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コラム No.27-7

サプライチェーン

秋葉淳一の「物流は経営だ」 Vol.6 物流はサービスレベルで提供するビジネスモデルへと進化する

公開日:2016/10/31

戦略の転換を余儀なくされるメーカー

私がビジネスでかかわっている、学生服の製造・卸を行っているある企業の例を紹介しよう。どの企業においても、人口の減少によってビジネスモデルの転換を余儀なくされており、この企業も例外ではない。
学生服の事業形態は、各企業それぞれで異なるが、この企業の場合、もともと販売店(街の洋品店を含む)を使ったビジネスモデルを採用していた。
しかし、急激な人口減少によって、販売店のビジネスが立ちいかなくなってしまい、販売店自体が、どんどん店を閉めるような状況になってしまっていた。
そうなるとこの当該企業は、販売店の代わりをしなければならなくなる。さらに、バックエンドの縫製工場においても、学生服づくりをやめていく会社も増えていき、工場機能の役割も果たす必要もでてきた。

こうした状況の中で、彼らは戦略のかじ取りをしなければならないわけである。まだまだ十分に元気な販売店には学校との関係維持を頑張ってもらわなければならない。その前提で考えると、これから必要になるのは、完全に商物分離*をして、効率的なサプライチェーンのインフラを構築していくことである。
つまり、以前は販売店が商品の在庫を管理したり、最後の裾上げの加工などを行ったりしていたが、これからは、そうしたことは当該企業が引き受けるので、販売店は、複数の学校の窓口として関係構築をしっかりやっていく。これまでは、販売店は特定の学校との関係性を大切に洋品店としての役割をはたしていけばよかったのだが、これからは、フロントエンド・顧客接点を販売店にはやってもらい、バックエンドはすべて当該企業で行うというシステムに変えようとしている。
※商物分離…流通は所有権の移転に関する取引流通(商的流通)と商品の流れ(物的流通)とに大別されるが、この2つの流れを分離することを商物分離という。これが可能となった背景には、各種の情報機器や情報システムの発達、運撒・保管・包装などの技術の革新、配送センター・倉庫などの機能アップがある。

物流サービスの新しいモデル

こうしたビジネスモデルを実施していくためには、確実に商物分離をして、商談や取引などの情報の流れに対して、モノはモノとして、在庫情報を含めて管理しなければならない。
そのときに物流拠点が必要となり、通常の物流拠点は、自社で建てるか、借りるかという選択になる。
しかし、学生服というのは、出荷の季節が決まっており、3月から4月の上旬にかけて一気に出荷されるまでは、ずっと商品が積まれているままである。
夏服が5月の中旬から多少の出荷はあるものの、極端な話、それ以外は在庫を積むだけのビジネスを行っているわけだ。
ということは、自社で物流拠点を持つにしても、賃貸として借りるにしても、ピーク時の量を考えて持つのかどうかというのが大きな課題となる。

そしてもう一点、物流拠点を賃貸する際、従来の賃貸の契約というのは、「どこどこの地域に何平米をいくらで貸してくれ」というやり方しかやってきていない。
しかし、それ自体が間違っているのではないかと私は考えている。それはどういうことかというと、本来、物流の一部の機能を担う拠点自体の契約は、サービスレベルでの契約にしたいはずである。
荷主にしてみれば、出荷指示から納品までのリードタイムさえ希望するスケジュールを守ってもらえれば、そもそも商品をどこで預かってもらおうが関係ない。物流拠点が東京にあろうが埼玉にあろうが千葉にあろうがどこでもいい。
当然のことながら、在庫は生産計画に基づいて増えていくわけで、出荷に関してもほぼ予想がつく、いや、計画できる。であれば、その時期に合わせて空いている最適な場所を選ぶという方法がとれるのではないかということだ。
まさに、物流拠点にクラウド的な発想が求められているということであり、物流でクラウドをやりましょうという話なのだ。

物流施設側も同じニーズを持つ

最初、当該企業は、物流会社が対応できるのかどうかと心配していたが、物流会社としても実は問題なく対応できるのだ。むしろ物流企業のニーズにも対応するスキームとなっており、すでに実験に参加する物流企業も決まっている。
物流企業においても、1年間の中で、荷物のアンバランスが問題になっており、むしろ閑散期にビジネスができるのであれば喜んで対応してくれるのだ。
当然、物流施設の規模はピーク時に合わせてあるので、閑散期には、膨大な無駄なスペースが存在することになる。ピーク時以外は空いているので、その間のスペースを埋めてくれるのであれば問題ないどころか歓迎すべきことだ。
学生服の在庫ピークは、2月末から3月頭だから、物流企業のリードタイムがカバーできる範囲の中のスペースが十分にあるかどうかということだけが問題となる。
それさえクリアできれば、まったく問題なく可能なのだ。これからの物流ビジネスはこうしたサービスレベルで提供する仕組みが主流になっていくことになる。

物流企業も、これからは不動産ビジネスではなく、サービスレベルによってビジネスを行っていかなければならないのではないだろうか。
現在でも、実際には物流企業がいくつかの物流センターを抱えながら荷主のニーズに応えていくわけだから、ビジネスの本質を考えれば、すでにこうしたサービスを提供している。
さらにこの考え方を追求し、荷主へのサービスレベルをどうしたら維持、発展していけるかを考えたうえでのロボットを含めた設備、人材配置を考えなければならないのである。

トークセッション ゲスト:学習院大学 経済学部経営学科教授 河合亜矢子

トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式会社 執行役員 河合秀治

トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式会社 COO 安高真之

トークセッション ゲスト:大和ハウス工業株式会社 取締役常務執行役員 建築事業本部長 浦川竜哉

トークセッション ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

トークセッション ゲスト:明治大学 グローバル・ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆

トークセッション ゲスト:株式会社 日立物流 執行役専務 佐藤清輝

トークセッション ゲスト:流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児

トークセッション ゲスト:アスクル株式会社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸

トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創業者 滝野 一征

トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

「CREはサプライチェーンだ!」シリーズ

「物流は経営だ」シリーズ

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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