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コラム No.53-67

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戦略的な地域活性化の取り組み(67)公民連携による国土強靭化の取り組み【29】進む社会構造の変化への対応で加速する地域再開発による都市の再生

公開日:2023/11/30

近年、少子高齢化や国際化が加速する中で、都市に求められる機能や環境が大きく変化しており、団地のリノベーション、地方都市のコンパクトシティ化、大都市の国際競争力強化など、都市再生の動きが活発化しています。今回は、その中心的役割を果たしている独立行政法人都市再生機構(UR都市機構:Urban Renaissance Agency)の事例を基にその動きを見てみます。

地域再開発におけるUR都市機構の役割

UR都市機構は、1955年に設立された日本住宅公団を前身に持ち、千里ニュータウンや多摩ニュータウンなど団地を開発、近年の都市部ではタワーマンションを建設するなど、2023年3月時点で約70万戸の賃貸住宅を供給、管理しており、「日本最大の大家」とも呼ばれています。しかし、2018年12月に策定された「UR賃貸住宅ストック活用・再生ビジョンについて」によれば、7割の住宅が管理開始から40年を経過しており、2015年時点でUR賃貸住宅住人の34.8%が65歳以上の高齢者といわれており、1980年後半からは建物の老朽化やライフスタイルの変化などから、団地の再編や再生が進められています。少子高齢化、人口減少傾向は今後も続くことから、UR都市機構は、団地の特性に合わせて建替えや集約、民間住宅等への用途転換、住宅の改修などで、「多様な世代に対応した環境整備」「地域と連携したまちづくり」を進めることで、賃貸住宅ストックの価値向上を実現するとしています。また、UR都市機構は公的機関として、経営の合理化、経営基盤の確立の観点から、賃貸住宅ストックの再編・削減が求められており、2033年度末時点の管理戸数については65万戸程度とする目標を掲げています。
このようなUR都市機構の動きは、一方で、地方自治体や医療福祉、教育機関、地域事業者、民間デベロッパーとの公民連携で、地域再開発を活性化する好機でもあるともいえます。
例えば、1961年に293棟で入居が開始された千葉県船橋市の高根台団地は、老朽化により1999年から高層住宅「アートヒル高根台」として集約、一部は既存棟を改修して再生するとともに、建替えによって生じた整備敷地には、保育園や高齢者支援施設、総合病院、民間デベロッパーによる住宅などが誘致され、多様な住民が集う地域の中核的エリアとして生まれ変わっています。

地域再生のコーディネータとしてのUR都市機構

UR都市機構は、2004年に都市基盤整備公団及び地域振興整備公団(地方都市開発整備部門)と統合したことから、団地等住環境の再整備に留まらず、都市の再生や災害復興事業なども事業の柱となっています。UR都市機構は公的機関であることから、国の施策や計画に沿って、地域の利権を調整し再配分するコーディネータとしての立ち位置が明確であるため、民間企業との競合を避け、協業を促進する地域再生プロデュース、マネジメントの役割を担っており、土地の高度利用・建築物の不燃化・公共施設の整備などにより、居住環境の整備や都市機能の更新を図る市街地再開発事業への関与事例が多く見られます。東京都の「大手町地区プロジェクト」、「霞が関三丁目南地区プロジェクト」、大阪府の「うめきたプロジェクト」など、大都市圏の市街地再開発をはじめ、北海道の「札幌創世1.1.1区(北1西1地区)プロジェクト」、新潟県の「長岡市大手通坂之上町地区プロジェクト」、埼玉県の「狭山市駅西口地区(スカイテラス)プロジェクト」、茨城県の「勝田駅東口地区プロジェクト」、静岡県の「藤枝駅前一丁目8街区プロジェクト」、鹿児島県の「北田大手町地区(リナシティかのや)プロジェクト」、沖縄県の「沖縄中の町A地区(コザミュージックタウン)プロジェクト」など、地方都市の再生、市街地活性化事業の実績とノウハウを蓄積しています。

都市再生の好事例 ~長岡市大手通坂之上町地区プロジェクト~

新潟県長岡市は、市役所本庁舎とアリーナを一体化し2011年に竣工した「アオーレ長岡」など、市街地活性化事業を積極的に推進している自治体ですが、多くの地方都市と同様に、大型郊外商業施設の出現により駅前商店街の衰退が進み、2010年には地場有数の大和百貨店が閉店したことから、新たに市街地再開発に着手しました。
2011年に長岡市がUR都市機構に事業化検討調査業務を委託、2014年にはUR都市機構が百貨店跡地を取得するとともに、隣接する北越銀行本店ビルを改修して、2棟から成る「米百俵プレイス」を整備・再生するプロジェクトが進められています。「米百俵」という名称は、同所が戊辰戦争後の支援米で設立した国漢学校跡地であるという故事に因んでおり、人材の交流、育成による地方創生の拠点との意味が込められています。
このプロジェクトの特徴は、百貨店跡地に新設するビル上層階に北越銀行本店が移転し、改修した旧北越銀行に商工会議所等の公益団体が入居、2棟の低層階をパッサージュ(通路)で結び、「米百俵プレイス ミライエ長岡」として、図書館や若者の学習支援機能、オープンイノベーション・起業支援機能を備えた公益施設に再編・整備されているところにあります。さらに、隣地地権者との調整、民間デベロッパーとの協業により、店舗と集合住宅から成る居住施設を併設することで、公共公益・業務・居住・商業といった複合的な機能を導入し、賑わい・交流拠点の創出と、まちなか居住を集約している点において、都市再生・市街地活性化事業の優れた事例だといえるでしょう。

人口減少時代にあって、既存地権を調整、再配分することで、土地の高度利用を促進する都市再生事業は、特に地方都市にとっては急務ではないでしょうか。今後も、公民連携によって新たな価値を創造する都市再開発事例に着目したいと思います。

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