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コラム No.53-25

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(25)国家戦略としての生産緑地活用

公開日:2020/05/21

各都市部には、都市計画法に基づき市街化区域が定められています。市街化区域とは、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされており、市街地におけるより良好な都市環境の形成を目的に、建築可能な建物が制限されていたり、地域の土地利用内容が規制されたりしています。その市街地区域における農業の維持や緑地環境の保全のために指定された農地が、いわゆる「生産緑地」で、市街化区域外の郊外にある農地(一般農地)と区別されます。

大都市圏における生産緑地の変遷

1970年代までの高度成長期には、三大都市圏(首都圏、中部圏、近畿圏)の政令市等では、都市部の人口の増加と住宅不足を解消する目的で、市街化区域にある農地に対して、一般農地で優遇されている固定資産税や相続税を適用せず、宅地並みの税を適用しました。これにより、都市部農地の宅地化は進みましたが、一方で緑地の急激な減少を生み、住環境の悪化、土地の地盤保持・保水機能の低下による災害の多発など社会問題化しました。これを受けて、1974年に制定されたのが「生産緑地法」です。
「生産緑地法」によって、三大都市圏において生産緑地の指定を受けると、一般農地並みの固定資産税が適用され、多くの市街地農地が指定を受けることとなりました。
しかし、1990年前後のバブル経済期に地価が暴騰したことにより再び都市部農地の宅地化が急増したことから、1992年に「生産緑地法」が改正され、市街地農地は「宅地化する農地(宅地化農地)」と「保全する農地(生産緑地)」に分けられました。これにより、宅地化を前提とした宅地化農地には、宅地並みの固定資産税が課せられることになりましたが、生産緑地は、農地並みの固定資産税と相続税の納税猶予が適用されることになり、生産緑地が急増しました。なお、主な生産緑地の指定解除要件は、(1)農林漁業の主たる従事者が死亡等の理由により従事することができなくなった場合、(2)生産緑地として告示された日から30年が経過した場合とされています。国土交通省の資料によれば、2018年の全国における一般農地442万haに対して、市街化区域内農地は6.9万ha、そのうち三大都市圏における生産緑地は1.1万haで、三大都市圏市街化区域農地の約半数を占めています。

生産緑地制度に係る2022年問題

全国の生産緑地は、そのほとんどが1992年の法改正時に指定されたもので、現存する生産緑地の約80%を占めているといわれています。制度上は、指定から30年を経過すると指定が解除され税制優遇や納税猶予が適用されなくなりますが、それが1992年から30年後の2022年に当たります。指定が一斉に解除されると、所有者にとっては税負担が大幅に重くなり、営農を断念することで土地の売却動機が高まり、都市部の緑地が激減するのではないか、宅地として売却された場合は受給バランスが崩れるのではないか、人口減少傾向にある中、供給過多となった土地や住宅が空き地や空き家となり、社会問題化するのではないかといったことが、懸念されています。
これに対応して、2017年に生産緑地法の一部改正が行われ、生産緑地の指定を10年間繰り返し延期することが可能となりました。とはいえ、都市部の営農者も高齢化が進んでおり、また担い手不足である状況もあり、この制度改正でどの程度の効果があるかは未知数でしょう。いずれにしろ、民民間の土地売買は需要と供給のバランスで進められますので、資産価値、利用価値の高い生産緑地が積極的な民間投資の対象となることは、避けられないと思います。

官民連携による都市部の緑地保全への期待

生産緑地法そもそもの目的は、「農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資すること」であり、実際に、都市部における身近な農業体験の場や災害時の防災空間など多様な機能を発揮するグリーンインフラとして、都市における重要な公共的な役割を担っています。条文においても、指定解除後には「所有者は、市町村長に対し、(中略)当該生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができる」としており、その高い公共性を認識し公共による利活用を想定しているように思われます(実際には、自治体の財政もあり、買い取り事例はごくわずかであるようです)。

国においても、2015年4月には、都市農業の安定的な継続を図るとともに、多様な機能の適切かつ十分な発揮を通じて良好な都市環境の形成に資することを目的として「都市農業振興基本法」が制定され、さらに、2016年5月には、都市農業振興基本法に基づき、都市農業の振興に関する施策についての基本的な方針、都市農業の振興に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等について定める「都市農業振興基本計画」が閣議決定されるなど、生産緑地の効果的な活用を図るために、さまざまな施策が図られています。

地球規模の環境問題に対する関心が高まる中、二酸化炭素の吸収、ヒートアイランド現象の緩和、生物多様性の保全など緑地の有する環境保全機能が従来以上に注目されており、生産緑地の公共的な存続意義は、決して薄れてはいません。
また、農業経営にしても、他の営農者への譲渡や農地の集約、法人経営化、農作物等加工施設、農作物等直売所、農家レストランの設置が可能となるなど、規制が緩和されてきており、多様な事業化の幅という点においても広がりを見せています。

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