに上昇する可能性は高いと思われていました。
しかし、予想に反して12月分の大手行が提供する固定型住宅ローン金利は概ね、0.1%程度下がりました。これは、11月半ばの長期金利(10年物国債金利)が10月末に比べて低下したことに伴い、固定金利が下がったということになります。 一方で、多くの方が利用する変動金利は、短期プライムレート連動となりますが、これは政策権利の影響を受けますが、今のところ動きはありません。

今後の見通し

日銀の政策において、イールドカーブコントロール(YCC)の政策変更は、固定金利に影響があります。イールドカーブは利回り曲線とも呼ばれ、債券の利回りと償還期間との相関性を示すグラフのことです。企業や個人がお金を借りやすい環境をつくるために、長短金利を操作することをイールドカーブコントロールと呼びます。徐々に「コントロール」をせず、「市場に任せる」状況へと舵を切っています。現状の日本国長期国債(10年)は米国長期国債の影響もあり、受けて価格(=金利)が上下しています。そのため、すでに1%超えを容認している状況でYCCを撤廃しても、「いきなり急上昇」の可能性は少ないと思います。また、2024年にアメリカが利下げする可能性が高くなってきており、そうなればまた状況が変わりそうです。
金融緩和策を徐々に解除することは、つまり現行の「マイナス金利政策」から「少し金利を上げる」ということです。仮に行われるとすれば、①サプライズ的に年明けの早いタイミング、②順当なら実質賃金の上昇が数字に表れる2024年4月頃、③慎重に見極めるなら2024年7月頃、の3つのシナリオがあると思われます。
我が国の政策金利は、2016年1月29日から-0.10%となり、その後横ばいとなっています。では、どれくらい金利が上がるか。マイナス金利の解除(0%)から最大0.25%と思われますが、仮に政策金利が少し上昇したとして、変動金利に連動する短期プライムレートがどれくらい上がるのか予測が難しく、上がらない可能性もありそうです。

こうして考えれば、2024年に金融政策の変更は行われ、その影響が徐々に市場に織り込まれていくことになりそうです。ただし、大きな金利上昇は現時点で考えられません。賃貸住宅ローン金利も2024年に入れば多少は上がるものの、それほど大きな上昇はないと思われます。
それよりも警戒しないといけないことは、金利上昇時にマスコミなどによって起きる不動産市況の「ネガティブムード形成の報道」だと思います。そのような時には報道に惑わされず、冷静な対応が求められます。

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