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コラム vol.509
  • 賃貸住宅経営のポイント

親が保有する賃貸住宅を相続する際の注意点。相続して賃貸住宅経営を続けるには?

公開日:2024/06/28

「親が経営していた賃貸住宅を相続したが、どうすればいいのか」と相続発生時に悩まれる方は少なくありません。「賃貸住宅を相続する」とひと言でいっても、さまざまなケースがありますので、一概にこうすべきと断言はできませんが、注意すべき点はいくつかありますので、押さえておきましょう。
なお、「土地活用ラボ」内の記事、「賃貸住宅を相続したときの相続手続きと注意すべきポイント」も賃貸住宅を相続した際に行うべきこととして、併せてご参照ください。

コストをかけることもなく、収益を生む不動産が手に入る?

賃貸住宅は収益を生み出すものです。ケースによりますが、現在順調に経営が行われているのであれば、親から賃貸住宅を相続した場合、初期費用もかかることなく、将来的に収益が入ってくる可能性は高くなります。
一から賃貸住宅経営を始める場合は、土地を購入し、賃貸住宅を建築する必要があります。初期費用に加えて大きな額の借入金が必要となりますので、親から相続する場合は、相続税を支払う可能性はありますが、基本的に原価コストなしで賃貸住宅という収益を生み出す不動産を手に入れることになります。
しかし、賃貸住宅経営は良い点ばかりではありません。築年数の古いものであれば修繕が必要ですし、マイナスの資産(借り入れなど)がある場合もあるでしょう。
となると、親から賃貸住宅を相続した場合、そのまま経営を続けるか、売却するかという判断をすることになります。「経営を続ける」には、解体して賃貸住宅を新築する、あるいは、解体してほかの土地活用を検討するという選択肢も含まれることになります。
賃貸住宅経営を続けたほうが良いか、売却したほうが良いかは、ケースによって異なりますので、簡単な判断ではありませんが、どのような判断基準を持って検討すれば良いのでしょうか。

マイナスの財産はどれくらいあるか

相続財産には、プラスの財産もあればマイナスの財産もあります。相続する賃貸住宅のローンの残債だけではなく、被相続人の住宅ローン、オートローン、家族や知人からの借金などがあるかもしれませんし、連帯保証債務の負担などもマイナスの相続財産となります。亡くなった人の債務は、そのまま相続人に引き継がれますので、マイナスの財産がどれだけあるのかを調べておく必要があります。

将来も収益性が維持できそうか

賃貸住宅から収益を上げ続けることができるかできないかの大きな要因のひとつに「立地」があります。現在の賃貸住宅の立地条件は、将来的にも問題がないのかを考えることが、重要な観点となります。
立地条件が良く、将来的にも賃貸住宅のニーズがある場所だと判断できれば、そのまま保有して問題ないでしょう。現在入居率が高く、収益性に問題ないのであれば賃貸住宅経営を引き継いだほうが、将来的に資産が増えるかもしれません。
ただし、相続時点では何の問題がなくても、将来的に賃貸ニーズが変化する可能性もあります。人口が減り続けている日本においては、社会情勢や市場動向を慎重に判断する必要がありそうです。
国土交通省の「令和6年地価公示」によると、令和5年1月からの1年間の地価動向は、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏においても、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。
このようなデータを参考にするのもひとつの方法です。

相続税の支払いは問題ないか

賃貸住宅を相続した場合の相続税は、現金を相続した場合よりも大きく軽減されますが、大きな相続税となる場合もあるでしょう。
相続税は、原則として、法定納期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日)までに、金融機関(銀行、郵便局等)又は所轄税務署に金銭で納付することになっています。
納付が定められた期限に遅れた場合には、法定納期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日)の翌日から納付の日までの間の延滞税を本税と併せて納付する必要があります。
もし相続税が払えない場合は、「延納」や「物納」などの制度もありますが、原則としては現金が必要です。
そのため、相続税の支払い分として現金の用意ができるかどうかも重要なポイントです。当然、その相続税負担分を今後の家賃収入として補えるかどうかも検証しておく必要があるでしょう。

賃貸住宅経営にコストがかけられるか

賃貸住宅経営を行っていくには、将来的に大きなコストがかかることを忘れてはいけません。コストには、賃貸住宅経営を継続するための管理費用や税金はもちろんのこと、将来に向けて修理やリフォームなどの費用がかかることも見越しておく必要があります。

