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コラム No.27-39

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 AIで「ゆたかな世界を、実装する」株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

公開日:2019/07/31

「ゆたかな世界を、実装する」ために

秋葉:ABEJAの業務内容について簡単にご紹介いただけますか。

岡田:2012年9月にABEJAを創業させていただいて以来、約7年になります。「ゆたかな世界を、実装する」がコーポレート・フィロソフィーになっています。テクノロジーが進化して、進化したからこそできる世界観を「ゆたかな世界」と呼んでおり、その実現のために、テクノロジーを使って「実装する」という思いです。
この世界観の中で、私たちはテクノプレナーシップ(Technopreneurship)(「ゆたかな世界を、実装する」ための行動精神。TechnologyととEntrepreneurship、Liberal artsの3要素からなる行動精神としてABEJAでは定義)の精神を大事にしています。サイエンスやエンジニアリングという科学技術の中で高みを目指していますが、これが単体だと何も価値はありません。「ゆたかな世界」はそれぞれの人にとって固有なものであり、多くの方々がそれぞれに感じるゆたかな世界があります。そこに向かって、多様な人たちとさまざまなテクノロジーを使いながら、実装していくプロセスを、実証実験を繰り返しながら回していくことが一番重要だと思っています。そうした人材を育成輩出することが、最終的な私たちの企業の重要なミッションです。
具体的な世界観、例えば物流に関していえば、未来の物流センターのイメージを皆さんそれぞれがお持ちだと思います。現在私たちは、実際にテクノロジーを使って実装しようとしているフェーズです。未来のイメージに近づくためにギャップを埋めていくことが、現在やるべきことです。
具体的な事業内容としては、私たちのコア技術に「ABEJA Platform」を提供しています。AIを作る製造機械、工作機械を想像してください。多くの会社では、AIというエンジンを売り出すことが主な事業でで、完成されたエンジンをいろいろな顧客に汎用的に売っています。私たちのビジネスはこれとは異なります。なぜなら、AIモデルは、汎用的になればなるほど、競争力がなくなるからです。そのため、最終的に、企業が工作機械を使って独自の新しいエンジンを作ることが一番重要なのです。そこで私たちは、ABEJA PlatformというAIを作る工作機械の仕組みを提供しています。工作機械の上に、それを使いやすくする制御システムのようなものを「MLaaS(Machine Learning as a Service)」として提供し、その上に更に各産業別の特定課題に適したパッケージ化されたSaaS(Software as a Service)アプリケーションがあるイメージです。

秋葉:ABEJAのテクノロジーには、画像認識の技術が多く使われている印象ですが、以前から画像認識を得意としてきたのですか。

岡田:さまざまなデータを処理しています。画像認識のほか、自然言語の解析、時系列データの解析もよくやらせていただいています。今の人工知能、特にディープラーニングが最初に突出した成果を出したのは、画像の領域でした。その後時系列データ分析、まさに今、自然言語もできてきているような状況なので、汎用性がかなり高くなってきています。

熟練工の感覚をAIで紐解く

岡田:大手空調メーカーの事例をお話しします。空調機器の修理には一発修理率というものがあります。エアコンが壊れたとき何回で修理が完了するかの回数です。つまり一発では修理できないということですね。

秋葉:エアコンが壊れてコールセンターに電話をすると、まずはどんな症状かを聞かれて、それからフィールドエンジニアが来て、解決できるかどうかになります。来て、見て、調べて、「では、今度部品を持ってきます」ではなく、一発で修理が完了するということですね。

岡田:これまでは、1回の修理でだいたい複数回の出動が必要でした。エアコンの故障箇所を当てる確率は、数十万分の1といわれています。歴代商品のシリーズもありますから、1社で相当数の部品総数があり、その中から1個を当てるという極めて難しい作業です。カスタマーサポートの熟練の方々は、これが勘でわかるのだそうです。このタイミングでこのパターンで故障してこういう感じなら、だいたいこの部品を持っていけば大丈夫だろうという感覚があるのでしょうね。

秋葉:業務用だと古いビルや古い設備もあるので、昔の部品も合わせると大変です。だから、熟練工にしかわからないことがあるわけですね。

岡田:でも、その状況というのは、経営の観点から見れば厳しいわけです。伝承することも難しいので、入社2年目、3年目の方々でも同じようなプロセスを経られるかたちにできないかと、AIの導入を検討していただきました。
何を行ったかというと、過去、このようなときにはこの部品を持っていけば一発で修理が完了したということをAIに学習させました。そしてそのとおりに実際に使っていただいたところ、平均出動回数が2回以下にまで下がり、コストは数分の1に削減されました。
さらに、カスタマーサポートの観点からしても、満足度が圧倒的に上がります。特に業務系の設備であれば、壊れた瞬間に営業ができなくなってしまうこともありますから。実際に、お客様の満足度も爆発的に上がってきています。まさに一挙両得です。
こうした仕組みが実現するにつれて、AIが爆発的に使われ始めています。私たちが提案しているのは、このような圧倒的な効果を生み出すAIの使い方です。AIの話になると、どうしてもコスト削減に話が偏りがちです。しかし、AIを使って1%しか利益が上がらない、2%しかコストが削減されないという話をしても、あまりインパクトはありません。この企業のように、AIを活用することによって顧客満足度が非常に伸びたり、コストが爆発的に下がるところにフォーカスをして、そこでしっかりと検証を重ねていかないと、価値がでないと思います。ここが一番の課題感ですね。

