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コラム No.27-31

サプライチェーン

秋葉淳一のスペシャルトーク 第3回 誰もやらないことをやるベンチャー精神を持つフレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

公開日:2018/11/30

秋葉:復職支援について面白いお話があると聞いています。

藤代:最初は、ファッションレンタル事業を行っているA社さんとコールセンターとしてママスクエアで出店できませんかという話でした。それは普通のビジネスなので、もちろんできますとお答えしたのですが、それだけでは面白くないので、もっと新しいことをやりたいですねと盛り上がっていきました。
A社さんはファッションで、我々は働くことと託児事業を提供しています。働くお母さんにしてみれば、働くことで忙しくなりますから、自分で洋服を探しに行ってチョイスすることが大変になりします。それなら、私たちが一緒に、ワンストップで「働くこと」と「ファッション」を提供しましょうかとなったわけです。
実際に、職場復帰が決まったときに何が大変かというと、久々に通勤するので、週5日分の洋服を揃えることだそうです。主婦として子育てをしている間は普段着でもよかったのが、久しぶりに社会に戻るので、1週間分の5着は必要となります。お母さんたちに聞くと「なるほど」と思うのですが、子どもを産んで体型が変わっている人も多いので、以前のものが着られなくなることもあるそうです。それなら、洋服を借りて働く方が効率的なはずです。A社さんとは、今後も復職する女性の支援サービスを検討していきたいと考えています。
次は食事です。忙しくなってくると、作り置いたり、食材の宅配会社に頼んだりすることが必要になってきます。さらに、働き出してしばらくすると、キャリアをもう少しつけたくなる、つまり学びたいという欲求が生まれてくるわけです。それらをワンストップで提供することができたらいいのではないかと思っています。
現在、ファッション、仕事、託児まできたので、あとは食と学びを加えて、働くお母さんたちが私たちのポータルに来てさえいただければ、仕事が決まっていればすぐに復職でき、さらに様々なサービスを受けることができる。そんなことを一緒にやりましょうと話しています。
働く人が復職しやすくするためには、自分たちのサービスだけでは限られています。秋葉社長のシェアリングビジネスではありませんが、複数社集めることによって、ワンストップで提供するというかたちを描くことができます。

秋葉:ダイワロジテックでは、ベンチャー企業を中心にパートナーを広げています。本当に彼らは優秀ですし、ロジスティクス以外の分野からの知見も非常に重要です。そういう意味においても、これからも、いろいろな企業とパートナーシップを組んでいきたいと考えています。
藤代社長もリクルートをお辞めになって起業されています。ハコブの佐々木社長も外資のコンサル会社にいましたし、アッカの加藤社長も外資の金融機関にいたわけです。それでも起業するということは、腹をくくったということだと思います。腹をくくった上で進めている人たちと、何となく今までの延長線上で仕事をしている人たちの違いは大きいと思います。その差は、たぶんこの2~3年でさらに大きく開くような気がします。僕はできれば腹をくくった側にいたいと思っています。
そう考える大きな理由の一つに、これから日本は人口が減少していくということがあります。人口が減るということは、経済的にはシュリンクしていくということです。実は私たちは、70年近く人口増加の世の中で生きてきました。戦後ずっと人が増えてきているので、私たちを含めて、今現役で仕事をしている人は、人口が増える中でしか仕事をしていません。
しかし、これからはそうではありません。経営者はそのことを真剣に見据えないといけないし、頭を使わなければいけません。そんな時代の中では、「事例はあるのか」「前例は?」という質問は意味をなしません。そう考えると、ベンチャーの人たちは、100%成功するかどうかは別として、ここにニーズがあるのではないかと考え、集中して勝負をかけるわけです。この熱量や成功させるための発想力はとても刺激になりますし、大事にしていかなければならないと思っています。