今後かかりそうな修繕費用を考えキャッシュフローを確認

相続した賃貸住宅を引き継いで行うには、将来にわたって修繕計画や税金も含めた収支計画(キャッシュフロー)を考える必要があります。
そのためには、賃貸住宅の現状を確認し、できれば専門家に相談し、今後必要になりそうな修繕箇所や設備の改修時期などを確認し、概算の費用を把握しておきましょう。これまでにかけた修繕の費用も把握できればさらに良いでしょう。その上で、賃貸住宅経営を引き継ぐかどうかの判断をしましょう。

築古の賃貸住宅にはさらに注意が必要

建物には耐用年数というものがあり、住宅用の木造建築の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造は47年です。法定耐用年数を超えて老朽化すると、修繕の問題だけではなく、設備のトラブルなども起こりやすくなります。ご入居者のニーズに応えられなくなってしまう可能性もあり、家賃収入に影響が出てしまう場合もあります。
築年数が古い賃貸住宅は、そのぶん固定資産税が安くなりますが、減価償却費を計上できなくなくなることで計上する利益が増え、所得税などの税負担が増えることになります。
あまりにも古い賃貸住宅は、収益性向上のために大規模なリノベーションや建て替え、または売却するなどの将来を見越した対策が必要となるでしょう。

オーナーの労力コストも考慮する

賃貸住宅の経営コストは、修繕などの物理的な費用だけではなく、管理費用やオーナー自身の労力コストも計算に入れる必要があります。親から賃貸住宅を相続するということは、単なる資産を相続するのとは異なり、事業としての経営を引き継ぐことだからです。
つまり、事業として取り組んでいく気持ちとビジネスを行う知識も必要となります。収益を確保するために、コストを抑え、売上を伸ばしていく必要があるわけです。ご入居者を集めるための活動も必要ですし、日常的に、さまざまな管理業務があります。災害やご入居者同士のトラブル、急を要する対応もあるでしょう。対応が遅くなるとご入居者の満足度が下がり、退去につながることもあります。
逆に、しっかりと経営に注力し、事業として真剣に取り組めば、長期的に収益を得られる可能性は高くなるでしょう。

建替えたうえで賃貸住宅経営は可能か

新築に近い状態で相続した場合は別ですが、多くの場合、ある程度の築年数が経った上で相続するかたちでしょう。
その場合、思い切って新築賃貸住宅に建替えを検討するのもひとつの方法です。賃貸住宅経営の引継ぎを決意したのであれば、経営者として現在のニーズに合った賃貸住宅を建築するのもひとつの方法です。
前述したように、一から賃貸住宅経営を始めるのとは違い、不動産の購入費用がかかりませんので、その分、充実した設備を導入するなど、建物のクオリティを高めることができます。
周辺エリアなどを分析し、ご入居者のニーズに合致すれば、賃料収入も増加し、将来的な収支も改善できる可能性があります。

立地条件を考え、解体してほかの土地活用手段を検討可能か

不動産を所有していれば、賃貸住宅経営だけではなく、そのほかの土地活用手段も検討することができます。高齢者の多い地域であれば、介護施設なども検討できるでしょうし、郊外の道路沿いであれば、コンビニエンスストアなどの店舗も考えられるでしょう。社会情勢は変化しますので、経営者としての土地活用の戦略が必要となります。

相続人間でトラブルはないか

複数の相続人がいる場合、相続人の間でトラブルが起こることが少なくありません。特に不動産を相続する場合は分割が難しく、しかも将来収益を生み出す賃貸住宅であれば、権利を主張する相続人が現れることもあるでしょう。
また、妥協案として、共有名義で相続するケースもありますが、共有名義にしてしまうと、大規模な修繕や売却をしたいと思ったときに全員の同意が必要となり、経営にあたっての意思決定がうまくできないこともあります。
相続人の間で十分に話し合い、賃貸住宅経営にふさわしい人が賃貸住宅を相続できるようにしたいものです。

ご入居者とのトラブルはないか

立地も良く、満室状態が続いている賃貸住宅でも、ご入居者とのトラブルが絶えない賃貸住宅では、収益にも影響が出ます。たとえば、賃料の未払いが続いている、クレームが多く時間やコストがかかる、近隣でも揉めごとを起こすなどの問題は起こりうることです。現在の管理会社と相談しながら、問題を解決した上で引き継ぐのが理想的です。場合によっては管理会社を変更する必要もあるかもしれません。

売却の判断をする

ご入居者が住んでいる状態でも売却することは可能です。この方法は「オーナーチェンジ」と呼ばれ、一般的に取引されています。2020年4月1日以前は、ご入居者の承諾が必要でしたが、改正民法により、ご入居者の承諾は不要となりました。逆に言えば、購入者が、賃貸住宅にご入居者がいる状態であることを承諾する必要があります。
ただし、ローンが残っている場合は、売却代金で完済するなど、ローンのない状態で購入者に引き渡す必要があります。

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