秋葉:熟練、習熟、経験、知恵、知識といったエキスパートの人の話と、点数という数の世界の話、この組合せは人間の発想ではできません。熟練の人たちは今の状態が当たり前だと思っているので、変えようとしないと思うんです。複数回行くことも仕方がないと考えているわけですから、それを2回以下にしようとは思わないですよね。この話ですごいと思うのは、当たり前だと思っている人にはなかなか通用しないところを、見事にAIで結果を出していることです。

物流をAIで変えていきたい

秋葉:ABEJAという会社も、岡田さんも有名でしたが、物流と人工知能系の話はなかなか一緒になることがなく、経済産業省がやっているMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の「Logitech分科会」という会で初めてお会いしました。そこにはまずロジ系の旧来の主要プレーヤーが数社、アカデミックな人たちとして大学の先生やコンサルファームの方々が集められました。それともう一つのブロックとして、ベンチャー系の人たちのカテゴリーがあり、そこに岡田さん、MUJINの滝田さんがいて、私もそのブロックでした。その後一緒にご飯を食べにいって、盛り上がりました。
個人なのか企業なのかは別にして、みんながみんな鈍感ではなく、鈍感な人もいれば敏感な人たちもいます。岡田さんのように本当の意味で人工知能の重要性に気づいている人たちがいて、その人たちが活動し始めているわけです。こうしたインフルエンサーの輪が広がることが大切で、大きなことだと思っています。
その中で本当の意味での競争、戦わなければいけない領域もあります。一方、自分たちはこうやってうまくいったということを、無料なのかサービス料をもらうかは別にして、横へ展開していけることもたくさんあると思っています。ロジスティクス側ではなく、ロジスティクスを手伝ってくれる側のキーパーソンとして岡田さんたちがいるのではないかと、私はイメージしています。

岡田:経済産業省のLogitech分科会でも、秋葉さんのようなするどい発言をされる方は限られています(笑)。私が言うのもおかしな話ですが、人工知能のことを大変ご理解されています秋葉さんは、緻密に計画化された志がある中に、まずは第一歩を早く進もうという思いが同居しているのが、すばらしいと思います。日本の他の企業と比べても、秋葉さんは圧倒的なスピード感があります。

秋葉:ダイワロジテックの中にも、アッカインターナショナルやフレームワークスのように物流に関わる会社だけでなく、モノプラスや南国ソフトのようにテクノロジーを売りにしている会社もあります。今までは物流と関連した方と一緒にやることが多かったのですが、今回は新しい領域です。スタートのモデルをどこで作るか、PoC(Proof of Concept)も含めてどこでやるかという話と、それを他の業種・業態に展開していくかという話は、平行してできることです。そうした感覚、スピード感も含めて、私にとってはABEJAが最適なパートナーの1社です。
ものづくりの日本だからなのかわかりませんが、目的が明確になっていて、それに対しての投資、費用対効果という考え方はしやすいですし、それができる人はたくさんいます。しかし、ここにこれだけの金を使ったとしても、こういう展開の仕方ができるからそれでいいと思える人は非常に少ないです。仮に私がそう思ったとしても、一緒にやってくれる人も同じように思わないと、スピード感やその先の絵を描くのは難しい。岡田さんたちはそこをよく理解してくれていますし、逆に教えていただくこともあります。

岡田:物流業界自体が厳しい局面に立っており、秋葉さんの、それを何とかして変えたいという思いに強く共感しました。逆に、私たちはHowの専門家に近い立場にいます。どうやって変えていくのかというHowは、まさに人工知能を使って変えていくところ。そこを具体的にしていくのが私たちの得意分野です。その中で「ぜひ」と意気投合したのでしょうね。

秋葉:具体的に物流のどこが面白いと思いましたか。

岡田:物流の全部が面白いですね。具体的に挙げると、物流の良いベンチマークとしてアマゾンがいます。アマゾンがここまで先進的にやっている中、現状のロジスティクスの会社とは差をつけられていると思います。間違いなくノウハウはロジスティクスの会社のほうがあるはずなのに、なぜ差をつけられているのか。結局何が違うかというと、人工知能をはじめとしたテクノロジーの理解度です。実際にテクノロジーをロジスティクスに適用したとき、こうなるだろうと描く力が必要です。描く力は、テクノロジーと物流の話、双方が融合した領域のことがわかる会社でないと描けません。秋葉さんはまさにこの2つを理解した状態で、物流業界のあるべき姿を描いているので、私たちのテクノロジーの強みを合わせることで、アマゾン以上の仕組みができると強く思いました。まずはそこが一番です。
MaaSの検討会にロジスティクスが入っているのもそうですが、結局全部が自動運転になっていく中、全ての物流プロセスが自動化していくことは、誰もが想像することではないでしょうか。しかし、まだ実現できている会社はなかったので、そうした分野にチャレンジすることはすごく面白いと思いました。

秋葉:現在のロジスティクスの中にも、実にさまざまなデータがあります。それらのデータをどのように活用するのかが、将来生き残っていけるかどうかの分岐点です。
ここにデータはすでにあるわけです。人工知能を使ってどうするか。岡田さん早くやろうよという気持ちです。物流を助けてもらいたいのです。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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