藤代:私たちは、人がやらないことをやりたいと思っていますし、やっていないところにチャンスがあると考えています。秋葉社長がおっしゃるように、他にやっているところはあるのかとか、実例はあるのかという話ではありません。誰もやっていなかったからこそ、今回やったことに大きなニーズが隠れていたことが分かったのです。
我々のようなところでないと働けないようなお母さんたちがいます。川口に1号店を出店したとき、最初は、待機児童のお母さんたちがターゲットだと思っていました。ところが、90~120人と言われていた待機児童よりはるかに多い、300人くらいの応募がありました。その人たちの話を聞くと、保育園に応募しても受からないといって諦めていた人たちが、待機児童の4倍くらいいることがわかってきました。今でも新しくビジネスを行うときには、「ママスクエアのマーケットは待機児童のママたちではない」と言っています。待機児童が日本中で2万4000人と言われている中で、働きたいけど働けないお母さんが実際には約150万人いるわけです。これは統計上のデータですから、どっちを見るべきか、それはやってみないとわかりません。しかし、1号店を出店してみたら、待機児童よりはるかに多くの「働きたい」という人たちがいました。
そして、これは語弊があるかもしれませんが、彼女たちは高い時給に限らず頑張ることができる人たちです。実際に応募してきた人たちを見ると、103万円の扶養の範囲内で働きたい人が非常に多くいるわけです。その方たちは、昇給のみを喜びません。総量が決まっているので、時給を上げてしまうと働く時間を減らさざるを得ないからです。
多くの企業が考えるのは、人が集まらない場合、時給を上げる、月給を上げるということです。「働きたい」という気持ちは、時給が動機ではないのです。ちなみに川口で募集をかけたときは、高い時給ではありませんでした。それ以降、同じような時給です。それでも、どこであっても、10倍近い応募はすぐに集まります。

秋葉:つまり、その方々の動機はお金ではなく、働いて社会に参加したい、役に立ちたい、自分の可能性を広げたい、キャリアを考えたいということなんですね。自分も働くことで存在意義を見出したいと。

藤代:そうだと思います。また、いろいろな方から「主婦の方々はビジネスの能力はいかがですか」という質問がきます。皆さん20代の頃はOLとしてしっかり働いていたわけですから、主婦という属性になったとたん、能力が急にダウンするようなことはあり得ません。むしろ、しっかりしていて、コツコツと嫌がらずにやる方々が多くいます。働けるということに喜びを感じて一生懸命やっていただいています。そういう人たちはすごく一所懸命です。面接の最後に、「不採用でもいいです。面接していただきありがとうございました」といって帰っていくのです。そういう人たちを採用するのですから、働いている姿を見ると、本当に嬉しそうに働かれています。やはり給与ではなく、やり甲斐や久々に自分が世の中に参加しているというところに、非常に高い価値を置いていらっしゃるようです。子どもと一緒に働けるというところに最大のバリューを持っていらっしゃるのです。ですから、やっていること自体のクオリティは高くなります。そういう人たちがしっかり働くことができれば、良い結果を出すに決まっています。今は、そのチャンスが少ないのです。
皆さん本当に優秀です。面接していると、語学力が高くキャリアを積んでいる方、キャビンアテンダントだったという人もいます。それほど能力がある人だというのにもかかわらず、子どもを産んでからは、子どもを預けることができないので働くことはできないし、旦那さんと話をしても、年収103万円以内で働いてほしいということで、保育園に応募をできなかったということでした。通訳もできるほどの人です。そういった人たちが、子どもがいるために、あるいは年収103円万に縛られているために、キャリアを生かせずに諦めてしまっている。その人たちのキャリアを生かして、給与ではないところでモチベーションをもって働く機会を提供するということは、労働マーケットにまったく新しい、別の手法を提案させていただいていると自負しています。
以前、経産省の人と話をしたときに、日本の女性が高学歴なのにもかかわらず、多くの人が専業主婦になってしまうのは、先進国の中で日本だけだといわれました。大卒というと学士です。そういった人たちがたくさんいて、ご自身のビジネススキルを生かすことなく、子育てに専任している。その働くことができない理由として、子どもが預けられないとか、103万円という壁があるというのはやはり歪んでいると思います。そういう状況に対して、「103万円以内で働くことができます。子どもも見守ります」という場を提供していますので、経産省の人からも「目から鱗です。こんな手法があったのか」といわれました。

変化は必然。変わり始めれば一瞬で変わる

秋葉:物流業界においても、様々な規制やハードルはありましたが、おかげさまで私たちのビジネスモデルもかなり浸透しつつあるというか。いろいろな方面から、いろいろなかたちでのお問い合わせをいただけるようになってきました。変わらなければいけない現実が目の前にあることは間違いのないことですから、変化する方向に徐々になってきていると思います。変わり始めたら本当に瞬間的に変わると思います。ですから、非常に面白い時間軸を生きていると思っています。
現実に、荷主の方々からの声もかなり変わってきています。たとえば、荷主の方々に説明するときは、まず、そもそもシェアリングとはどういうことかについて説明させていただき、次にシェアリングでは基本的に従量課金でお金をもらうことになるという話をするのですが、そのとき、長期滞留品は保管料を頂戴しますと説明します。そうすると、面白いことに、荷主さんの経営者の人たちが喜ぶのです。
今までだと、荷主さんが何坪借りるというところからスタートします。すると、スペースがあるから、どうせ借りているのだからと、みんなそこにものを一生懸命置きます。逆に使わないともったいないという発想なのでしょう。必然的に売れていないものがどんどん溜まっていきます。経営者や物流センターの担当者は、報告の数字を見ているので、当然気づいています。しかし、お金を払っている床にものを置いているだけなので、その在庫を何とかしようとは、なかなかなりません。それでだんだん一杯になってきて、次に新商品を入れるとなると、置くところがなくて借り増しをすることになります。同じセンターの中で広げられるならまだいいほうです。外部倉庫を借りるようになると、オペレーションがさらに煩雑化して余計にコストがかかります。そういったことを繰り返している会社さんは少なくありません。商品を滞留させずにうまく回していれば余分な保管料を取られないのに、回していないがために保管料を取られる。これは経営者から見ると、これまでになかった視点かもしれません。

藤代:経営者の方々も本当は分かっているわけですね。

秋葉:多くの企業が、「床何坪ですか?」と言われたら「何坪借ります」、「どんな設備を入れますか?」と言われたら「いくらかかりますか?」といったことを今までやってきました。たぶん、「そういうやり方しかないと思っていた」というのが正解だと思います。ある有名なアパレルの会社さんと話をしたときも、「今やっているところの見直しをかけたいのでコンサルティングをしてほしい。それと、御社がやっていることとの比較もしてほしい」といわれました。
私は、「比較はできません。床を借りてくれとは私はいいませんから」というと、その瞬間に目をぱちくりさせるわけです。そうなるとコンサルティングどころではありません。発想がまったく違います。
これからも新しい分野に挑戦していきたいと思っています。たとえば海外です。海外のことはこれからリサーチするのでまだわかりませんが、マレーシアやベトナムでは、物流施設の労働環境において、すでに人手不足が起こっているそうです。
当然、日本とまったく同じではないかもしれません。しかし、なぜ人手不足なのかという分析をしたとき、たとえば日本と同じような事情があるとしたら、「藤代社長、何か新しいアイディアを持って、また一緒にいきませんか」ということをしていかなければいけません。人手不足だからロボットができることをさせましょう、人工知能で仕事をさせましょうという一方で、人じゃなければできないことがまだまだたくさんあります。

最後は人の力が必要となる

藤代:前回のセミナーでローランド・ベルガーの人の話を伺いながら思ったことがあります。今、ゲーマーのような人がコントローラーを使って戦闘機を飛ばしているそうです。トラックの運転手も、30年後には身体の大きな人が運転しているのではなく、コントロール室で女性や若い男性が操作しているのではないかと思うと、今とはまったく違う世界です。

秋葉:お子さんが隣にいてもできる仕事はもっともっと増えると私は思っています。何かあったときのために人はいなければなりませんが、何もなければ、人工知能で判断できることはそれで済むでしょう。しかし、人工知能が判断しきれないことは、最後は人間が判断しなければなりません。そもそも人工知能は機械学習なので、万全ではありません。いろいろなことを経験して100に近づくことはできますが、確率でしかないので、いつまで経っても100になることはありません。やっぱり最後は人です。

藤代:機械化が進んでいくと、より人の機能が際立つような気がしています。今はAmazonで何でも買っているのですが、この間玄米を買ったとき、作っている人の手紙が入っていたんです。「私が精魂込めて作りました」と。評価をみてもすごく高い。それ以来、それしか買わなくなりました。Amazonでは朝に届くのが当たり前、普通に届いて当たり前という世界ですが、そういった中に手紙がある。前はいろいろな手紙がきていましたが、久しぶりに手書きの手紙を見て、ファンになってしまいました。ちょっと一手間、人間がやるというところが際立つような気がします。そこも、将来を担う主婦の方々が持つ繊細なところが、すごく大事なところになってくるのではないかと思っています。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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